200523_他人を支配したがる人たち

他人を支配したがる人たち:身近にいる「マニピュレータ」の脅威

ジョージ。サイモン 秋山勝訳 草思社文庫

マニピュレータとは、言葉巧みに他人を支配し、自身の目的達成のために他人を誘導する人物のことだ。日本で最近しばしば語られる「モラハラ」に近いイメージだが、モラハラが暴言やイジメといった比較的「わかりやすい」態度を示すのに対し、本書で描かれているマニピュレータはもっと陰湿である。自分が「良い人」や「弱い人」になりすまし、巧みに人を誘導する人物のこと。例えば直接的な物言い(例えば「私は貴方が嫌いです」)をせず、遠回しに(例えば「みんな貴方を避けてるよ」)的な言い方をするケースも含まれるのかもしれない(1回、2回なら回りくどい表現も良いが、毎回毎回だとその人の「隠された攻撃性」を疑ったほうが良い)。
本書では、親子関係、夫婦関係、上司と部下等、いくつかの事例を挙げてマニピュレータがいかに人を欺き、人を巧みに誘導するかを実例を挙げて説明している。面白いのは、親子関係で必ずしも親がマニピュレータである場合ばかりではなく、子供の方がマニピュレータの場合もあること。そして子供がどのようにして親を欺き、親をコントロールしているかが描かれている。
本書を読んで感じた点は2つ。まず自身の行動を振り返ってみる必要があること。自身の行動にマニピュレータ的な側面がなかった。もちろんマニピュレータ的な行動の全てが悪いわけではない。筆者も「アグレッシブネス」と「アサーション」は違うとし、アサーション=明確な自己主張は奨励している。ただし過度に相手をコントロールしようとすると、マニピュレータになる。自身の性格がいわゆる「押しの強い」タイプなので、注意する必要がある。
もう1点は、マニピュレータからいかに身を守るか。本書の主眼はむしろそちらで、いくつかポイントがあるが「言い訳ではなく行動でその人を評価する」「自身が許容できる範囲と許容できない範囲を明確にする」等が挙げられている。
ボリューム的には大したことはないが、普段あまり馴染のない世界の著作であったため、新鮮な気持ちで読むことができた。

お奨め度★★★★