BC表紙


「Brazen Chariots」(以下、本作)は、2019年に米国MMP社から発売されたシミュレーション・ウォーゲームである。テーマはクルセーダー作戦。1941年11月、北アフリカ戦線における英連邦軍(連合軍)によるトブルク方面に向けた反撃作戦だ。本作は、クルセーダー作戦を、1ユニット=1個大隊、1Turn=1日、1Hex=1マイルの規模で描いている。
今回プレイしたシナリオは、シナリオ5.8「Operation Crusader(2MAP)」。クルセーダー作戦を再現するシナリオだが、東端のマップは使用しないシナリオである。

今回、私は枢軸軍を担当した。

前回までの展開は-->こちら

5Turn(11月23日)

またもや補充がゼロである。第2Turnを除いて全く補充を得ていない枢軸軍なのであった。
補充のダイスにもめげず、攻撃を続行するDAKである。先のTurn、折角英軍2個機甲旅団を包囲したものの、BCSの場合、部隊に対する包囲は非包囲側にとっては左程致命傷にはならない。補給線を潰されない限り比較的容易に包囲輪から脱出できるのだ。その傾向は機械化部隊でより顕著になっている。折角敵を包囲したのに、これじゃ全く意味がないよ。と、嘆く枢軸軍プレイヤーであったが、あとの祭りである。

それでも枢軸軍は激しい攻撃を継続する。第21装甲師団が英第4機甲旅団を攻撃。相変わらずダイス目に苦しめられるが、DRM+3(能力差2とDouble Objectの+1)の効果もあって何とか自軍に倍する損害を敵に与えていた。

また第15装甲師団は、英軍最強の第7機甲旅団を攻撃する。こちらは英軍の中では数少ないAR(アクションレーティング)が4の精鋭部隊。ドイツ軍装甲部隊のAR値が5なので、その差は1しかない。DRMも+2しか得られず、苦戦が予想された。しかしここではドイツ軍のダイス目が冴え、英第7機甲旅団を完全撃破。久しぶりに勝利の美酒に酔った。

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6Turn(11月24日)

もういい加減にしてくれよ。またもや補充ポイントがゼロ。前線からは補充を求めて矢のような催促が舞い込んでくるが、補充を与えることはできずにいる。前線の将兵諸君、スマン。

このTurn、枢軸軍にとって別の意味で重大なイベントがある。DAKの主力である装甲2個師団がマップ東端から離脱する可能性がある。英連邦軍を追って追撃戦を行うためということだが、実際に発生すると枢軸軍にとってはかなり痛い。
このイベントが発生する確率は2/3(1d6で3以上)でかなり高い。
今回はダイス目が2で、イベントは発生しなかった。取り敢えずホッとした次第である。

ゾンビのように復活してきた英第7機甲旅団。彼らはあり余る補充ポイントを使って1度撃破された部隊であっても容易に復活させることができるのだ。ドイツ軍第15装甲師団は、復活してきた英第7機甲旅団に攻撃を加えて再びこれを壊滅させた。しかしこちらも戦車2ステップを失い、そろそろ残りがやばくなってきた。

一方の連合軍は、英第4機甲旅団がDAKの第21装甲旅団に対して果敢に攻撃を仕掛けてくる。しかし第21装甲師団は巧みに反撃。英軍に3ステップの損害を与えて、これを撃退した。

Bir el Gubi方面では、新たに前線に登場してきた英第22機甲旅団が、イタリア軍アリエテ戦車師団の守る陣地を攻撃する。しかしアリエテ師団の90mm砲が再び猛威を振い、英機甲旅団を撃退した。

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7Turn(11月25日)

久しぶりに補充ポイントを得た。ダイス目は3で最低レベルに近いが、それでも戦車、歩兵各1ポイントの補充は貴重である。なんせ、これまでは全く補充が得られなかったのだから・・・、

ドイツ軍第21装甲師団は、英第4機甲旅団に対する攻撃を中断し、海岸方面へ北上を開始する。海岸沿いを進むニュージーランド師団に備えるためだ。

そのニュージーランド師団。これまで海岸線をゆっくり前進してきたが、初めてドイツ軍防衛戦に接触した。ドイツ軍アフリカ師団が守る陣地を攻撃するも、激しい戦いの末撃退される。

ドイツ軍第15装甲師団は英第7機甲旅団となおも激闘を繰り広げていたが、遂に戦車大隊1個が残りステップ数がゼロとなり壊滅。枢軸側では初めてのユニット消滅となった。

トブルク正面では、いよいよ英第70歩兵師団が活動を開始する。まず包囲輪周辺でイタリア軍が築いた鉄条網を破壊し前進。イタリア軍の防御陣地に接敵する。しかし行動力不足につき攻撃を開始するには至らず・・・。

