BattleofCapeSpada


スパダ岬沖海戦とは、1940年7月19日にクレタ島北方海域で英伊の巡洋艦同士が戦った水上戦闘である。スバダ岬とは、クレタ島北西部に位置するクレタ島最北部に位置する岬のことである。
この海戦に参加した英海軍の戦力は軽巡1、駆逐艦5。対するイタリア海軍は軽巡2である。兵力的にはほぼ同等か、やや英海軍が有利かと思われる。海戦の結果は、イタリア側が軽巡1隻沈没、1隻小破。英側が軽巡1隻小破。海戦は英海軍の勝利に終わった。
このスバダ岬沖海戦を「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)でシナリオ化してみたい。イタリア海軍が登場するのは初めてである。

戦闘序列

HMAS_Sydney


両軍とも史実通りで、英海軍が軽巡「シドニー」と駆逐艦が5隻。イタリア海軍が軽巡2隻である。
「シドニー」はリアンダー級の1艦で、主砲は15cm砲8門。スマートな中型戦闘艦だが、砲力はやや少なめといえる。また随伴駆逐艦はいずれもH級の駆逐艦で、主砲4門、魚雷発射管8門を持つ標準的な駆逐艦だ。
対するイタリア海軍は軽巡「バルトロメオ・コレオーニ」と「ジョバンニ・デレ・バンデ・ネレ」。アルベルト・ディ・ジュッサーノ級の軽巡で、主兵装は15cm砲8門。砲力では「シドニー」に拮抗しているが、船体はやや小さく、また装甲が薄い。その代わり、速度では「シドニー」を上回っている。ある意味「イタリア海軍らしい」戦闘艦と言える。

状況及び特別ルール

CW_CL40aこの種の遭遇戦は勝利条件の設定が難しい。単に「敵を全滅させれば勝利」としても良いが、そもそもどちらかが全滅するまで戦い続けることは、史実でもゲーム上でも稀である。従って「敵を全滅させれば勝利」という勝利条件は、事実上意味がない。
今回は史実における両軍の戦い方に着目した。イタリア側は交戦を避けて撤退を図り、英側は例によって積極的に交戦を仕掛けた。これを勝利条件に反映したい。
そこで今回、以下のような勝利条件を考えた。
 ・イタリア海軍は自軍の損害を出さないようにしながら盤外へ逃げる。
 ・英海軍は敵に損害を強要しつつも、自軍の損害が戦果に釣り合わないほど大きなものであってはいけない。

また特別ルールであるが、まずイタリア側の消極的な姿勢を反映するため、主導権は常に英側にあるものとした。また砲火力的にはイタリア側が有利なので、その優位性を弱めるためにイタリア側に不利な命中修正を適用した。史実で「シドニー」は1対2の不利な条件下で撃ち勝っているので、それを再現する意味もある。

Turn0a


テスト

1Turn

距離18km(12Hex)で両軍が交戦を開始する。双方とも射撃開始。「シドニー」は「バルトロメオ・コレオーニ」を狙い、イタリア軽巡2隻も「シドニー」を狙う。が、外れ。

2Turn

イタリア艦隊は左120度旋回。英艦隊に対して反航態勢になる。英艦隊をやり過ごして北西方へ退避する構えだ。両者の距離は15km(10Hex)まで近づいた。「シドニー」の放った1発が「バルトロメオ・コレオーニ」に命中したが、不発弾であった。

Turn2a


3Turn

IT_CL3英艦隊も右へ180度回頭を行い、イタリア艦隊の右後方に位置する。両者の距離は12km(8Hex)まで縮まった。
「シドニー」が放った15cm砲弾2発が立て続けに「バルトロメオ・コレオーニ」に命中。「コレオーニ」は衝撃によって一時的に戦闘能力を失う。
イタリア側もようやく命中弾を得た。「ジョバンニ・デレ・バンデ・ネレ」の主砲弾1発が「シドニー」に命中したのだ。「シドニー」の損害は軽微で、戦闘行動に支障なしである。


