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SCS(Standard Combat Series)とは、主にWW2以降の地上戦闘をテーマとした作戦級ゲームのシリーズで、一般的な陸上作戦級ゲームのルールで構成されている。シークエンスは、移動、戦闘、二次移動でプレイヤーTurnを構成し、移動中に一度だけオーバーランを実施できる(オーバーラン終了地点で強制停止)。ZOCは比較的弱く、ZOC進入に追加2MP消費のみ。ZOC to ZOCの移動も可能である。
戦闘は一般的な戦闘比とコラムシフトの組み合わせ。戦闘比の計算がいわゆる「防御側有利な切捨て」ではなく「四捨五入」になっている点が特徴的か。あと「戦場の霧」ルールでスタックは一番上しか見れない。そのためにスタックの順番にも規定がある。ちなみに基本ルールだけなら英文7ページと量的には少なめである。

Iron Curtain(以下、本作)は、SCSシリーズの1作で、西ドイツ周辺で起こり得た東西両陣営の直接対決を作戦レベルで再現した作品である。本作の特徴は、年代別にシナリオが複数用意されている事で、1945年、1962年、1975年、1983年、1989年の各シナリオの中から、好みの時代を選択してプレイできるようになっている。

今回、本作をプレイすることになり、1962年シナリオ(東側から侵攻)をプレイしてみることにした。1962年といえば例のキューバ危機が発生した年であり、米ソが核戦争に最も近づいた時期でもあった。私はNATO側を担当する。

前回までの展開は --> こちら

感想

時間の関係上ここでお開きとした。今回は2日間のプレイでプレイ時間は15時間程度であった。消化したTurn数で割ると1Turn平均は2時間強となる。ただセットアップやRun Upで結構時間がかかったので、その分を差し引くと1Turnの平均時間は1~2時間程度となるだろう。無論、長考派のプレイヤーがいた場合は、その2倍程度を覚悟する必要があるかもしれない。

この後の展開だが、WTO軍が力押しをすれば、ライン川の渡河は可能だろう。ただし西ベルリンが未だ陥落していないので、WTO軍にとってゲーム上の勝利は厳しい。またNATOには切り札の核弾頭があり、それを西ベルリン周辺のWTO軍に投入すれば、事実上西ベルリンは難攻不落となる可能性がある。無論、そうはならずWTO軍はライン川を渡河し、NATO軍の核使用と相まって勝利条件レベルが上がったことで、WTO軍がゲーム上勝利する可能性も否定できない。

核兵器の話が出たので序だが、今回両陣営とも核及び化学兵器は用いなかった。WTO軍としてはライン川渡河作戦やルール工業地帯占領のための切り札として化学兵器を投入する選択肢はある。ただしWTO軍の化学兵器投入は、NATOによる核報復を招く恐れは多分にあるのだが・・・。
そのNATOの核兵器だが、この1962年シナリオでは、どこかのタイミングでNATOは核を使用することになるだろう。というのも、このシナリオではNATOの核戦力がWTOを圧倒しており、さらにWTO軍の強力な機甲集団を撃破するためには核兵器に頼らざるを得ないからだ。実際、この時期のNATOの戦略は、数的に優越している戦術核弾頭の威力でWTO軍の戦車集団を撃破することになっていたので、核兵器の使用は歴史的に見ても正しい。ただ、早い段階で核兵器を使用すると、勝利条件判定が前倒しになってWTO軍が早期に勝利してしまう可能性が高まる。従ってNATOとしてはギリギリのタイミングまで見極めて、どうしようもない場合のみ核兵器を使用すべきであろう。

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ゲームに対する苦言を少し述べさせて頂く。
兎に角セットアップが面倒である。シナリオ毎にセットアップが記載されているが、それがユニット名と戦力と登場ヘクスが羅列されているだけ。本作はマルチシナリオが売りのゲームなので、該当をするユニットを探すだけでも一苦労である。一応ユニットは年代別に分類されているのだが、中には複数の年代で共通のユニットを使う場合があり、そのような場合は全ユニットの中から該当するユニットを探さなければならない。せめてセットアップ情報の中に年代専用ユニットか否かだけでも記載してもらえれば、少しはセットアップが楽になるのに・・・。
ようやくユニットを見つけ出しても地図上に配置するのにまた一苦労。Gamers系の作品共通のヘクスナンバリングシステム(5の倍数ヘクスだけヘクスナンバーを記入する方法)なので、慣れないと正確な座標がわかりにくい。筆者も一度セットアップした後、再確認すると数か所でセットアップミスが見つかった。
20世紀のSPIゲームじゃあるまいし、今ならカラーのセットアップシートを用意し、とマップ全ヘクスにヘクスナンバーを記入するだけでセットアップは数段楽になるのに、何故頑なに旧来のセットアップ方式を踏襲するのか。凡人の私には理解し難い所である。

戦闘システムは意外と雰囲気が出ている。本作では1945年とそれ以降で別の戦闘結果票を用いる。1945年用は一般的な戦闘比方式だが、それ以降は少し違う。戦闘比を使う所は同じだが、戦闘結果票が変わっていて、攻撃側の損耗、防御側の損耗、後退ヘクス数の3項目についてダイスを振ることになる。攻撃側の損耗はスタック単位で判定し、防御側の損耗はユニット単位、後退ヘクス数は防御ヘクス単位で判定する。従って攻撃側は小兵力をバラシて攻撃すると損耗が多くなる仕組み。しかもこの方式だと防御側もダイスを振ることができるので、一方的にやられている感じが少ない。このCRTは優れたアイデアだと思う。

ゲーム展開についていえば、筆者のプレイでいくつか失敗があったことは否めない。まず序盤。戦況を見て東ドイツに攻め込んだ。それはそれで良かったのだが、適当な所で切り上げて後方に下がるべきであった。兵力に余裕を持った状態でライン川まで下がれば、仮にWTO側が化学兵器を使ってきてもある程度余裕を以て守れた筈である。また後退の際に漫然と下がったのも宜しくなかった。二次移動可能な部隊を使って積極的な反撃を仕掛けておくべきであった。敵ユニットの戦力が読めないのが辛い所だが(お陰で手痛い失敗をした)、ある程度失敗経験をしておけば、反撃のコツが掴めていただろう。そういった意味でやや退嬰的なプレイだった点は反省しなければならない。

まとめに入る。本作は比較的シンプルなシステムで冷戦期の仮想戦を再現した佳作と言える。気になる点と言えば、ユニットの移動力が比較的大きく、またZOCの拘束が弱いために移動の自由度が大きいこと。またユニット数も多いので1Turnの所要時間が多いことである。今回丸々2日間プレイしたが、最終turn(第10Turn)までプレイし終えることはできなかった。1Turnの所要時間は1~2時間であった。

いずれにしてもシンプルなルールでWW3を様々なシチュエーションでプレイできる作品なので、機会があれば別のシナリオもプレイしてみたい。

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