高天神城は、武田家と徳川家が激戦を交えた遠江の要域である。正直な所、この城を訪ねるまでは、

「なんでこんな所が戦略上の要域なのか?」

と思ってしまった。また城の地形も確かに小高い丘になっているが、先日見た 小牧山城 のように「平地の真ん中にある小高い丘」ではなく、周囲にはいくつも小高い丘がある。わざわざ高天神に布陣しなくても、他に良い場所が沢山ありそうではないか・・・。

しかしそのような疑問は実際に山に登ってみると氷解した。外から見るとわからないが、この高天神城は極めて急峻で攻め難い造りになっているのだ。細い稜線は切り立った尾根の上にあり、斜面が急なために侵攻する側は限定された方向からしか攻められない。逆に守る側は敵の侵攻する限られたルート上に強力な陣地を築けば良い訳で、守りやすくなる。

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10月半ばのとある週末。高天神城北側の駐車場に愛車を停めて、歩き始めたのが午前9時過ぎ。鳥居を抜けると山頂に向かう石段が姿を現す。

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石段を登り切った所が高天神城の中枢部で、左右に山道が伸びている。左が本丸、右が西の丸や高天神社へ向かう道になる。

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まず左の本丸に向かう。城の北側に位置する本丸は高天神城の中枢部で、標高的にも一番高い所になるという 。本丸といっても天守閣のようなものが残っているはずもなく、本丸趾という標柱が立っているだけだ。

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次に反対側に向かう。一旦鞍部に降りて、再び石段を上がっていく。登った先は神社になっている。さらにその向こうに馬場平という少し広い場所があり、周囲を見渡すことができる。ここに立つと確かに高天神城から遠州一帯が見渡すことができ、同地が戦略上の重要拠点であったことが理解できる。

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西の丸は高天神社の右の裾野にあり、高天神城の攻防戦で最も激しい戦いが行われた所。先に高天神城は急峻な山城と書いたが、この西正面だけが比較的緩やかな斜面になっており、そのために寄せ手が最初に攻めてくるのがこの西斜面であった。そのため西斜面には重要拠点である西の丸があり、それを守るために土塁や空堀がいくつも築かれていたという。

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約1時間ほどの散策であった。城の標高は132m、比高は100m程だという。ちょっとした山登りだが、参道が整備されて歩きやすい。また外観からはなかなか伺い知れない(特に木々が生い茂っているから猶更)城の堅固さを実見できたのは収穫であった。こういった山城探索は楽しい。