200925_疫病2020

疫病2020

門田隆将 産経新聞出版

本書は2020年前半におけるコロナ禍とそれに対する各国の対応を追ったノンフィクションである。本書は、コロナ禍真っただ中の2020年6月の段階で初版が出版されているので、コロナ禍をほぼリアルタイムで描写している点が特徴である。これは非常に重要な点で、事態が明らかになってから批判するのとは全く意味が違う。

本書はまず1~2月における日本政府のコロナ対策を強烈に非難している。武漢が都市封鎖される中、世界各国が中国や武漢からの人の流れを遮断する中、日本政府は相変わらず中国に対して門戸を開き続けた。筆者は1月の段階で既にTwiiterでコロナ対策の重要性を唱え続けていたが、その声が官邸に届くことはなかった。筆者の言葉を借りれば、安倍政権はコロナ対策の初動で失敗したことになる。

その後「ダイヤモンド・プリンセス」号事件があり、先に述べた小中学校の一斉休校、緊急事態宣言、自粛期間、そしてコロナの一時的な鎮静化、緊急事態宣言の解除という一連の流れについては今更述べることではない。筆者は一連の流れの中で、政府の対応は後手であったと強い口調で非難している(それもリアルタイムで、決して後知恵ではない)。にも拘らず日本は世界的にみればコロナ対策に「比較的成功した側」の国である。それはコロナによる死者数が欧米諸国に比べて圧倒的に少ないことからもわかる。筆者はその原因を医療現場の現場力と国民の衛生観念、そして他人を思いやる気持ちが強い文化にあるとする。筆者の言葉を借りれば、勝利したのは「政府」ではなく、「国民」だったのだ、と。

さらに筆者はコロナ対策に最も成功したといわれる台湾に着目し、台湾でのコロナ対策と、その成功要因について触れている。その最大の要因は、危機意識の高さとリーダーの対応の早さ、そして危機管理に対応可能な法制度であろう。その点日本との違いは明白で、危機意識については上記に述べた通り。リーダーについても残念ながら安倍首相の対応は台湾蔡英文総統のスピード感に比べると「牛歩」の感があった。危機管理体制については言わずもがなだろう。100年近くも前に制定された憲法改正について「議論」すらできないとは「平和ボケ」以外の何物でもない。

さらに筆者はコロナが最初に拡散した中国の実情に触れ、中国共産党が今回のコロナ被害を如何にして隠蔽したのか、またそのことによって世界がどのような災厄を被ったかについて厳しく批判している。筆者の言葉が中国共産党を動かすことは期待できないが、我々は共産中国の危険性や害悪についてもっと注意する必要があるだろう。さらに恐ろしいのは、共産中国がコロナをその全体主義的な対応で極めて効果的に乗り切った(欧米諸国がコロナ対応に失敗して甚大な被害を被ったのに対して対照的と言える)こと。さらにコロナ対策を通じて共産党による国民監視がより徹底したレベルになったことである。コロナ対策で自信を深めた習近平体制は、自由主義世界に対してより挑発的な態度を強める可能性は高い。

コロナは現在進行形で続く厄災である。現時点で「総括」や「結論」を出す段階ではない。そういった意味で本書は中間報告として読むべき著作である。そんな中、コロナ禍は日本の危機管理体制の甘さは白日の下にさらした。我々は今後日本が生き残るために何をすべきか、真剣に考える時を迎えた。これほどの国難でも未だ明後日の方向を向いている政治家やマスコミもいる。真に国民の命を守ろうとしない人たちは日本に必要はない。

お奨め度★★★★