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「War and Peace」(邦訳:戦争と平和、以下本作)は、1980年に米国のThe Avalon Hill Game Co(TAHGC)から発表されたナポレオン戦争を扱ったシミュレーションゲームである。デザイナーは、Mark McLaughlinで、本作以外では30年戦争を扱った"Holy Roman Empire"や、太平洋戦争キャンペーン"East Wind Rain"等のデザインでも知られている。
本作は1Turn=1ヶ月、1Hex=40マイル(約64km)、1戦力は約5000人の兵員を表している。またリーダーもユニット化されており、ナポレオン、ネイ、ウェリントン、ブリュヒャー、カールといった有名どころは名前入りで登場する。
シナリオは9本で、一番シンプルなのは計5Turnの「アウステルリッツ」。長いものでは6年間に渡るスペイン半島での戦争を描いた「半島戦争」がある。一般的なシナリオでは、半年から1年未満の特定の戦役を描いている。
他にナポレオン戦争全体を計120Turnで描くグランドキャンペーンシナリオがある。このシナリオは多人数プレイを前提としており、同盟や降伏、海軍ルール等が登場する。一般のシナリオとグランドキャンペーンは全く別ゲームと言って良い。

今回、本作をVASSALでソロプレイしてみることにした。選んだシナリオは「解放戦争」。一般には諸国民戦争とも呼ばれる1813年の戦いである。その前に本作の基本システムをおさらいしておこう。

基本システム

SoP(ゲームの手順)

先攻はフランス側。それぞれのプレイヤーターンにおける手順は以下の通り。
  • 損耗
  • 同盟
  • 増援
  • 移動
  • 戦闘
(補給フェイズがない)

損耗ルール

・ヘクス単位で判定するが、ダイスは1回振ってその目を全てのヘクスに適用する。
・第1Turnは損耗しない

損耗のダイス目が悪いと酷い目に遭う。特に6の目を出した日には、10戦力(約5万人)以上の兵力が一瞬で昇天することもある。
 

同盟

  • ダイスを振って0以下ならフランス側に有利、7以上なら反フランス側に有利なイベントが発生する。イベントの内容はシナリオによる。
  • 自軍の勝利点と都市点でダイス目に有利にできる。フランス軍が有利ならマイナス修正、連合軍ならプラス修正が適用される。
  • シナリオで指定された勝利都市を占領すると指定された都市点を得る。
  • 敵5戦力を撃破又は後退させると勝利点を1点得る。
  • ナポレオンを含む5戦力を撃破又は後退させると勝利点3点得る。
  • 第1Turnは同盟チェックなし

移動

  • 移動力はリーダーが10、騎兵が4、歩兵が0
  • 1人のリーダーは10戦力まで引率可能
  • 歩兵はリーダーに引率されると3移動力、さらに強行軍で最大3移動力まで増加可能(ダイスチェックあり)
  • リーダーは、歩兵を「置いていく」のはアリだが、「拾う」のは禁止
  • 4:1以上でオーバーラン可能。オーバーラン実施時は敵側全滅。移動力1消費(TECに加えて)。6:1以上なら追加1移動力は不要。

補給

  • 補給源は自国又は自国の衛星国の大都市
  • 補給は損耗、移動、戦闘の開始時に補給判定
  • 補給線は補給源から3移動力の範囲
  • 補給線は「同じ色のユニット」で接続できる。

戦闘

  • 戦闘は原則として1ヘクスvs1ヘクスでいずれかが全滅又は撤退するまで戦闘ラウンドを繰り返す。
  • 戦闘ラウンド終了時に攻防いずれかに隣接しているスタックは増援として投入可能。1d6+指揮能力≧5で増援投入に成功
  • 戦力の大きい方と小さいほうで比率を出す。
  • 戦闘比が4-1以上なら自動的に大きい側が勝利
  • 指揮官の能力差、部隊の士気差、地形でDRMが発生する。
  • 戦闘結果はなし、1、D1、D2、D3の5種類
  • 指揮官の能力を使うためには、その指揮官と同一ヘクスに戦闘参加戦力の1/2以上が展開しており、かつ戦闘に参加するユニットの半数以上が指揮官と同色でなければならない。
  • 士気阻喪のスタックに対して同数又はそれ以上の戦力の士気阻喪していない増援を得た場合、士気阻喪マーカーは除去される。
  • 後退時方向は自由。分散後退も可。ただし補給源から離れるような後退は禁止
  • 戦闘に参加した指揮官は全員負傷チェック。6ゾロで負傷する。

