もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 哲学・宗教

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210927_お釈迦様の

お釈迦様の脳科学

苫米地英人 コグニティブリサーチラボ株式会社

近年、仏教が世界的に注目されている。仏教はキリスト教、イスラム教と並ぶ世界三大宗教と言われているが、前2者がその原理主義的内容により様々な災厄(主に戦争)の原因になっていることを考えると、比較的他者に寛容で戦争の原因にはなりにくい仏教が着目されているのかもしれない。
本書は仏教についての著作である。本書で主に扱うのは釈迦が唱えたとされる初期仏教で、初期仏教の考え方を脳科学や量子力学などとも絡めて説明している。本書によれば初期仏教の考え方は現代の科学と矛盾する所はなく、現在ではより重要性が増しているという。そして本書では空や縁起といった初期仏教の根源的な部分についてわかりやすく説明している(とはいっても流し読みで理解するのは難しかったが・・・)。
さらに本書では仏教が中国、日本に伝わってくる過程で変容し、特に儒教や道教の影響が大きいという。そして本来は科学的な世界観を示す仏教が、変容の過程で非科学的でオカルトな部分を取り込んでしまったと。
仏教と脳科学という一見相容れない視点から記した興味深い著作。仏教に帰依する・しないは別として、仏教的な知識を身に着けるのは、今からでも遅くはなさそうだ。

お奨め度★★★

4
210917_解毒

解毒

坂根真実 角川ebook

本書はカルト宗教に入信した二世信者である筆者が、カルト宗教から抜け出すまでの過程を記した手記である。本人が自分自身について書いた著作なので客観性はやや乏しいが、カルト宗教から抜け出す本人の葛藤が赤裸々に綴られている。
本書は実話を元に書かれたものであるが、とにかく「面白い」。読み始めると読むのが止まらなくなる。筆者は自身を「カルト宗教に洗脳された」としているが、「洗脳されている」間の自分自身についても驚くほど自身を冷静に観察している。筆者が所謂「頭の良い」人物だということは本書を読むと容易に理解できる。そのような筆者であっても呪縛から逃れることができない所にカルト宗教の恐ろしさがあるとも言えよう。本書を読むとカルト宗教の欺瞞性や危険性を感じることができ、それに対する怒りと恐怖を覚えずにはいられない。
ただ宗教の問題は難しい問題といえる。宗教とは詰まる所本人の内面の問題であり、他人が介入すべき問題ではないからだ。カルト宗教の問題点はその反社会性にあるのであって、信者たちがカルト宗教へ傾倒すること自体を他人がとやかく言うことはできない。
日本人は無宗教と言われており、その分宗教に対する免疫が弱い。そして我々自身は老病死やその他の苦しみから決して逃れることはできない。宗教がこれらの諸問題に対する唯一の回答ではもちろんないが、宗教が有益な選択肢の一つであることは間違いない。だからこそ我々は宗教を正しく理解し、正しく接していくことが重要だと思う。

お奨め度★★★★

4
191229_死とは何か

「死」とは何か

シェリー・ケーガン 柴田裕之訳 文響社

人は必ず死ぬ。これは100%真実である。遠くない未来に人は「不死」になるかもしれないが、今の所「不死」はSFの世界での出来事である。しかし我々の多くは「死」から目を背けて生きてきた。
本書では「死」というテーマに真正面から取り組んだ著作である。「死」とは何か。「魂」や「死後の世界」は実在するのか。「死」は悪い事なのか。「死」が悪い事だとすれば、何故「死」が悪い事なのか。「不死」は果たして望ましい状態なのか。「死に直面して生きる」というのはどういうことなのか。「死」は恐れるに足る事象なんか。「自殺」は果たして不道徳な事なのか・・・。こうした「死」に纏わる様々なテーマに対して、科学的かつ哲学的立場から論じたのが本書である。
無論、死生観とは結局個々人の問題であり、万人が納得する答えなどはない。従って本書での著者の主張を全面的に支持する必要も受け入れる必要もない。ただそのことが本書の価値を下げるものではない。本書を読むことにより、「死」に対する我々自身の考え方を深めることができることは間違いない。そういった意味から本書は万人に奨めることができる著作であるといえよう。

お奨め度★★★★

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