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Flying Pig Games社のOld School Tactical(OST)シリーズは、WW2における陸上戦闘を分隊規模で描いたシミュレーションゲームシリーズである。1Hexは実際の50mに相当し、1Turnのスケールは不明だが数分と思われる。1ユニットは歩兵1個分隊、車両1両、支援火器や火砲1基/1門を表す。指揮官もユニット化されている。

前回は ゲームシステムと西部戦線シナリオのプレイを紹介した。
今回は1942年の東部戦線を扱ったモジュールである「Stalingrad」をプレイしてみた。選択したシナリオは「No Man's Land」。1942年7月2日。ボロネシへ向かうドイツ第4装甲軍とそれを迎え撃つロシア軍との遭遇戦を描いたシナリオである。ドイツ軍には新型の4号戦車F2型が登場し、ロシア軍には重装甲のKV-1重戦車が登場する。
下名はドイツ軍を担当する。

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1Turn

このシナリオは、マップ中央の高地を巡る争奪戦である。両軍とも盤端から侵入し、マップ中央の高地に向けて突進する。このTurnは両軍とも高地に近づくだけで、まだ戦闘にはならない。

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2Turn

両軍ともマップ中央部に集結しつつある。一部では戦車同士の撃ち合いも始まっていたが、未だ両軍に具体的な損害は出ていない。

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3Turn

各地で両軍の戦車同士による激しい撃ち合いが始まる。ロシア軍がBT-7軽戦車が主力だが、1両だけ恐怖のKV-1重戦車が混じっている。ドイツ軍は機関砲装備の2号戦車と50mm砲装備の3号戦車H型である。射撃戦ではドイツ軍が優位に展開し、2号戦車がBT-7軽戦車1両を撃破、3号戦車がさらに1両を撃破していた。
マップ中央の高地帯では独ソの歩戦連合部隊同士が近接白兵戦を戦い、両軍とも戦車1両ずつを失っていた。

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4Turn

前進してきたKV-1重戦車。その主砲が火を噴いた。2号戦車1両が直撃弾を受けて爆発炎上する。このTurn、ドイツ軍のインパルスポイントがたったの4ポイントしかない。従ってドイツ軍は重点指向で戦う。指揮官を含む歩兵2個分隊がKV-1重戦車に近づく。近接戦闘によって虎の子KV-1重戦車を撃破した。

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5Turn

ドイツ軍の増援部隊が戦場に到着する。突撃兵を中心とした近接戦闘部隊である。彼らは得意の近接戦闘でロシア軍歩兵2個分隊を撃破し、その優秀性を発揮した。

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6Turn

ドイツ軍の4号戦車F2型が戦場に到着した。75mm対戦車砲を装備するこの新鋭戦車は、ソ連軍の誇るKV-1重戦車やT-34中戦車と互角以上に戦う性能を有していた。その4号戦車に立ち向かったのは、レンドリースで東部戦線に運ばれてきた英国製マチルダ戦車である。40mm砲装備のマチルダは、装甲こそ分厚かったが、肝心の対戦車火力が非力であったため、4号戦車と太刀打ちするのは困難だった。

「これは楽勝」

とドイツ軍担当の私は内心ほくそ笑んだが、まさかの事態に。威力に劣るマチルダの40mm砲弾が事もあろうか4号戦車の履帯に命中。4号戦車は走行不能に陥ってしまう。4号戦車のマチルダに対して75mm砲で反撃したが、移動後射撃により命中率が低下し、射弾は目標をそれた。

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感想

ここまでプレイした所で、いったん終了とした。所要時間はセットアップを含めて約4時間である。ちなみに全部で12Turnのシナリオなので、半分まで終了したことになる。
システム的にはやや粗削りな所もあるが、分隊規模の戦術戦闘を再現するシステムとしてはよくできている。特に優れた点としては、1Turnに2度の射撃機会があること。シンプルなルールだが、火力拠点の有効性を上手く再現できている。これが1Turnに1度しか射撃できないシステムだと、囮の1ユニットをウロウロさせて相手に1発撃たせるだけで相手の火力拠点を無力化できてしまう。
またインパルスシステムと交互活性化システムも良くできている。イニシアチブシステムのゲームでよくある現象として、決勝点でイニシアチブを取った側が圧倒的に有利になり、イニシアチブダイスの良否でゲーム自体の結果が決まってしまうことがある。その点、本作の場合は交互活性化システムなので、そのような弊害は少ない。

気になる点としては交互活性化システムなのでどうしても選択肢が多くなり、プレイに時間がかかること。それと移動中の歩兵について防御力が低下するようなルールがないので、歩兵が走り放題になること。また戦車戦についても、前面装甲の範囲が広すぎて(前方180度)、「挟んでポン」がやりにくい(これはこれでリアルなのかもしれないが)。
色々と気になる点もあるが、全体的にはバランスに優れた好ゲームと評して良い。

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