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The Fulda Gap(以下、本作)は、Compass Games社が2020年に発表したシミュレーションゲームだ。テーマは20世紀後半に起こり得た西ドイツにおける東西両陣営の対決で場所はフルダ峡谷。かつて米ソ両軍による地上部隊同士の決戦場とみなされていた場所だ。

本作については既に何度か紹介してきた。

シナリオ1ソロプレイ
シナリオ4対戦
シナリオ5対戦


これまでの戦いでは、残念ながら本作の欠点が目に付いてしまった。私及び私以外の参加者についても、本作に対してあまり良い印象を持つには至らなかった。

曰く「砲撃が強すぎる」
曰く「小川を戦車が超えられないのはおかしい」
曰く「米軍部隊が強力すぎる」
曰く「火災が邪魔で前に進めない」
曰く「電子戦は面倒」

等等。

批判の多くは本作におけるNATOとソ連軍の能力差に関するものであった。
確かに本作のシステムは様々な面でNATO側が有利な内容になっており、ソ連側で勝利を得るのは難しい。これまでプレイしたシナリオのいずれについても戦場での勝利者はNATO軍であった。

とはいえ、本作は非常に興味深いシステム、興味深いテーマを扱った作品なのでこのまま埋もれてしまうのは如何にも惜しい。とはいえ私は基本的には「デザイナーの考え方を尊重したい」派なので、気に入らないからルールをちょこちょこ変えよう、というプレイスタイルにはあまり合意できない(まずは「何もつけずにお召し上がりください」)。取りあえずはデザイナーの考え方を理解した上で、合意できる・合意できないと判断してみたい。そのためにはデザイナーが提唱するルールを忠実にトレースしてプレイしてみたい。とはいえ、今まで散々な目にあったプレイヤーを集めて再び再戦するのも難しい。さて、どうしたものか・・・・。

そんなことを思いながら本作のシナリオブックをつらつら眺めていると、気になるシナリオが目に付いた。シナリオ2「The Thin Black Line」である。これは、以前に紹介した シナリオ4「Hold The Line At All Costs!」
に似ている。シナリオ4との違いは、扱うプレイ期間がシナリオ4は4日間に対し、こちらは僅か半日である。また登場する部隊もNATO軍は米第11機甲騎兵連隊(11Cav)と若干の付属部隊のみ。シナリオ4よりもNATO軍は遥かに弱体化している。対するソ連軍はシナリオ4の序盤兵力とほぼ変わらない。

「これなら、NATOが本当の地獄を味わうことができるのではないか」

そんな期待を込めながらシナリオに書かれているデザイナーのコメントを読んでみると・・・。

「ここには第11機甲騎兵連隊の本物の任務が描かれている。これはNATOにとって大変ハードなシナリオだ。私はバランス調整を試みたが、NATOにとって開戦初日がいかにハードであるかを否定することはできない」

よし、決めた。このシナリオにトライしてみよう。これでダメなら・・・、このゲームは一旦封印しよう。

なお、今回はハウスルールの類は一切利用していない。全て(私が理解している範囲での)デザイナー公認ルールでプレイした。

1985年8月1日

開戦前移動

ゲーム開始前にNATO軍の事前移動がある。ダイスで移動回数を決定する方法と中間値を用いる方法の2種類があるが、今回は中間値を使用した。ランダム性を避けるのが目的である。事前移動後における11Cavの展開状況が下図である。これで一応WP軍が突破できない形に布陣しているはず。

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Sov_68GMRR_HQ最初にソ連軍第68機械化歩兵連隊(68GMRR)のチット(「68GMRR」)を引いた。ソ連軍にとっては期待通りの展開である。進撃を開始した68GMRRに対して丘の上に布陣していた11CavのM1エイブラムスが距離6Hex(3000m)の遠距離射撃を実施。早くも偵察中隊が直撃を受けて撃破されてしまう。それでも68GMRRは11cavに接敵し、その射撃範囲を封じた。CSSシリーズ共通ルールとして敵に隣接されたユニットは、射撃範囲が隣接ヘクス限定となってしまうのだ。

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US_11_3_M続いて「NATO直接命令」。M109自走砲3ユニットが猛烈な間接射撃を開始。ソ連軍の進撃路を阻む。そして接敵してきた敵に対してM1エイブラムスが直接射撃を浴びせる。BMP1 2ユニットが戦車砲の直撃を受けて四散した。早くもソ連軍の損害は3ユニットに達する。前途多難なソ連軍である。

さらに「11Cav」チットが続く。砲撃はなおも激しさを増し、68GMRR前面には激しい弾幕射撃が浴びせかけられる。高地に布陣するM1エイブラムスも猛烈な射撃を継続し、さらにBMP1 1ユニットを撃破、歩兵戦闘車とT80戦車各1ユニットを潰走させた。

Sov_MiG21次に引いたのは「航空任務」。WP側のMiG-21が制空任務で登場する。MATO側の戦闘機が登場しなかったため、制空値がWP側に1有利になる。さらにWP側の攻撃ヘリが出撃する。NATOの防空網を掻い潜って飛来したMil-24 Hindが戦場に到着。米自走砲部隊に対してスパイラルミサイルによる攻撃を実施した。攻撃に気づいた自走砲はスモークディスチャージャーで煙幕を展開して危うく難を躱したが、煙幕弾を撃ち尽くした。やばいぞ。

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次は「無作為イベント」。WP軍の弾薬不足。進撃を開始していきなり弾薬不足とは一体・・・。これが共産主義の非効率性というやつか。

Sov_68G_Eng次に「風」が吹いて弾幕が吹き払われた。そこでNATO側は2DPを消費して「11Cav」の割り込みを実施した。またもや激しい砲撃が浴びせかけられ、ソ連軍が動けなくなる。さらにとうとう山火事も発生した。そしてソ連軍にとって貴重極まりない工兵部隊がM1エイブラムスの直接射撃によって撃破されたのも痛かった。

次は「ソ連直接命令」。しかしソ連側の部隊は砲撃によって拘束されているため大きく動けない。68GMRRの砲兵部隊が反撃の砲火を浴びせるのが精いっぱいであった。

最後に引いたのが「電子戦」。どちらも電子戦での優位を獲得できなかった。

ここで最初のTurn終了である。現時点では叩かれっ放しのソ連軍。未だに光明は見えない。そして

「ブラックホース達は未だに本当の地獄を知らない」


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つづく