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ウォーゲーム日本史第13号「最後のサムライ-西南戦争」(以下、本作)は、1877年に起こった日本最後の内乱=西南戦争を扱ったシミュレーション・ウォーゲームだ。1ユニットは大隊~旅団だが、現在とは部隊規模が違うので、数百~数千人規模だと思われる。指揮官ユニットは登場しない(指揮官の名前入りカードはある)。1Turnの長さは不明だが、固定的な長さではなく1~数週間程度の幅のある長さだと思われる(Victory in the Pacificと同じ)。
システムは、WW1を扱った傑作"Paths of Glory"に近い。決まった枚数のカードをランダムに引いて手札を構築し、お互いにカードを出し合って作戦行動を行う。カードにはイベントで使うか、行動で使うかの選択肢があり、イベントで使う場合にはカードに記載されている内容をそのまま実施し、行動で使う場合にはカードに記載されている行動ポイントを消費して移動や戦闘を行う。それ以外にカードを「購入」するアクションもあり、有利なカードは「購入」しないと使えない。

余談だが、カードドリブンゲームの中で「自分でカードを選ぶ」ゲームはあまり好きではない。カード選択というゲームのテーマとは関係ない要素の巧拙でゲーム展開が左右されるのに違和感を感じるからだ。カードドリブンはランダムドローの方が良いと思う。もちろん何事にも例外はあり、カード選択型ゲームの中にも好きなゲームはある。

今回、本作をVASSALで対戦する機会を得た。下名は政府軍を担当する。

1Turn

薩軍は正規編成の5個大隊のうち、三番大隊を除く4個大隊が北上。熊本を目指す。熊本城外で微弱な政府軍守備隊(1-1-1、火力-耐久力-移動力、以下同じ)を撃破した薩軍。政府軍は熊本北部植木に布陣していた1個連隊が田原坂を通って南関まで後退。さらに本土から動員された第2旅団が戦略移動で佐賀に布陣する。予備隊としての布陣の他、佐賀の治安維持という目的もある。
薩軍は大胆な上陸戦を実施。宇土に布陣する五番大隊が兵力の一部を割いて天草灘、有明海を通って長躯長崎を急襲する。長崎には政府軍守備隊(1-1-1)がいたが、薩軍上陸部隊(2-2-1)は政府軍守備隊を撃破し、長崎を占領した。
WGJ13_Turn01


2-3Turn

薩軍は田原坂を超えて出撃。2個大隊(いずれも4-3-3)で南関の政府軍を攻撃する。政府軍第14連隊(2-2-2)が壊滅。残った政府軍は佐賀まで退いた。政府軍は直ちに反撃を実施。薩軍の2個大隊が半壊状態となり、生き残りは田原坂を超えて植木に下がっていく。長崎方面でも増援で登場した政府軍第4旅団(4-2-2)が長崎を攻撃。薩軍を撃破して長崎を奪回した。
薩軍は熊本で不平士族を集めて熊本隊を編成する。

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4Turn

薩軍は再び北上し、南関で政府軍を撃破。さらに北上して政府軍の拠点である久留米を攻撃。これを占領する。さらに池上四郎カードの効果で一時的にせよ小倉が薩軍の支配下になる。

「一帯コレハ何ヲしみゅれーしょんシテイルノデスカ」

と言い訳しつつも、残り士気値がいきなり"1"まで低下してしまい、後がない政府軍なのであった。

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57Turn

後がない政府軍は増援部隊で小倉を奪回し、さらに兵力を集結して久留米に攻撃を行う。久留米を守る薩軍は後退し、再び政府軍が支配地域で有利にたった。

6Turn

政府軍はさらに南下。南関を押さえると共に、豊後側から進撃した第2旅団(3-2-2)が竹田を超えて高森まで進出してきた。さらに政府軍は黒田清隆指揮の元、政府軍第4旅団(4-2-2)が長崎を出港。宮崎に強襲上陸を行って同地を占領する。これによって延岡方面にまで進出していた薩軍2個大隊は補給切れで壊滅、の筈だったが、神速桐野利秋率いる薩軍最後の正規編成である三番大隊(4-3-3)が宮崎に進撃してきた。桐野の果敢な攻撃により政府軍第4旅団は後退不可能にて壊滅(2/3以上の確率で生き残る筈だったのに・・・)。政府軍は薩軍を壊滅させる千載一隅の好機を逸した。

WGJ13_Turn06


7Turn

熊本方面の政府軍は南関から山鹿に進出。そこから熊本城外を攻撃する。激しい戦い。政府軍も大損害を被ったが、薩軍四番大隊(4-3-3)も大損害を受けて後退。熊本城外を政府軍が支配し、熊本城が包囲から解放された。この時点で薩軍と政府軍の支配地域の差が3点になり、薩軍は勝ち目なしとしてゲーム終了となった。

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感想

結果的には勝利したが、後から振り返ると結構やばい展開であった。池上四郎カードの影響を見落としていたのが苦戦の原因で、最後にこれを長崎で使われていたら負けている所であった。池上四郎カードについては注意していれば容易に阻止できるので、これを有効活用させたのは失敗だったと言えよう。
ちなみに元々このゲームは政府軍が有利なので自慢にはならない。それよりも個々の場面で薩軍プレイヤーの手腕の見事さに唸った。政府軍をしてここまで追いつめられるとは正直予想していなかったから。
勝敗はとにかく、本作を対人戦をできたことは収穫であった。本作についてソロプレイをしたことはあるのだが、カードドリブンゲームではソロプレイと対人戦でまるで緊張感が違う。西南戦争自体は興味のあるテーマであったので、本作は長年プレイしてみたいと思っていた。そういった意味では念願が叶った感がある。

ゲームバランス的には政府軍有利と思われる。余程の事がない限り(例えば政府軍が初心者など)薩軍の勝利は難しいのではないだろうか。例えば運が味方して熊本城が陥落すれば勝機が見えてくるかもしれないが、熊本城にかまけていると他で押されてしまう。仮に熊本城を落としてもそれによって薩軍の兵力が底を着いてしまえば。政府軍の反撃を阻止できないだろう。そういった意味で勝敗を争うには不向きなゲームである。
ただ西南戦争という珍しいテーマを再現したというだけでも価値のある作品。プレイしていても波乱含みで面白く、薩軍も決して退屈しない。最後は華々しく散るとわかっていても、それまでに「十分に暴れまわってみせよう」

という訳でいつでも薩軍担当でお相手しますよ。「勝てる」とは言いませんが、華々しく玉砕してみせますよ。

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