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「White Star Rising」(以下、本作)は。Lock'n Road社が2010年に発表したシミュレーションゲームである。テーマはWW2欧州西部戦線における戦術戦闘で、1944年6月のノルマンディ上陸戦から1945年のドイツ国内戦闘までを計20本のシナリオで再現する。
本作は、Lock'n Road社が発売している"Nation at War"シリーズの1作品で、同シリーズの作品はいずれも同一システム、同一スケールとなっている。1Hexは実際の150m、1Turnは実際の5~15分間を現し、1ユニットは1個小隊(数両の車両又は数十名の歩兵)を現している。本作の詳しいシステムについては、 Game Journal誌#75(2020年6月発売予定) に掲載される予定なので、そちらを参照されたい。
今回、本作のシナリオをいくつかプレイしてみた。

前回の記事は--->こちら

Marve the Door to Bastogne - December 20th,1944

シナリオの概要

1944年12月のアルデンヌ攻勢における戦いである。バストーニュを目指すドイツ軍戦車教導師団に対して、それを阻止せんと待ち構える米コンバット・コマンドとの戦い。両軍とも戦車を中心とする部隊同士である。私は米軍を担当する。

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1Turn

このシナリオで攻撃側はドイツ軍である。ドイツ軍の目的はマップ西部にあるBUTGENBACHを占領することで、米軍はその阻止が目的になる。Turn数に制限があるので、ドイツ軍としては速やかにBUTGENBACHを占領したい。しかしこのTurn、攻撃側のドイツ軍がチットを引く前にTurnが終了した。チットドリブンの本作では、こういう事も良くある話。毎Turn確実に行動できるわけではないので、リスクを見越した行動が求められる。

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2Turn

独軍の戦車がBUTGENBACHから距離6Hexまで接近する。この6Hexは微妙な距離で、独軍のパンター戦車からは通常射程距離内になるが、米軍のシャーマン戦車からは遠距離射撃となり命中精度が落ちる。6Hexという距離を嫌った米軍は、シャーマン戦車2個小隊を前面に展開して独軍擲弾兵が乗ったハーフトラックを狙う。戦車が出撃して不在になった前進拠点には57mm対戦車砲が前進。守りを固める。この57mm対戦車砲。威力は大したことがないが、通常射程距離が6Hexと長いため、パンター戦車にアウトレンジされない。しかもパンターの主砲である長砲身75mm砲は対戦車戦闘には有力だが、対歩兵戦闘には左程でもない。そんなこんなで拠点に籠った対戦車砲は意外と敵にとって厄介な存在なのだ。

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3Turn

先のTurnに突出した米シャーマン戦車隊が独軍ハーフトラックを攻撃。これを撃破した。乗車中の擲弾兵もハーフトラックと運命を共にした。余談だが、本作の乗車・降車ルールは極めてシンプルで、機械化歩兵は表面が歩兵、裏面がハーフトラックとなっている。そして乗車や降車はユニットを裏返すことで実現している。スマートな解決方法だと思う。
先に拠点に陣取った57mm対戦車砲は、距離6Hexのドイツ軍3号突撃砲を狙ったものの、これは外れ。
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4Turn

突出しているシャーマン戦車隊だが、周囲にドイツ軍戦車が集まってきたので、袋叩きになる前に撤退を行う。その撤退中に射程距離内にいるパンター戦車に対して行進間射撃を実施。出目にも恵まれてこれをステップロスさせた。
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5Turn

