もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 読書(洋書)

4
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US Navy Ships vs Japanese Attack Aircraft;1941-1942

Mark Stille Osprey

オスプレイの対決シリーズで、太平洋戦争前半期における日本海軍航空隊と米艦隊との対決を描いている。本書では、両者の対決に焦点を当てて、その実情について数値データに基づいて記している。真珠湾攻撃時の急降下爆撃隊は命中率20%以下であったこと。雷撃隊も命中率が50%に届かったことなど、日本人にとって意外なデータも含まれており、数値を見ているだけでも興味深い。(インド洋での「命中率80%以上」というのも結構眉唾です)。
本書では米側の対空装備の進歩についても解説している。米艦艇の装備について必ず取り上げられるのはVT信管とボフォース40mm機関砲だが、それ以外に本書では火器管制装置の重要性についても触れている。開戦当時米海軍が保有していた対空用FCSで最新のものはMk.33であった。しかしすぐに性能が不十分であるとみなされ、5インチ砲用のMk.37と40mm機関砲用のMk.51が開発された。中でもMk.51はシンプルな設計で1人でも操作可能であったが、高い実用性の性能を誇り、近接対空火器の威力発揮に大いに貢献した。実際、VT信管装備後であっても、米海軍の対空火器による撃墜数は。40mmまたじゃ20mm機関砲によるものが圧倒的多数を占めていたという。
例によって我々にとっても分かりやすい英文で書かれており、太平洋戦争における空母戦に興味のある向きには一読をお奨めしたい1作だ。

お奨め度★★★★

US Navy Ships vs Japanese Attack Aircraft: 1941–42 (Duel Book 105) (English Edition)


4

240101_HowCarrierFought

How Carrier Fought

Lars Celander CASEMATE

既に何度か紹介済の書籍 である。今回読んだのは3回目だったが、やはり面白い。
空母戦の戦い方やメカニズムについて解説した著作で、索敵や攻撃はどのように行われるのか。航法や通信システムはどうなっているのか。索敵や戦闘機誘導の実態はどうだったのか。さらには実戦においてこれらのシステムがどのように機能していたかについて、本書では実例を含めて詳しく紹介されている。
英語なので抵抗する向きもあるかもしれないが、英文は平易で読みやすく、しかも日本人とは全く異なった視点で空母戦の実態を紹介してくれる。

「単座戦闘機で索敵なんてできる訳がない」

と思っているそこのアナタ。
是非、本書を読んでみて下さい。

「アナタの常識、変わるかも・・・」

お奨め度★★★★★

How Carriers Fought: Carrier Operations in World War II (English Edition)
How Carriers Fought: Carrier Operations in WWII
Midway Inquest: Why the Japanese Lost the Battle of Midway (Twentieth-Century Battles) (English Edition)

3
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Imperial Japanese Navy Aircraft Carriers 1921-45

Mark Stille Osprey Publishing

例によってオスプレイの1冊である。New Vanguardシリーズの1冊で、旧海軍が整備した25隻の空母について記している。冒頭に日本空母の発展史、航空艤装、兵装、搭載機、レーダー等について一通り説明した後、「鳳翔」から始まる日本空母25隻について、1隻1隻説明している。
オスプレイの1冊なので英語が極めて平易であり、我々にとっても読みやすい。ボリュームについてはやや不満があるが、その分短時間で読破できるのは良い点ともいえる。記載されている内容は我々にとって常識レベルだが、海外の識者が日本空母についてどのような評価を下したのかは興味深い。また日本空母のダメコンや「翔鶴」型空母に対する評価については興味深く読めた。

Amazon.co.jp : Imperial Japanese Navy Aircraft Carriers

お奨め度★★★


3

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Essex Class Aircraft Carriers, 1943-1991

Leo Marriott Pen & Sword Maritime

Images of Warシリーズというミリタリー関係の書籍群の1冊である。タイトル通りエセックス級空母の登場から退役までを写真を中心に解説した著作である。エセックス級空母といえば、我々にとっては太平洋戦争時期での活躍を思い浮かべるが、エセックス級空母の活躍はそれだけに済まない。朝鮮戦争やベトナム戦争での活躍は勿論、宇宙開発への貢献など、米海軍における貢献度は計り知れない。活躍期間の長さや隻数の多さに比例する形で、エセックス級空母は様々なバリエーションがある。一番ベーシックな短船体型と、その後改造型である長船体型があるが、太平洋戦争で日本海軍と戦ったのは殆どが短船体型。長船体型の中で対日戦で活躍したのは「ハンコック」「タイコンデロガ」「ランドルフ」「シャングリラ」ぐらい。
その後の改造型もサイドエレベーターと改造型のカタパルトを装備したSCB-27、アングルド・デッキを装備したSCB-125、さらに強襲揚陸艦に改造されたモデルもある。本書ではこれらの改造型についても写真付きで説明している。
ボリューム的にはそれほどでもないが、その分気楽に読めるので、英語が苦手な私のような人にもお奨めできる著作である。

Essex Class Aircraft Carriers, 1943–1991: Rare Photographs from Naval Archives (Images of War) (English Edition)

お奨め度★★★


4
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South Pacific Air War Vol.2

Michael Claringbould/Peter Ingman Avonmore Books

South Pacific Air Warシリーズの第2弾。1942年3月から4月のポートモレスピーを巡る航空戦を扱っている。この時期の戦いについては、日本側が「台南空の零戦隊が連合軍のキティホーク、ハリケーン、スピットファイアを圧倒」という感じで扱われているが、本書を読むと実際はかなり異なっていることがわかる。
まず連合軍の航空戦力についてだが、この時期ポートモレスピーで防空任務を担っていたのは、オーストラリア空軍第75戦闘機中隊のP-40Eキティホークのみ。スピットファイアはおろか、ハリケーンもいない。また損失比についても、単純に機体の損失数でいえば、キティホークの損失19機に対し、零戦は36機を失っている。無論、空戦による比較だけではないので空対空戦闘のキルレシオではないが、いずれにしても零戦が連合軍機を一方的に圧倒していた訳ではない。
まあオーストラリア第75戦闘機中隊は大損害を被ったので、4月末にポートモレスピーを離れてオーストラリア本土へ引き上げている。日本側はそれを以てポートモレスピー上空の制空権を握ったとし、5月のMO作戦発動につながってくる。しかしオーストラリア空軍に代わって米陸軍のP-39Dエアラコブラの2個飛行隊が進出してきたので、日本軍の勝利は幻に終わった。その後、米陸軍P-39と台南空零戦隊との激闘、さらに珊瑚海海戦での空母同士の戦いは、続編で語られることになるだろう。
本書は比較的平易な英文で書かれており、しかもイラストが多くて読みやすい。やや値段が高いのが難点だが、今まであまり知られてこなかった南西太平洋方面での連合軍の航空作戦について理解を深めることできるので、興味ある人にはお奨めしたい。

South Pacific Air War: The Struggle for Moresby March-April 1942 (2)

お奨め度★★★★


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