AtlanticChase


Atlantic Chase(以下、本作)は、GMT社が2021年に発売を開始した最新の海戦ゲームである。1ユニットは軽巡以上の艦船1隻(駆逐艦、輸送船は戦隊単位)、ヘクスマップにはヨーロッパ近海の大西洋、北海で、北東端はムルマンスク、南東端はジブラルタル、マップの外には北米と中南米、アフリカ大陸がつながっている。1Hexの大きさは凡そ100海里ぐらいか。

今回、本作のシナリオをいくつかプレイしてみたので、その結果を簡単に報告したい。ただし以下のプレイはかなり重大なルールミスがあったということをお断りしておく。

前回までの記録は --> こちら

OP4.Berlin:January-March 1941

巡洋戦艦「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」による通商破壊戦を扱ったシナリオである。ドイツ本国から出撃した2隻の巡洋戦艦は大西洋で通商破壊戦を実施した後、フランス西部のブレスト港に入港した。その後、ブレストを基地として大西洋に睨みを効かせることになる。

ドイツ軍を担当した私は、まずブレストに初期配置されている重巡「ヒッパー」で船団襲撃を試みるが、なんと船団護衛に戦艦「ラミリーズ」がついていたので、船団1隻を撃沈するのが精一杯。逆に「ラミリーズ」の主砲射撃を受けて中破してしまい、這う這うの体で逃げるのが精一杯であった。
一方本国にいる巡洋戦艦2隻。史実ではGIUKギャップを突破したが、距離的に遠いGIUKギャップは突破と判断(これは後に述べるルールミスも絡んでいる)。所謂チャンネルダッシュでブレストを目指す。すったもんだの末、巡洋戦艦2隻はブレスト入港に成功。さらに迎撃のために北上してきた英軍H部隊をルフトバッフェが返り討ちにし、空母「アークロイヤル」、巡洋戦艦「レナウン」を撃破した。
しかし最終的には英船団に対する戦果が足らなかったために英軍の勝利に終わった。独軍としては危険を冒してでも巡戦2隻による大西洋突破を図るべきだった。

AtC14


感想

ここまで4本のシナリオを終えて所要時間はセットアップ含めて6~7時間であった。1シナリオあたりの所要時間はセットアップを含めて2時間弱ということになる。この数値から見てもわかる通り、本作は見た目の大袈裟さと比べると、驚くほど簡単にプレイできる。英文計64ページのルールを読み込むのは結構大変だが、ルールブックの半分ぐらいは図表類なので、量的にはそれほど恐れるに足りない。ただしルールの概念が斬新なので、ルールブックを読んだだけでは理解できない部分が多い。私も実際にプレイしてみて初めて概念を理解した所が多々あった。

今回はお互いに初プレイであったたのでいくつかのルールミスがあった。細かい点は省略するが、一番大きなミスはINTELマーカーの配置について。INTELマーカーというのは一種の「移動妨害」マーカーで、Trajectory上に置かれる。これが置かれると色々と面倒なことが起こるのだが、今回はその配置にミスがあった。
ルールによると、INTELマーカーを配置できるのは、「敵港湾」「航空基地」「Task Force Station」「ステルス部隊(潜水艦と機雷)」となっている。我々が勘違いしたのは3番目の「Task Force Station」で、このStationの所を読み飛ばして、Task Forceは全てINTELマーカーの配置対象と勘違いした。そのためTrajectoryが交錯する場所はINTELマーカーがジャンジャン置かれることになってしまい、TFの移動がノロくさい「やや爽快感に欠ける」プレイになってしまった。このルールを正しく適用すれば、何故英海軍がGUIKギャップに巡洋艦による哨戒網を張る必要があるのかも正しく再現できるのだが、その点は少し残念である。いずれにしても正しいルールで再戦してみたい。

AtC15


Atlantic Chaseは、大西洋における通商破壊戦を斬新かつ簡明なルールで再現した佳作である。海戦における情報の不確実性をTrajectoryとStationという斬新な概念で表現した点は高く評価したい。さらに本作は情報の不確実性を扱いながらも、隠匿要素が全くないことにも注意したい。つまりソロプレイが容易にできるということを意味する。無論簡単なルールなので省略された要素も多々ある(例えば「アークロイヤル」と「フューリアス」が両方とも単なる「空母」という評価になっており、両者の差異がない等)。しかし僅か2時間弱で通商破壊戦をキャンペーンレベルで再現できる点は素晴らしい。
今回プレイしたシナリオ以外にも多数のシナリオ(作戦シナリオは計9本)が用意されており、その中には定番とも言うべき「ライン演習」や戦艦「ティルピッツ」による援ソ船団(PQ-12)攻撃。さらにはPQ-17を巡る戦いなどもシナリオ化されている。極端に言えばAHの「ビスマルク」とGMTの「PQ-17」が一つの箱に入っている、というのは大袈裟か。

私自身、機会を見つけて再戦したいと思っている。
HMS Nelson