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「HANNIBAL: Rome vs. Carthage」は、紀元前219年~201年に渡って戦われた第2次ポエニ戦争を扱ったSLGである。この第2次ポエニ戦争は共和制ローマとカルタゴとの戦いで、カルタゴの名将ハンニバルが活躍したことから別名「ハンニバル戦争」とも言われている。

この「HANNIBAL: Rome vs. Carthage」(以下、本作)は、1996年に米国Avalon Hill社から出版されて作品で、その後2007年にカナダのValley Games社から再販された他、さらに別の2社から再販されている。今から30年近く前で、しかもウォーゲーム氷河期に出版されたゲームにも拘らず再販を繰り返されていることから、本作が評判の良い作品であったことを伺わせている。
本作のデザイナーは、マーク・シモニッチ氏。今や押しも押されぬ名ゲームデザイナーとなったシモニッチ氏が、比較的初期に発表した作品だ。

本作の基本システムは、カードドリブンシステムである。For the PeopleやPaths of Gloryといった初期に発売されていたカードドリブンシステムのゲームとほぼ同様のシステムを採用している。プレイヤーは配られたカードを元にゲームを進めていく。カードをプレイする際には、カードの記載された作戦値を使用するか、カードに記載されたイベントを発動するかいずれかである。この繰り返しでプレイを進めていく。

本作の特徴的な部分は戦闘システムである。戦闘比とかファイアーパワーとかいったシステムではなく、お互いに戦闘カードを配ってそのカードを出し合ってプレイする方式である。使える戦闘カードの枚数は、戦闘に参加する部隊数と指揮官の能力等で変化し、兵力が大きくて指揮官が優秀なほど配られる戦闘カードが多くなる。戦闘カードは、「接触」「正面突撃」「左翼」「右翼」「両翼包囲」「予備」の計6種類があり、攻撃側がカード1枚を出し、それに対して防御側が同じカードを1枚出す。防御側が同じカードを出せなくなったら戦線崩壊で防御側の負けになる。また防御側は攻撃を凌いだ後にダイスを1個振り、指揮官の戦術値以下の目を出すと防御側と攻撃側が逆転する。また「予備」カードは何でも使える便利カードだが、防御側が「予備」カードを出し始めたら戦線崩壊が近いな、と予想できてくる。当然ながら手元の戦闘カードが多い方が勝率が高くなるが、優秀な指揮官が敵の手薄なカードを狙って逆襲を仕掛けると、カードの少ない側でも逆転の可能性がある所が面白い。
ちなみに戦闘解決時には逆襲判定以外ではダイスを使わないが、戦闘終了後の損耗判定にはダイスを使用する。

マップには、イタリア半島、イベリア半島、北アフリカ、そしてそれらに囲まれた西地中海一帯がポイントトゥポイントで描かれている。第2次ポエニ戦争の戦場となった領域全てが含まれており、ハンニバルによるアルプス越え、スキピオによるイベリア半島進攻、そしてスキピオとハンニバルのザマでの決戦が再現できるようになっている。

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今回、本作を対面でプレイしてみた。筆者はローマ陣営を担当する。

1Turn(BC218)

Cart_Hannibalイベリア半島からガリア南部を経てアルプスに挑むハンニバル。史実通りアルプスを越えていきなりローマ近くのファレリイ(Falerii)に姿を現してきた。ハンニバルの大胆な挑戦に対して、当時のローマ執政官プブリウス・コルネリウス・スキピオ(P. Scipio)は、ローマ兵8戦力を率いてハンニバルに挑む。

ハンニバルはローマ軍左翼を攻撃し、ローマ軍の注意を引き付けた後、騎兵を背後に回り込ませて「包囲戦」を敢行。最初の包囲攻撃をなんとか耐えたローマ軍であったが、2回目の包囲攻撃は防ぎきれず。ローマ軍は5戦力を失うという大損害を被って敗退。後にファレリイの戦いと呼ばれる戦いはハンニバルの快勝に終わった。

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勝利を得たハンニバルは叫んだ。

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「私はイタリア人と戦いに来たのではなく、ローマに対抗するイタリア人の自由のために戦いに来た」

ハンニバルの言葉を受けて、イタリアの北部の2都市、アルミニ(Ariminum)とフィエーゾレ(Faesulae)がカルタゴ側に寝返った。
一方のローマ陣営はガリア沿岸の諸都市に工作を行い、ローマ陣営を広げていく。戦場でのハンニバルとの対決は避けながら…。ローマ陣営もローマ北部の中立地帯を制圧していく。

