200107_ながい旅

ながい旅

大岡昇平 角川文庫

陸軍中将岡田資(たすく)。終戦時東海軍司令官であった岡田は、戦後の戦犯裁判でB級戦犯として起訴され、有罪となった。彼の起訴内容はB-29搭乗員に対する処刑。戦時中に落下傘降下したB-29搭乗員を「戦争犯罪者」として斬首したのである。彼はその責任を一身に背負い、戦犯裁判で米軍による無差別爆撃の非道を告発した。戦犯裁判における岡田の堂々とした態度は、弁護側のみならず検察側の心をも打ち、後に死刑が確定した時に数多くの助命嘆願となって表れてくる。
本書は岡田資の戦犯裁判における戦いを克明に描いた著作で、一次資料を丹念に追いながら岡田の「法戦」を再現していく。本書はあくまでも冷静な筆致で戦いを描くことで、戦争裁判のあり方に疑問を投げかけている。
しかし冷静に考えてみると、戦時中における岡田の行為を全面的に擁護することもまた難しい。B-29搭乗員に果たして命令に拒否する権利があったのか。そのような搭乗員を犯罪者として裁判もなしに処刑したことについて、批判する余地がないとは言えない(そのことは岡田自身が認めている)。だから、所謂「A級戦犯」と岡田の事例とを同一視することはできない。「A級戦犯」に対する有罪判決は明らかに不当判決だが、岡田については必ずしも不当判決とは言えない面もあるのだ。
いずれにしても本書は、米国の戦後政策や戦犯問題について考えるきっかけを与えてくれる著作であることは間違いない。

お奨め度★★★★