200409_ペリリュー

ペリリュー島玉砕戦 - 南海の小島 七十日の激闘

舩坂弘 光人社NF文庫

パラオ諸島ペリリュー島。戦時中には日本海軍の航空基地があり、1944年9月に米軍の上陸を日本軍が迎え撃ったサンゴ礁の島である。この島の戦いは、1945年2月硫黄島の戦いと並んで米軍にとって最も苦しい戦いとなり、2ヶ月以上を要して漸く日本軍を全滅させた。本書は、ペリリュー島に隣接するアンガウル島の戦い(この戦いも米軍に多大な犠牲を強いた)に参加した筆者が、ペリリュー島での日本軍の奮戦を後世に伝えるべく記した著作である。
本書は日本側の視点から見たペリリュー戦の実情を記載しており、内容はほぼ日本軍の勇戦敢闘ぶりを賛美する内容になっている(特に前半部分)。そういった意味において本書は中立的な視点にはやや欠けると言わざるを得ない。また記載内容が大袈裟であり、余りに旧軍を賛美する内容なので、判断に戸惑う部分がある。一例を挙げれば、本書で「上陸直後に数百両の敵戦車を破壊・擱坐した」とあるが、米軍の公式記録によればD-Dayにおける水陸両用戦車の損失数は計26両となっている。さらに陸戦で不可欠な戦車戦力について、米海兵隊は僅かに30両のM4シャーマンをペリリューに持ち込んだに過ぎない。ペリリュー戦での日本軍の奮戦を否定するつもりはない。しかし客観的に見た場合、ペリリュー戦の結果は、日本軍の奮戦と共に「敵を甘く見た」米海兵隊の失敗という側面が強いこともまた否定できないであろう。
いずれにしても実際に戦った人による回想なので、そういった意味においては貴重な作品といえる。

お奨め度★★★