もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 政治外交

3
230121_歴史戦の真実

歴史戦の真実

マイケル・ヨン 育鵬社

慰安婦問題、徴用工問題、旭日旗問題など、韓国による不当な日本たたきが続いている。本書は、元グリーンベレー隊員である筆者が、上記の実情を踏まえて歴史戦の実態やそれに対する日本の取るべき道を記した著作である。本書は、南京大虐殺や慰安婦問題など、中韓が仕掛ける反日キャンペーンを取り上げる。そしてこのような反日キャンペーンが単に日本とこれらの諸国間だけの問題ではなく、全世界を巻き込んだ「歴史戦」であると筆者は説く。そして筆者は、日本に対しても「歴史戦」を戦う必要があり、いつまでも謝り続けてはいけないとしている。
筆者の主張に大いに賛同したい。ただ本書の難点として、日本語としてはややわかりにくい文章であること(筆者がネイティブではないので仕方がない所だが)、またSNSに投稿した文章を再掲載したのでややまとまりがない印象を受けるのが残念な所だ。

P.S. 日本の政治家で「歴史戦」という言葉を使う人物は殆どいない。故安倍晋三元首相は「歴史戦」を取り上げた数少ない政治家の1人だが、そう考えると今更ながら安倍元首相の早すぎる死が惜しまれる。

お奨め度★★★

2
230107_日本人だけが知らない戦争論

日本人だけが知らない戦争論

苫米地英人 フォレスト出版

本書の内容を一言で言えば「陰謀論的世界観」である。筆者曰く
「二度に渡る世界大戦はヨーロッパの大銀行家が金儲けのために起こしたものだ」
「2014年にウクライナで親ロ政権が倒されて西側寄りの政権になったのはヨーロッパの銀行家がロシアを追い詰めるためだ」
「日本と中国との対立を煽り、戦争を起こそうとしているのは米国の金持ち達だ」
ということらしい。
本書は、本来複雑で数多くの人々の考えや行動で動いている国際社会や歴史というものを極めて単純なモデル化し、それに当てはめて説明しようとしている。しかし人間社会はこの筆者の言うように単純なものではないし、戦争が起こる理由もそんなに単純なものではないと私は考える。無論、筆者の言う「金持ち」の意向が働いたこともあるかもしれないが、そのほかの様々な宗教や政治思想等が絡み合って歴史が形作られていることを忘れてはならない。
さらに本書の危険な所は読者に思考停止を強いる点である。例えば中国や北朝鮮の脅威、安全保障に関する議論に対して、この筆者は言う「またお金儲の話ですか」と。筆者がそう思うのは自由だが、そのような単純化した議論を読者に強いるのは、危険な考えだと私は思う。


お奨め度★★

3
221229_ロシアの

ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟

グレンコ・アンドリー 扶桑社


ロシアによるウクライナ侵略は、21世紀の現代にあっても覇権主義的な国家が自らの目的を達成するために軍事力行使を厭わないことを明らかにした。本書は、ウクライナ国籍の筆者が今日のウクライナの事情を踏まえたうえで今後日本が目指すべき安全保障政策について提言したものになっている。
まず筆者はウクライナと日本の類似性について指摘する。筆者曰く、ウクライナは「平和ボケして」「国益を損ねる売国政権を生み出し」「愛国者にファシストのレッテルを貼り」「軍事力の価値を否定し」「弱腰外交を展開した」とする。そして筆者は、これらの多くが現在の日本と類似しており、2014年と2022年にウクライナを襲った悲劇が、決して日本にとって無縁ではないことを指摘する。
その上で筆者は、ウクライナを襲った悲劇に日本が見舞われないためには、核武装を含めた日本の軍事力強化を説き、軍事力強化こそが戦争を回避する手段だとしている。さらに単に軍事力を強化するだけではなく、歴史認識や人口問題などの課題と真摯に向き合い、これらに立ち向かって真に世界のリーダーとなることが日本の進むべき道だとしている。
評者である私自身は、筆者の主張を全面的に首肯するものではないが、日本と近隣諸国との関係を見るにつけ、「ウクライナ問題は決して他人事ではない」という部分については同意せざるを得ないと考える。そのためには、実効性のある安全保障政策を行い、日本に敵対的な諸外国の脅威に対抗する必要があることは全面的に合意したい。

お奨め度★★★

4
220824_ソ連帝国の崩壊

ソビエト帝国の崩壊-瀕死の熊が世界であがく

小室直樹 光文社

本書は1980年に初版が発売された書籍だ。本書の凄い所は、1980年という段階でソ連の崩壊を見事に予言している点にある。今でこそソ連の崩壊は歴史的事実だが、1980年の段階で世界最強の国家であるソビエト連邦が崩壊すると予想する人間は殆どなかった。事実、1980年代のテレビアニメ等では、21世紀になっても米ソ両大国による対立構図が続いているという図式が多く見られた。
本書では階級論や組織論、そして経済の観点から当時のソビエト連邦が断末魔の状態にあることを見事に看過している。そしてこれらの矛盾が噴出した時、ソ連が崩壊するとしている。結果を知っている我々が本書を評価するのは些かズルいような気もするが、逆に後知恵でも凄さを感じるのが本書の凄さだ。
さらに本書の凄いのは単なる未来予測に留まらない点だ。本書は当時の日本における安全保障政策に鋭い批判を加えている。筆者の主張が、当時と異なる安全保障環境下にある現在の日本に当てはめても、十分に首肯できるものだ。
現在の視点で見れば歴史に対する認識等でやや「古い」と思える記述も伺えるが、それでもソ連の崩壊という予言を見事に的中させたという点で本書の価値は大きい。

お奨め度★★★★

3
220814_リベラルの正体

「リベラル」の正体

茂木誠/朝香豊 WAC

日本で「リベラル」といえば、左派勢力を指す場合が多い。しかしこれはおかしな話だ。リベラリズムとは自由主義と訳されるが、日本でいう「リベラル」には、自由主義とは全く相容れない共産党が含まれているからだ。
それはさておき、本書では、日本で言う「リベラル」な人たちが、どのような考えを持っているのか。そして彼らは保守勢力をどのように捉え、どのように嫌悪しているのかを記した著作である。
さらに本書では、共産主義が形を変えていまでも世界を蝕んでいる有様を語っている。なるほど、旧ソ連は崩壊し、共産主義陣営は自由主義陣営に敗れた。しかし共産主義そのものは、ある時は人権運動に姿を変えて、またある時は環境保護運動に姿を変えて、今でも自由主義社会を蝕んでいる。そして自由主義の総本山であるアメリカ合衆国も、今やこのような「隠れ共産主義」によって瀕死の状態にあるという。
本書の主張をどのように受け取るのかは読者次第だろう。かくいう私も本書で書かれていることをそのまま額面通りに受け取るつもりはない。しかし昨今の世界情勢を見た時、本書の主張があながち絵空事でもないな、とは思っている。

お奨め度★★★

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