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「アドミラル・グラフ・シュペー」(以下、本作)は1983年にツクダホビーから発売されたシミュレーションゲームです。テーマはWW2欧州戦線における水上戦を1ユニット1隻のスケールで再現します。1Hex=0.5海里(約900m)、1Turn=5分。
基本システムはシンプルです。1Turn(ゲーム中の用語では「イニング」)は3つのウェーブに分かれており、ゲーム自体はこの「ウェーブ」を基準に進みます。各ウェーブはプロット、移動、攻撃の3段階に分かれており、プロット通りに移動し、攻撃し、損害判定を行います。

「だったら最初からイニングなんて単位はいらないんじゃね?」

と思えてきますが、移動力の細かい差異を表現するためにイニングという概念が必要なようです(「タイガー1」のエンドレスフェイズシステムに近い考え方だと思われます)。
本作の特徴的なのは詳細は砲撃システムにあります。砲撃を解決する場合、まず夾叉判定をします。夾叉に成功すれば命中判定に移り、命中が発生すれば命中した弾の数だけ損害判定に移ります。損害判定もなかなか大変で、まず大雑把な命中個所を1d6で決めて、その後上面か側面かを1d6で判定します。次に命中個所に応じた細かい命中個所(例えば砲塔だとか機関室だとか)をd36で決めます。命中個所の装甲値と砲弾の貫通力を比較し、貫通力が上回った場合には損害判定に移行し、1d6で損害の程度を決めます。これを見ただけで

「面倒だなぁ」

というのは一目でわかるのですが、ルール自体はわかりやすく、また精密なゲームはそれはそれで面白いかもしれない、と期待も高まります。

今回、選択したシナリオは、「B-3.デンマーク海峡」。1941年5月24日における「ビスマルク」「プリンツ・オイゲン」と「フッド」「プリンス・オブ・ウェールズ」が交戦したアレです。史実ではご存知の通り「フッド」が「ビスマルク」の砲撃を食らって轟沈していますが、果たしてゲーム上の結果はどうなるでしょうか。

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デンマーク海峡海戦

セットアップ時の彼我の距離は約50Hex(45km)離れています。そこで両軍とも接近を図ります。39Hex(約35km)で「ビスマルク」が英艦隊を射程内に捉えて主砲射撃開始。距離が遠いので当然ながら当たりません。しかし弾切れルールがないので、最大距離から撃ちまくるのが得策。
続いて37Hexの距離から「プリンツ・オイゲン」も主砲射撃開始。こちらは毎ウェーブ2回ずつ撃てるので(発射速度が速いから)2回夾叉チェックを行います。当然ながらこちらも外れです。
英艦隊の砲も距離38Hexから「プリンス・オブ・ウェールズ」が「ビスマルク」に向けて射撃を開始。「フッド」も距離34Hexから「プリンツ・オイゲン」へ向けて射撃を開始しました。

英艦隊の戦術は、距離20Hex(18km)まで近づいてから舷側火力でドイツ艦隊を圧倒するというもの。遠距離砲戦の場合、装甲の弱い巡洋戦艦が不利だと判断したためです。そのため序盤はドイツ軍が英艦隊をT字に描く形になり、有利に戦闘を進めます。舷側砲火が首尾線方向よりも砲火力が強力なのは水上戦ゲームの常ですが、本作の場合、さらに舷側砲火の方が射撃指揮で有利になるという解釈がなされており、舷側砲火が圧倒的に有利なようになっています。英艦隊としては、距離を詰めるまでは叩かれっ放しで我慢に一手です。

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最初に命中弾を受けたのは「プリンス・オブ・ウェールズ」で、「プリンツ・オイゲン」が27Hex(24km)から放った20cm主砲弾の第16斉射目が「ウェールズ」を夾叉し、2発は「ウェールズ」に命中したのです。しかし戦艦の重装甲は20cm砲弾を物ともせずに跳ね返しました。

