berlin_v2_box_cover-1200px


The Enemy is at the Gates はCSSシリーズの新作(2020年10月現在、まだ出版されていませんが)で、テーマは1985年東西両陣営によるベルリン攻防戦です。実際には起こっていない戦いを描いたシリーズで、先日発売された Fulda Gap の続編ともいうべき作品です。

さて、そのFulda Gap。テーマはすごい魅力的なのですが、個々のルールを見ると物理的に何だか変。またゲームとしてみた全体像についても、ややバランスに欠けている感があります。そのあたり、次回作である The Enemy is at the Gates には期待が大なのですが、前作の印象があまりに良くなかっただけに・・・。

取り合えずFulda Gapで「変」だと思った点を列挙してみました。ちなみに以下の(1)~(4)については、Fulda Gapだけではなく、CSSシリーズ全てについて言えることです。

 (1) 小河川の効果が大き過ぎる。幅1メートルにも満たない水たまりに近いような小河川であっても、戦車の移動を完全に阻止してしまう。また移動だけではなく、対戦車ミサイルもこの「水たまり」を飛び越えられない。

 (2) 間接射撃の阻止効果が大き過ぎる。105mmクラスの対応で間接射撃を行うと、500m四方のヘクスが完全な通行不能地形になってしまう。だから砲兵1個中隊があれば、特定方向からの敵の進撃を完全に阻止できてしまいます。

 (3) 直接射撃の阻止効果が乏しい。本来現代戦なら砲兵等の間接射撃よりも戦車砲などの直接射撃の方が効果が大きいように思えるのですが、本作では完全に逆転しています。戦車の臨機射撃は1回きりなので、囮を使って敵に1発撃たせれば、もうあとは敵を無力化できます。例えば「装甲擲弾兵」や「オペドン」のように「対戦車戦は回数無制限で臨機射撃できる」とか、そこまで行かなくても「Old School Tactical」のように射撃は1Turnに2回まで実施できるとすれば、もう少し直接射撃が有効になると思えるのですが・・・。

 (4) 火災の効果が大き過ぎる。簡単に火がついてしまう上、一度火が付けばそのヘクス全体が通行不能地形になってしまう。防御側にしてみれば、いわゆる「火計」によって敵の進撃をストップできてしまいます。

 (5) 対戦車ミサイルが使えない。ATGMに最小射程距離ルールがあって、隣接ヘクスの敵を撃てません。しかし隣接ヘクスといっても距離500メートルは離れているのだから。ATGMで射撃するのに不都合はないと思いますが・・・。

 (6) これはあくまでも私の感想なのですが、「チョバム装甲を摩耗する」ルールが変に感じます。Fulda Gapでは、チョバム装甲を持つ戦車(米国製のエイブラムス)は、1発でも被弾すると「チョバム装甲を摩耗」して以後防御力が低下します。確かにWikipedia等では、チョバム装甲は複数被弾に弱い、ような記述がみられますが、たった1発の被弾で「剥離」するほどのものかなぁ・・・?。それとも近年何か新説が発表されたのかしらん・・・。

 (7) 電子戦の効果が過激すぎてゲームとしての興を殺いでいる。これはシミュレーション云々ではなく、ゲームとしての処理の問題です。


とまあ、色々書きました。
最後の(6)(7)はとにかく、それ以外の問題はかなり重大な問題と考えます。新作The Enemy is at the Gatesでそのあたりの問題が解消していれば「買い」なのですが、そうでなければ見送った方が良いかもしれません。

写真1<