ローマ軍は最後に「ヌミディアの反乱」カードで西ヌミディアのカルタゴ陣営の支配マーカーを取り除く。

第1Turn終了時の状況は以下の通り。イタリア半島に侵攻してきたハンニバルは、ファレリイの戦いでローマ正規軍を撃破して北イタリア一帯を制圧した。一方のローマ陣営は、ガリアの地中海沿岸都市に支配域を広げつつ、西ヌミディアで反乱を扇動してカルタゴ本国に揺さぶりをかけた。

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2Turn(BC217)

ローマ軍は毎Turnにその年の執政官(コンスル)をランダムに選択する。これがローマ軍の楽しみの1つで、ローマ軍の中では比較的優秀な「ローマの剣」マルクス・クラウディウス・マルケッルス(Marcellus)とか、「ローマの盾」クィントゥス・ファビウス・マクシムス(Fabius Maximus)を引くのが大スキピオ登場以前のローマ陣営プレイヤーの楽しみになる。

Roma_G_Nero今回引いて来たのは、ガイウス・クラウディウス・ネロ(Gauis C Nero)と、ガイウス・テレンティウス・ウァロ(G Terentius Varro)。いずれも特に傑出した能力を持っているわけではないが、いずれも戦略値(Strategy Rating)が1というのが嬉しい所。戦略値というのは、この将軍が活性化するために必要な作戦カードの作戦値で、戦略値1ということは作戦値1以上の作戦カードで活性化できるということを意味する。全てのカードは1以上の作戦値を持っているので、彼らはどのカードでも活性化できるということだ。

今回はカルタゴ軍の選択でローマ軍が先攻になる(カルタゴ軍は自身で先攻後攻を選択できる)。ローマ軍は西ヌミディアの港湾都市イコシウム(Icosium)と、カルタゴ本国の港湾都市タカーペ(Tacapae)を支配する。これでカルタゴ陣営に揺さぶりをかけるのが目的だ。

SC_35その後、ローマ、カルタゴ両陣営はガリアの中立地帯にPC(政治支配)マーカーを配置していく。PCマーカーは何も置かれていないスペースにはある程度自由に配置できるが、一旦何らかのマーカーが置かれたスペースには、そのマーカーを排除しない限りそのスペースに支配マーカーを置くことはできない。一部のイベントカードでは支配マーカーをひっくり返して自陣営にすることができるが、例外的な方法となる。

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3Turn(BC218)

Roma_Marcellus先ほどコンスルに就任した2人のうちネロを副執政官(プロコンスル)として留任させ、新たなコンスルをランダムに選ぶ。今回引いて来たのは、ファビウス・マクシムスとティベリウス・センプロニウス・ロングス(Titus S Longus)の2人。ファビウス・マクシムスは史実では「ローマの盾」と呼ばれた名将。後者は第2次ポエニ戦争開戦時にコンスルを務めていた人物である。



SC_42コンスルに選ばれた「ローマの盾」ファビウス・マクシムスは、アドリア海沿岸都市アルミニに布陣するハンニバル軍に攻撃を仕掛ける。ハンニバルは象隊を突撃させたが、ローマは「象の恐慌」カードで象の突撃を無効化する。ハンニバルの猛攻を「ローマの盾」ファビウスは耐え、逆にカルタゴ軍の右翼を攻めて遂にそれを突破。カルタゴ軍の側面を撃破してハンニバルを敗走せしめた。後に「アルミニの戦い」と呼ばれる戦いで、ローマはハンニバルに初めての勝利を収めた。

BC_Re勝利に勢いを得たファビウスは、イタリア北部に撤退したハンニバルを追う。手負いのハンニバルは、進撃してきたローマ軍を地中海沿岸の港湾都市コーサ(Cosa)で迎え撃った。兵力ではローマ軍8戦力、ハンニバル軍3戦力で圧倒的にローマ軍が有利である。ハンニバルは切り札象隊を使ってローマ軍に先制攻撃。今回はハンニバルの象隊が威力を発揮し、ローマ軍を蹂躙する。兵力に劣るハンニバルは、ローマ軍右翼を集中攻撃する。兵力に勝るファビウスはカルタゴ軍の攻撃を耐え続けたが、ハンニバルの猛攻から主導権を奪い返すことができない。遂にハンニバルがローマ軍の右翼を突き崩して勝利を得た。
後に「コーサの戦い」と呼ばれる戦いで奇跡的な勝利を得たハンニバルは新たな伝説を作った。

一方南部イタリアでは、プロコンスルのガイウス・クラウディウス・ネロが、南部イタリアのブルティウム(Bruttium)に居座る親カルタゴ部族を攻撃。これを鎮圧しつつあった。

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つづく



Hannibal-ボードゲーム
ハンニバル戦記──ローマ人の物語[電子版]II