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距離20Hex(18km)まで近づいた時にようやく英艦隊は舷側をドイツ艦隊に向けて舷側砲火を浴びせかけます。しかし既に何度か近弾や夾叉を得ていた「ビスマルク」の砲火が「フッド」を捉えました。「ビスマルク」の第30斉射が「フッド」を夾叉し、2発の38cm砲弾が命中。さらに第31~32斉射も同じく「フッド」を夾叉し、計4発の38cm砲弾が命中しました。累積で6発の命中弾を受けた「フッド」でしたが、そのうち弾薬庫側面と機関室側面に命中した3発は「フッド」の装甲に阻まれて無効弾。他の2発も当たり所が悪く急所を外れていたので「フッド」は実害なし。結局B砲塔のバーベット基部に命中した1発によってB砲塔が使用不能になったのが「フッド」にとって唯一の実害でした。

感想

さあ、これから、という所ですが、この段階でダイスを振りあうだけの展開に飽きてきたので切上げとしました。
感想としては予想通り命中判定と損害判定が面倒です。しかも装甲板に跳ね返されるケースや無効弾に終わるケースが多いので、気持ちが萎えます。「それが実際通り」なのかどうかは知りませんが、もし「実際通り」であれば、命中判定の回数を減らしてその分1回の命中判定での命中期待値を増やした方が良いと思いました。徒労に終わることが多い作業のために延々とダイスを振るのは正直苦痛です。
命中個所判定ルールも明らかに冗長で、d36を使うのであれば最初からダイス1回で命中個所を特定できるようにすれば良い訳です。例えばデータカードを使う等して。
そういった意味では副砲射撃も冗長です。このゲーム、副砲を撃っても損がないのでガンガン撃った方が有利なのですが、その命中率の低さときたら・・・。「d36で12以下で夾叉、さらに13以下で命中1発」みたいな射撃を1ウェーブあたり2~3回(発射速度分)繰り返すのはさすがに勘弁してください。さらに奇跡的に命中弾を得てもどうせ装甲に弾かれるだけだし・・・。副砲射撃は面倒なので途中から止めました。
また移動システムにも問題があります。本作では「舵の効き方」を再現するルールがあり、戦艦の場合1度取り舵を取ると、中央に戻すのに2ウェーブかかります。実はこれが曲者で、タイミングを間違えて舵を切ると、60度旋回では止まらずに120度旋回してしまいます。何故なら舵を中央に戻すのに2ウェーブかかるからで、その間に2回旋回してしまう場合があるからです。これは極端な例ですが、とにかく移動に関するルールがキチキチ過ぎて、艦隊運動をするだけでも大変。それを補うために「艦隊移動」なるルールがあり、「後続艦が先行艦の航跡を踏まなければならない」とありますが、もし移動ルールを厳密に従って移動した場合、後続艦が物理的に追跡できないケースが必ず発生します。
とにかく移動ルールについては、もう少し自由度を認めないとヘクスを使ったシステムではまともに機能しません。そもそもヘクスやターンという現実にはない制約条件がある中で現実に近い制約条件を適用しようとするから無理があるのです。本作のような移動ルールは、例えばHarpoonのようなミニチュアルールで初めて機能するルールであり(実際Harpoonでも移動自体はもっと単純化しています)、ヘクス使用を前提としたゲームでは絶対に正しく機能しません。

システム的な問題以外にもっと本質的な問題として「システムがゲームの中で生かされていない」という問題があります。要するに「システムありき」でデザインされており、「システムが主、ゲームが従」なのです。具体的な例を出せば、先ほどから取り上げている詳細な砲撃システムもゲームの中で戦術に反映する手段が殆どない。砲の貫通力と装甲値を見て貫ける貫けないの判断をして射距離を決めるぐらいはできますが、夾叉されたから回避のために舵を切るとか、逆に相手に舵を切らせて混乱に持ち込むといったように砲術を戦術に昇華させる所が再現できていない。結局「射距離を決めたらあとは延々サイコロを振り合うだけ」という展開になってしまいます。私自身はその不毛なダイス振りに疲れて途中で止めてしまいましたが・・・。

上記の通り今回のプレイでは本作についてはあまり良い印象を持てませんでした。従って他のシナリオはプレイしていません。ひょっとしたらラプラタ沖海戦やバレンツ海海戦のシナリオをプレイしたら、また違った面白さがあるのかもしれません。そのあたりを確かめられなかったことが残念ですが、不毛な作業に時間を使うのも嫌なので・・・。

当時の我々が求めていた方向性の1つがこのようなゲームだったのかもしれません。

KMS_Bismarck