190814シミュレーション日本降伏


シミュレーション日本降伏-中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」

北村淳 PHP研究所

かつての冷戦時代、日本の海上自衛隊は世界第3位の海軍であると喧伝されていた時期がある。その頃中国海軍といえば、旧式艦ばかりでとても海上自衛隊に太刀打ちできる状態ではなかった。しかし時代は変わった。現在の中国海軍は空母、原潜、イージス駆逐艦等を多数揃え、量的な面のみならず質的な面でも海上自衛隊を凌駕するに至った。状況は空でも同じで、航空機の質量両面で航空自衛隊は中国空軍に対して著しい劣勢を強いられている。そのような状況下で中国共産党指導部が南西諸島獲得を企図したらどうなるのか・・・。
本書での筆者の主張は以下のように整理できる。
まず純粋な海空兵力を比較した時、日本の海空兵力は中国軍の敵ではなく、尖閣や南西諸島で日中が海戦を行えば日本側には勝機はない。そのために日本側の頼みは米軍の来援だが、米軍が尖閣諸島や南西諸島を巡る戦いにおいて安保条約を発動して日本を助ける蓋然性は低い。従って日本が中国の侵略から自国を守るためには、中国の海空兵力に対抗できる防衛戦力を整備する必要がある。
筆者曰く、平和ボケの根源は米軍依存(「いざとなったらアメリカ軍が助けに来てくれる」)であり、米軍依存の原因が平和ボケにあると。この無限ループを抜け出さない限り日本に未来はないと。
日本は民主主義の国だから様々な考え方が許されている。軍事力を絶対悪と見る向きには「平和ボケで何が悪い。戦争よりは平和ボケの方が絶対マシ」という考え方もあろう。そういった考え方に則れば、現在の「アメリカ属国状態」から例えば中国や統一朝鮮の属国状態になっても一向に構わない、と考える向きもある。
しかし本書の著者はそのような考え方は取らない。日本が真の独立国になるためには、日米関係は維持しつつ日本が自力で他国の侵略から自国国土を守り切れるようにすることを主張する。そしてそのことが「無限ループ」からの脱出する方策だという。

私はといえば、筆者の主張に100%同意する訳ではないが、少なくとも中国や統一朝鮮の属国にはなりたくないと思う今日この頃である。

お奨め度★★★★