201018_パンデミック

緊急提言パンデミック

ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之訳 河出書房

「サピエンス全史」「ホモ・デウス」で人類史を論じた筆者が、コロナ禍について論じた著作である。2020年春に緊急出版された著作なので、そのボリュームはあまり多くはない。
筆者の主張はいくつかあるが、その一つは協調の重要性である。筆者によればウィルスと人類との闘争の中で人類の最も強みは「情報」にあるという。だから我々は孤立すべきではなく協調すべきと筆者は説く。一時的なロックダウンは仕方がないとしても、ウィルスによってそれぞれの国家が孤立化してはならない。筆者によれば。グローバル化こそがウィルスに対する人類の最も有利な点なのだから。
また筆者はウィルス対策と民主主義とのかかわりについても論じている。ウィルスとの戦いで情報を国家権力が一手に握るのは危険かつ有害だと筆者は説く。筆者によれば、ウィルス対策のためには情報が必要であるが、その情報は国家権力が強制的に収集すべきものではなく、一般国民が自主的に提供するものでなければならない。そのために情報は国家権力ではない中立の機関が収集・管理すべきと筆者は説く。
上記以外にもナショナリズムとグローバリズムとの関係、現在の世界情勢に対する筆者の見解なども窺い知ることができる内容になっている。

お奨め度★★★