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Atlantic Chase(以下、本作)は、GMT社が2021年に発売を開始した最新の海戦ゲームである。1ユニットは軽巡以上の艦船1隻(駆逐艦、輸送船は戦隊単位)、ヘクスマップにはヨーロッパ近海の大西洋、北海で、北東端はムルマンスク、南東端はジブラルタル、マップの外には北米と中南米、アフリカ大陸がつながっている。1Hexの大きさは凡そ100海里ぐらいか。

本作はかなり特殊なシステムを採用している。従ってそのシステムを言葉で説明するのは相当困難である。ただし1度プレイしてみると、それぞれのルールの意味がすんなりと理解できるようになる。 本作のシステムで核となるのは、Trajectory(航跡)とStation(展開)である。麾下の水上艦をいくつかのTF(Task Force)に編成して行動させるという点では、本作も他の海戦ゲームと大きく変わる所はない。ただし本作ではTFを表現する方法が特徴的なのだ。それがTrajectoryとStationだ。
(下図はLiving Rule p5より抜粋)

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TFはそれぞれ固有のTrajectoryとStationを持っているが、マップ上に置かれるのはTrajectoryかStationかいずれか一方だけとなる。Trajectoryは細長い木の棒で、Stationは円柱型である。Stationは特定の海域に留まっているTFを現し、移動しない(できない)。TFを移動させる場合には、複数のTrajectoryをマップ上で「繋いで」いく。いわばTFの列があたかも艦隊の航跡を現すようになる。TFは航跡上のどこかに存在している、ということになる。
このTrajectoryを配置するという行為においては、最大15個までのTrajectoryを接続できる。例えばスカパフローからキールまでが3ヘクスしかないので、15個のTrajectoryを使うとマップをほぼ横断することも可能である。このTrajectoryを自由に配置できるというのがまず本作の特徴である(ただし1本の線で繋がっていなければならない)。

ゲームの核となるシステムはアクションである。先に書いた「Trajectoryを配置する」というのも一種のアクションだが、それ以外に索敵、交戦、航空攻撃、ステルス兵器(潜水艦と機雷)による攻撃等が加わる。アクションを実行するためには主導権が必要であり、主導権を保持する限り何度でもアクションを繰り返し実行できる。もちろん一定条件で主導権の交代があり、それによって両方の陣営がアクションを実行できる。本作に所謂"Turn"の概念はないが、この主導権交代が一種の"Turn"のように機能する(主導権交代時期に天候判定も行われる)。

例を説明しよう。ニューヨークから英本土に向かう輸送船団を、ブレストを出撃した独巡洋戦艦が攻撃する場面を想定する。まずニューヨークから英本土までは輸送船団のTrajectoryが既に配置されているものとする。これは輸送船団がTrajectoryの"どこか"に存在することを意味する。 主導権を得た独軍プレイヤーは、ブレストにいるTFのStationをTrajectoryに変換し、ブレストからTrajectoryを伸ばして、船団のTrajectoryと交差させる。Trajectoryを伸ばす行為は自由で、主導権交代のトリガーにはならない。
続いて独軍プレイヤーは、"Naval Search"を選択し、英輸送船団を捜索する。これに成功すると輸送船団のTrajectoryが減少する(いくつになるかは索敵の結果次第)。索敵の効果が高いとTrajectoryが消し去れてStationになる。TrajectoryがStationに変化して時点で、その輸送船団は「そこにいた」ことなる。続いて独軍プレイヤーは"Naval Engagement"を宣言し、輸送船団に対する襲撃を実行する。 こう書くと如何にも簡単に船団攻撃ができそうに思えるが、実は索敵や交戦を実施する毎に主導権交代判定が行われ、主導権が英側に移る可能性がある。一旦英側に移ると、再び英側は輸送船団のTrajectoryを伸ばすことになるので、元も黙阿弥である。

こうして捜索、攻撃、そしてそれに対する回避等を繰り返して、両軍とも自身の目的へ向けて邁進することになる。
(下図はLiving Rule p5より抜粋)

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今回、本作のシナリオをいくつかプレイしてみたので、その結果を簡単に報告したい。ただし以下のプレイはかなり重大なルールミスがあったということをお断りしておく。

OP1.Homecoming:August 1939

WW2開戦前夜の1939年8月。ニューヨークから本土へ向かう高速客船「ブレーメン」。その目的はドイツ本国への帰還であった。一方、それを英本国艦隊。果たして「ブレーメン」は英海軍の追跡を逃れて無事ドイツ本国へたどり着けるか。

という設定でのシナリオである。このシナリオは登場ユニット数が少なく、入門用のものである。私はドイツ軍を担当したが、ノルウェー西方海域で英巡洋艦に捕捉されてしまい、任務は失敗に終わった。

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OP2.First Test:November 1939

南アメリカ近海で通商破壊戦を実施中の装甲艦「グラーフ・シュペー」が本国へ向かっている。それを援護し、さらに新たな封鎖作戦を試みるため、新鋭巡洋戦艦「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」からなる艦隊が北海へ向けて出撃していった。英本国艦隊の注意を引き付けて、その間に「グラーフ・シュペー」を無事本国へ帰還させるのが目的であった。

このシナリオは英軍を担当した。ドイツ軍の戦力は上記の通りだが、英仏軍(まだフランス海軍が健在!!)は、フォーブス提督麾下の戦艦「ネルソン」「ロドネー」を主力とする機動部隊。「ウォースパイト」「レパルス」、空母「フューリアス」を含む機動部隊。そしてフランスの戦艦「ダンケルク」と軽巡2隻からなる北大西洋艦隊が主力である(他に哨戒用巡洋艦数隻)。ちなみにフランスの「ダンケルク」は本作ではすごぶる評価が高く、砲撃力はドイツの「ビスマルク」と同等、速度はそれよりも速いので、ある意味「欧州最強の戦艦」である(ホンマかいな・・・??)。

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この戦いでは空母「フューリアス」とフランス艦隊が大活躍。「フューリアス」偵察機が本国へ向かう「グラーフ・シュペー」をフランス西岸沖で発見。それを「ダンケルク」以下のフランス艦隊が追撃し、砲力の優位を生かして「シュペー」を半身不随にした後、最後は「フューリアス」の艦載機がトドメを刺した。

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続いてGIUKギャップを突破してきた「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」を「フューリアス」の艦載機がアイスランド南方海上で捕捉した。ただちにフォーブス提督麾下の戦艦「ネルソン」「ロドネー」が現場へ駆けつける。「ネルソン」「ロドネー」は主砲火力の優越を生かして「シャルンホルスト」を撃沈し、「グナイゼナウ」を撃破(こちらは「ネルソン」中破)。最後は例によって「フューリアス」の艦載機がトドメを刺した。

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OP3.Norway April-May 1940

所謂ノルウェー侵攻作戦を扱ったシナリオである。独軍を担当した。詳しくは覚えていないが、確か英軍の戦艦「ロドネー」を撃沈し、こちらは「シャルンホルスト」が中破。ノルウェー侵攻自体にも成功したので、ドイツ軍の勝利に終わった。

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つづく