KMS_Hipper


バレンツ海海戦は1942年12月31日にノルウェー北岬沖バレンツ海で生起した海戦で、ソ連へ向かうJW51B船団を護衛する英国艦隊と、船団襲撃を企図するドイツ艦隊との間で戦われた。兵力的には重巡2隻(うち1隻はいわゆるポケット戦艦)を有するドイツ艦隊が有利だったが、英艦隊の巧みな戦闘によって船団攻撃に失敗した。このバレンツ海海戦を「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)でシナリオ化してみたい。

戦闘序列

まず両軍の兵力だが、両軍のOBは以下のようになる。

英艦隊

JW51B船団:駆逐艦6隻、護衛艦艇5隻、輸送船14隻
フォースR:軽巡2隻(「シェフィールド」「ジャマイカ」)

ドイツ艦隊

重巡2隻(「ヒッパー」「リュッツォー」)、駆逐艦6隻

交戦状況

この海戦、時系列的には結構複雑である。しかもドイツ側の行動が優柔不断に思えるので、特にややこしい。とりあえず時系列的に並べてみた(日付は12月31日)。なお、 こちら の合戦図が参考になるので、併せてご覧いただきたい。

0820:英コルベット艦「ハイデラバード」(HMS Hyderabad)が怪しい駆逐艦2隻発見
0830:英駆逐艦「オブデュリト」(HMS Obdurate)が同じ敵を発見
0930:英駆逐艦「オブデュリト」、敵をドイツ駆逐艦3隻と識別。交戦開始
0940:船団右舷(北側)に独重巡「ヒッパー」出現。射撃開始
(その後、英駆逐艦2隻と重巡「ヒッパー」がダラダラ砲戦)
1018:英駆逐艦「オンスロー」(HMS Onslow)被弾、シャーブルク大佐負傷
1036:英掃海艇「ブランブル」(HMS Bramble)沈没、「ヒッパー」の砲撃による
1105:英フォースR、ドイツ艦隊をレーダー探知
1130:英フォースR、独重巡「ヒッパー」に対して射撃開始(距離7nm)
1136:独重巡「ヒッパー」被弾
1140:独重巡「リュッツォー」、英船団に対して射撃開始(距離9nm)
1149:独クメッツ提督、撤退命令

こうやってみると、交戦の大部分が「ヒッパー」戦隊(重巡1、駆逐艦3)とJW51B船団直接護衛隊(駆逐艦5、護衛艦艇4)との戦いに終始している。その他のフォースRやドイツ「リュッツォー」戦隊等は、戦闘終結間近に戦闘に介入したに過ぎない。それでもフォースRは「ヒッパー」を損傷させ、クメッツ提督に撤退を決意させる1つの要因になったということでその意義を評価できようが、「リュッツォー」戦隊は一体何のために出てきたのか・・・。

上記の史実を前提に「バレンツ海海戦」をシナリオ化する場合にいくつかプランを考えてみたい。
  1. フォースRと「リュッツォー」戦隊をOBから外す。シナリオの期間をフォースRの戦闘加入(つまり1130)までとし、フォースRが介入するまでに両軍が達成した戦果により勝敗を判定する
  2. 上記の拡張で、フォースRが介入した後も描く。
  3. JW51B、フォースR、ドイツ艦隊の全てが登場する。フォースRや「リュッツォー」戦隊の戦闘加入は史実よりも早めにシフトする。


まず(1)は一番史実に近いシナリオである。ただし折角史実で登場してくれた英大型軽巡や独ポケット戦艦がシナリオに登場しないのは些か寂しい。
(2)はフォースR登場まで間が持たないという問題がある。なんせ独英艦隊が砲戦を開始してから2時間経過してようやくフォースRが「ヒッパー」に対して射撃を開始した訳だから、24Turn(「ソロモン夜襲戦」は1Turn=5分間)もの間、英駆逐艦と「ヒッパー」戦隊が撃ち合い続けなければならない。
(3)は(2)の弱点を解消するため、フォースR及び「リュッツォー」戦隊の戦闘介入を史実より前倒しにする。史実からはやや離れるが、プレイヤーを退屈させないという点では良いアイデアだ。

色々と検討してみた結果、上記(1)をメインシナリオとし、シナリオのバリエーションとして(3)を取り入れることにしてみたい。また英軍の護衛艦隊(掃海艇や武装トローラー等)は、砲火力が小さく水上戦での役割は殆どないと判断し、シナリオのOBからは外すことにした。

勝利条件についても色々と考えたが、輸送船2隻撃沈で独軍勝利。ただし「ヒッパー」が中破しないこと、とした。英軍は魚雷攻撃で「ヒッパー」を脅しつつ、輸送船を逃がす展開になるだろう。なお、英駆逐艦1隻を撃沈すると輸送船0.5隻撃沈とカウントされるので、独軍としては護衛の駆逐艦を一掃しても勝利できる。

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テスト状況

初期配置

GE_CA4a下図の通り。地図は上が東側で、JW51B船団の進行方向である。ドイツ艦隊はJW51B船団の後方を横切って船団の左後方から回り込もうとしている。ドイツ艦隊は重巡「ヒッパー」と駆逐艦3隻とに分かれて行動している。英艦隊は駆逐艦5隻を3グループに分割。シャーブルック大佐直率の「オンズロー」と「オーウェル」は「ヒッパー」に向かい、「オビーディアント」「オブデュレイト」はドイツ駆逐艦3隻に相対する。最後の1隻「アケイティーズ」は船団直衛として残っている。

写真00


1Turn

重巡「ヒッパー」が近づいてくるのを見た英艦隊は、一旦「ヒッパー」をやり過ごすべく右へ回頭する。「ヒッパー」は回頭中の英駆逐艦を狙って距離10,500m(7Hex)から20cm砲による一斉射撃を加えるが、命中弾はなかった。

写真01


2Turn

Smoke「ヒッパー」に狙われた英駆逐艦は煙幕を展開しながら離脱する。「ヒッパー」はその後方から主砲射撃を浴びせるも、命中弾は得られず。






写真02


3Turn

「ヒッパー」は舵を右に切って英艦隊を追い詰める。煙幕を張って逃げる英駆逐艦だったが、「ヒッパー」が煙幕の隙間から英駆逐艦を照準し、距離15,000mから英駆逐艦「オンズロー」に命中弾1発を与えた。

4Turn

CW_DD1a英駆逐艦が合流して4隻になった。左へ舵を切って「ヒッパー」の右舷前方で砲列を敷く。距離15,000mは駆逐艦にとってはかなり遠距離だったが、4隻が一斉に「ヒッパー」を攻撃し、辛うじて命中弾1発を与えた。
「ヒッパー」の反撃。目標は先ほどと同じ「オンズロー」。「ヒッパー」の射撃は冴えを見せて2発の20cm砲弾を「オンズロー」に命中させた。「オンズロー」は大破。戦闘力を失う。


写真03


5Turn

「ヒッパー」は目標を駆逐艦「オーウェル」に変更して距離12,000mから主砲射撃を開始する。「ヒッパー」の射撃は初弾から目標を夾叉。2発が「オーウェル」に命中し、「オーウェル」は中破した。英駆逐艦も「ヒッパー」に向けて反撃を行うが、僅かに命中弾1発では「雀の涙」である。

写真04


つづく