という所で今回は時間切れ、ゲーム終了となった。ちなみにトータルのプレイ時間は約17時間である。

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感想

ビッグゲームと呼ぶにふさわしい規模のゲームである。全体像をつかむとか、戦略を考えるとか以前に「ルールに弄ばれている」という感が強い。
このシリーズ、何度プレイしても感覚的につかめないのが補給の概念である。補給ルールがわかりにくいというのもあるが、一番しっくりこないのは、

 1)補給を切るため、あるいは補給を切られないためにはどうしたら良いのか
 2)補給を切られた時の影響度は如何ほどか

まず敵ユニットを囲んで「退路がない」状態に追い込んだ場合。その場合は孤立損耗を強要できる。ただし敵側の活性化終了時点で判定するので、敵側が活性化によって孤立状態を解消すれば、損耗は発生しない。ちなみに「退路がない」状態というのは、HQまで安全な経路を確保できていない状態を表す。安全な経路は、地形や敵ZOCによって遮断されず、HQの指揮能力+5ヘクスを超えない範囲の経路になる。この文章だけを読むと「ZOCで囲めばポンできる」と考えがちだが、そうはいかない。戦車などの戦術移動力を持つユニットで「安全経路」を考える場合、戦車のような射撃値を持つユニット以外のZOCは無視できるのだ、つまり戦車を囲めるのは戦車だけ、となる。英軍の主力である機甲旅団は戦車大隊を3個持ち、対するドイツ軍装甲師団は戦車大隊を2個持つに過ぎない。よって英軍戦車旅団を包囲殲滅するのは、かくして絶望的になる。

案外効果がありそうなのが、HQそのものを囲んでしまうという方法。これはいわゆるMSR遮断状態を現出する。MSR遮断状態が実現すると、活性化の最初の時点で判定されるため、問答無用で補給段列が盤外移動になる。補給段列が盤外移動になると活性化に-3のDRMが適用されてしまう。これに疲労度やイタリア軍のように元々の活性化チェックに不利な修正が適用される軍隊の場合、活性化に失敗する可能性が大きくななる。活性化に失敗すれば、状況はさらに悪化し、指揮下の部隊は移動できないので孤立損耗してしまう。
そうだ。BCSではHQを「踏みつぶす」のではなく(踏みつぶしたら、司令部がどこかに下がっていくだけ)、HQを「囲む」のが良かったのだ。そうすれば補給段列が使えなくなるし、麾下の部隊も孤立損耗を強いられる。部隊全体を囲むのではなく、HQだけを囲めばよかったんだ。チクショー、なんでそれに気が付かなかったたんだ。
ということは、逆に守る側の立場に立てば、味方のHQが囲まれないように注意すれば良い。HQを不必要に突出させず、前線部隊と適度な間隔を保つ。また敵快速部隊の跳梁を阻むため、中央部には戦車ZOCを張って敵側の安全経路が背後に回り込むのを防ぐ。こんな感じで布陣すれば、敵側の「電撃戦」をある程度防げるのではないだろうか・・・。

あと違和感を覚えたのは「命令」ルール。デザイナーの意図がどこにあるのか不明だが、結局の所、防御している側を不利にするだけのルールに思える。攻撃側の立場に立ては、大雑把に方向を決めて攻撃させれば、あとは戦局の推移によってHQの前進位置を適当に「調整」できてしまう。極端な話、攻撃側プレイヤーは移動命令を与えておきながらも、実際に移動する段になって「全く移動させない」という選択すら可能なのだ。
その一方で防御側は、準備防御の命令を与えていると、たとえ敵が突破してきても律義にその場に居続けなければならない。
私が今回枢軸側を担当していて守備がメインだったので特にそう感じたのかもしれないが、命令ルールについては「果たしてこのルールって必要なの?」と思ってしまった次第である。

とまあ色々と書いてみたが、BCSが非常に魅力的なルールとシチュエーションを扱った作品群であることは疑いない。今回プレイした「Brazen Chariots」にしても、クルセーダー作戦を大隊規模で再現するというのは極めて野心的な試みと言える。BCSの「やや癖のある」戦闘システムや補給システムについても、「何ができて」「何をやるべきか」が明確になれば、もっと楽しむことができるだろう。

そういった意味においては、「Brazen Chariots」にしても他のBCS作品にしても、機会を見つけて再戦したい作品であることは間違いない。

英クルセイダー戦車