Turn3a


4Turn

イタリア艦隊は英艦隊からの砲撃を避けるため左へ変針。煙幕展開しつつS字運動を行う。英艦隊とイタリア艦隊の距離は15km(10Hex)まで開いた。「シドニー」は煙幕越えで「コレオーニ」を狙うが、照準が定まらずに外れとなる。

Turn4a


5Turn

「シドニー」の主砲弾が再び「コレオーニ」を捉えた。2発が命中。そのうちの1発が「コレオーニ」の魚雷発射管に命中。魚雷を使用不能とした。
またイタリア艦隊の左舷側からは英第3駆逐隊が急速に近づいて来た。距離9km(6Hex)から英駆逐艦4隻が「ジョバンニ・デレ・バンデ・ネレ」に集中砲火を浴びせる。が、しかし命中弾は僅かに1発。しかも不発弾。「バンデ・ネレ」は無傷のままであった。

6Turn

イタリア艦隊が左へS字運動を実施。左から近づく英第3駆逐隊との距離を詰める。両者の距離は6km(4Hex)にまで迫った。英駆逐隊としては魚雷を撃ちたい所だが、頭を押さえられる形になっているため、魚雷攻撃を実施し辛い。「バンデ・ネレ」の主砲弾1発が英駆逐艦「アイレクス」に命中。同艦に軽微な損害を与える。

7Turn

「シドニー」が距離を詰めて「コレオーニ」を砲撃し、2発の命中弾を得た。しかしいずれも急所を外れており、「コレオーニ」の損害は軽微であった。
イタリア艦隊の反撃。距離が近いため、イタリア側の砲撃もようやく命中率が上がってくる。英駆逐艦「ハイペリオン」には「コレオーニ」の主砲弾2発が命中。同じく駆逐艦「アイレクス」には「バンデ・ネレ」には1発が命中。両艦とも速度が20ktに低下する。

Turn7a


8Turn

イタリア艦隊は左へ60度回頭。英第3駆逐隊との距離を詰めようとする。イタリア艦隊を後方から追う形になった「シドニー」は、艦首の主砲4門で「コレオーニ」を射撃。1発の6インチ砲弾が命中した。「コレオーニ」の命中弾はここまで計6発。そろそろヤバくなってきたか、「コレオーニ」。
もう1隻の軽巡「ジョバンニ・デレ・バンデ・ネレ」にも英駆逐艦の主砲弾が命中。軽微な損傷を被った。
英駆逐艦に魚雷発射のチャンスが訪れた。2隻の駆逐艦は計16本の魚雷を発射する。目標は右舷4.5kmの位置にいるイタリア軽巡2隻だ。

Turn8a


9Turn

英駆逐艦「ヒーロー」の放った魚雷1本が「バルトロメオ・コレオーニ」に命中した。魚雷の威力はすさまじく、「コレオーニ」は真っ二つに折れて轟沈した。これで一気に形勢が逆転。一気に不利になるイタリア軍であった。

Turn9a

感想

この時点で結果が見えたので終了とした。イタリア軍の損害は、軽巡1隻沈没、1隻小破。英海軍の損害は駆逐艦2隻中破、軽巡1隻損害軽微である。勝利条件的には英海軍の勝利だ。イタリア側の敗因は英駆逐艦の魚雷攻撃を軽視したこと。英駆逐艦を砲撃で無力化してから接近すべきであったが、後方から迫ってくる「シドニー」の圧力に負けて転針したのが失敗であった。

シナリオの出来具合だが、悪くないと思う。イタリア軍を適度に弱体化したのは正解であった。これで「シドニー」の脅威が大きくなり、隻数比で優位に立つイタリア軍が劣勢な筈の「シドニー」に追い回されることになる。また英艦隊が二手に分かれているので、イタリア艦隊は両側から挟まれる形になり、イタリア側も単純に逃げ回る訳にはいかない。そこで虚々実々の駆け引きがあるので面白い形になりそうだ。

という訳でこのシナリオは完成とする。次はどのシナリオにしようか・・・。

RMS_BartolomeoColleoni