イベントにより飛来したP-47戦闘爆撃機がドイツ軍のティーガー重戦車小隊を攻撃。これを撃破した。本作での航空支援は、シナリオで予め用意されている場合もあるが、イベントによって突然飛来することもある。なお、可能性は低いが、ドイツ軍の航空支援が登場することも可能性としてはある。
またもや余談になるが、本作のイベントに関する扱いを説明しよう。本作には「カオス」と呼ばれるチットが含まれており、シナリオの指示によってイベントカップに入れられる。この「カオス」チットを引いた時に「カオス表」で2D6に従ってイベントが発生する。「カオス」チットの有無や枚数はシナリオによって決められており、「カオス」を利用しないシナリオもある。また「カオス」チットが途中で消滅してしまうようなケースもある。
閑話休題。航空攻撃の一撃はドイツ軍にとって手痛いものとなった。最強のティーガー戦車を撃破されたこともさることながら、同乗していたタンクリーダー(司令部)が撃破されてしまったからである。タンクリーダーは復活可能だが、その時に能力が低下してしまう(ステップロス面になる)のは痛い。
ドイツ軍にとって悲劇はなおも続く。先の戦闘でステップロスしていたパンター戦車をタンクリーダーの乗車しているシャーマン戦車が攻撃。これを撃破していた。

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6Turn

米軍のタンクリーダーがなおも調子ぶっこいて暴れまわる。戦線右翼(米軍から見て)に残っていた3号突撃砲をタンクリーダーの指揮するシャーマン戦車が撃破した。しかし米軍の天下もそこまでだった。密かに増援で現れてきたドイツ軍の5号駆逐戦車ヤークトパンターが、タンクリーダーのシャーマンを至近距離から射撃した。88mm長砲身砲による至近射撃の威力は凄まじく、シャーマン戦車は何が起こったのか気づく間もなく残骸と化した。
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7Turn

ヤークトパンターの登場で勢いを取り戻したドイツ軍。さらにたたみかけてきた。チット引きにより先手を取ったのはドイツ軍で、ヤークトパンターの射撃を受けてまたもやシャーマン1ユニットが蒸発。こちらは新型のM4A3E8、いわゆる「イージーエイト」で、期待のサブリーダーが乗っていた。さらに別のシャーマン1ユニットがパンター戦車の射撃を受けて蒸発。別のシャーマンも1ユニットがやられて、このTurnだけで計4ユニットものシャーマン戦車が失われてしまう。しかもそのうちの2ユニットは、対戦車火力に優れ、さらにジャイロスタビライザーを装備して行進間射撃能力に優れたイージーエイトだったので、米軍の衝撃は大きかった。なんやかんや言ってもまともに撃ち合ったらシャーマンではドイツ軍の重戦車に勝てないことを改めて痛感した。
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8Turn

ドイツ軍は総攻撃を開始。ドイツ軍による盤外射撃がBUTGENBACHの街を守る米軍部隊に降り注ぐ。守る米軍部隊はこの一撃で大損害を被る。さらにドイツ軍は煙幕を展開。BUTGENBACHに突撃態勢に入る歩兵部隊を米軍の防御射撃から守る。

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9-10Turn

ドイツ軍の歩兵部隊がBUTGENBACHへの突撃を仕掛けた。しかしBUTGENBACHを守る米軍部隊は既に混乱から回復。万全の態勢で待ち構えていた。市街戦なら強力なドイツ軍戦車もその威力を発揮できない。歩兵対歩兵。素手の兵隊たちが市街戦を制する存在となる。そして米兵達は強かった。突撃してきたドイツ兵に対し、一歩も引かぬ戦いぶりの米兵達は、ドイツ兵によるBUTGENBACHへの突入を許さなかった。ドイツ軍は撃退され、米軍はBUTGENBACHをガッチリと守り切っている。

ここで時間切れとなりゲーム終了。勝利条件的にはBUTGENBACHを守り切った米軍の勝利に終わった。

感想

序盤は快調だったが、強力なドイツ戦車の前にシャーマンを突出させたのは失敗だった。特に新型のイージーエイトが活躍の間もなくアッサリと殺られてしまったのは痛かった。シャーマンとしては、開豁地に布陣するのではなく、視認距離の及ばない地点に待機させておき、ドイツ戦車とは接近戦で勝負するのが得策であった。ただし最終的に勝利できた理由はドイツ軍歩兵戦力不足なので、序盤の戦闘でシャーマン戦車がドイツ軍ハーフトラックを撃破した意義は大きかった。なお、今回のプレイ時間も約3.5時間である。

(つづく)

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