201219_リベラルという名の病

「リベラル」という名の病

岩田温 彩図社

最近「岩田温チャンネル」というネット番組を時々見ている。岩田温氏が政治、外交、マスコミに関する話題を取り上げて独自の視点で論じるものだが、これが実に面白い。氏の豊富な知識に裏付けられた政治・外交分析もさることながら、その語り口が実に軽妙なのである。もし未見の方がいれば、是非一見することをお奨めする。
さて本題だが、本書はいわゆる「リベラル」と呼ばれる人々を批判する著作である。しかし誤解しないで頂きたいのだが、筆者はリベラルな考え方を否定しているものではない(第6章にそのことが端的に語られている)。そうではなく、日本における「リベラル」と呼ばれるマスコミや知識人を批判しているのだ。
本書によればこれらの人々は「リベラル」とは名ばかりで、実際は「リベラル」ではなく「反知性主義」というべきものである。それが端的に表れているのが憲法問題。所謂「リベラル」な人々は憲法第9条を金科玉条の如く守ろうとするが、その憲法の条文自体が、自衛隊の存在や現実の国際情勢を前にして有名無実化しているのは周知の事実だ。「リベラル」な人達は「だから自衛隊を廃止して非武装中立を目指す」と言いたいのだろうが、そのような主張が大多数の国民が支持するものでないことは現在の政治情勢を見れば明白である。また「リベラル」な人たちは、民主的な手段によって選ばれた日本の総理大臣をファシスト、全体主義者等と口汚く非難するが、リベラリズムとは本来相容れない筈の共産主義や共産主義社会の実現を目指す日本共産党に対してはなぜか極めて寛容である。
筆者は日本における所謂「リベラル」な人たちを真の意味でリベラリストではないとしている。私も全く同感である。彼らの多くはリベラリストではなく、悪質な扇動家か、あるいは単なる愚か者か、いずれかだろう。もちろん、真の意味でのリベラリストも数多くいるだろう。リベラリズムやリベラリストの定義については本書に委ねるが、筆者の唱えるリベラリズムの定義については、私自身多くの点で合意できる。また全体主義や共産主義を嫌悪するという意味でも私は筆者と思いは同じである。
最後に一点気になった点。本書では「リベラル」な人たちの一例として池上彰氏を挙げている。私自身も池上氏の番組を時々見るが、極端に偏向した政治姿勢だとは思えなかった。無論、本書の主張にも一理あり、池上氏が果たして「中立を装った扇動家」なのか、そうではないのか。少し注目してみたい。

お奨め度★★★★