ルールはざっとこんな感じである。
それでは早速プレイしてみた。

シナリオV.解放戦争

作戦研究

ウォーゲーマーの間で1813年の諸国民戦争が有名な理由の1つに、初期のTactics誌での名物連載「大陸軍の光と影」で最初に取り上げられたのがこの戦いであったことを取り上げても良いかもしれない。今とは違って戦史やウォーゲームに関する文字情報が貴重であった時代、Tactics誌はウォーゲーマー青少年たちにとっては憧れの雑誌であった。その中で「ナポレオン戦争」という当時としてはマイナーと言って良いテーマが紹介されていたことに、多くのウォーゲーム青少年たちは驚いたことであろう。そしてその中の何割かがナポレオニックゲームの魅力に引き込まれていったのだろう。

今回、AH社の名作ナポレオニックゲーム「War and Peace」(邦訳「戦争と平和」、以下本作)をソロプレイするにあたり、私が選んだのが諸国民戦争を扱うシナリオ「解放戦争」であった。モスクワ戦役における惨憺たる敗北を喫したナポレオンであったが、魔術としか思えない速さで麾下の軍を再編成し、連合軍を迎え撃った。かつての精強さこそ失われたものの、指揮官の質と部隊の練度で未だに優位に立つフランス軍。それに対して量的な面で優位に立つ連合軍。ドイツの支配をかけた戦いが始まる。

恐らく苦しいと思われるフランス軍の作戦から考えてみよう。フランス軍の勝利条件は、ゲーム終了時までにマップ3における大都市を1つでも包囲されずに支配下に留めれば良い。マップ3というと、当時のプロイセン、オーストリア、そしてハノーヴァーやサクソンといったライン河諸国の一部も含んでいる。マップ3の大都市の中には、ベルリン、ドレスデン、ライプチヒといった旧東ドイツ諸都市の他、ハンブルク、ハノーヴァー、カッセルといった旧西ドイツ諸都市も含まれている。フランス軍としてはこれらの都市の1つでも守り切れれば良い。
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フランス軍にとって重要なのは同盟関係である。フランス軍にとって有利なイベントを出すことは勿論重要だが、それ以上に連合軍にとって有利なイベント(例えばオーストリア参戦等)を出させないためにも重要だ。それを達成するためには、フランス軍が都市点を獲得し(その候補はベルリンのみ)、連合軍に都市点を与えない。前者はフランス軍がベルリンを占領すれば達成できるので不可能ではない。しかし後者は連合軍をベルリン、ライプチヒ、ドレスデン、ブレスラウから全て叩き出さなければならない。そしてフランス軍にはもう1つ、別の手段が存在する。それは「決戦」に勝つことだ。ここで言う「決戦」とは、5戦力以上の敵との戦いである。つまり5戦力の敵を撃破すれば、勝利点1点を獲得できるのだ。指揮官の能力及び兵士の士気で連合軍を凌駕するフランス軍にとって「決戦」は魅力的な選択肢である。

なおHobby Japanの和訳ルールブックには「2度目の"0"の目が出たら、以後同盟フェイズは省略する」となっているが、これは「2度目の"7"の目が出たら」の間違いである(英文ルールブック及び公開されている英文第4版ルールブックには「2度目の"7"が出たら」と書かれている)。この点、結構重要なポイントなので、プレイ開始前に確認しておくのが良いだろう。

対する連合軍はフランス軍の裏返し。ベルリンは守る必要があるが、ベルリンだけに拘らずライプチヒ、ドレスデンを守る。またチャンスがあれば西方へ進撃し、ハノーヴァー、ハンブルク等を狙う。連合軍の強みは兵力の優越。従ってその兵力の優位を生かすのみである。この戦いで有名になったライヘンバッハプランに従い、ナポレオンのいない所で攻勢を仕掛けて有利な状況を作っていく。オーストリアが参戦すれば政治的な状況は一気に有利になるので、あとは力押しあるのみだ。

(つづく)