もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 歴史

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210411_私本太平記

私本太平記

吉川英治

歴史小説の大家吉川英治氏が著わした南北朝時代を描いた歴史小説。主人公は足利尊氏だが、楠木正成、足利直義、高師直、新田義貞、後醍醐天皇など、南北朝時代で活躍した様々な英傑、武将らが登場する歴史大作である。さらに武将以外でも吉田兼好や明石覚一のような文化人、一色右馬介といった架空の武将も登場し、場面を盛り上げている。
南北朝時代に興味を持って何か良い本はないかと思い探してみたら、最初にヒットしたので読んでみたというのが真相。全13巻をKindleでは一遍にまとめているので、とにかくボリュームが多い。会社のトイレで暇つぶしにKindleでこそこそ読んでいたが、読み終わるまで半年近くかかってしまった。話は面白かったが、やはり北条幕府が倒れる前後あたりから物語が盛り上がり始めてくる。それまではやや冗長な感じがあるのは否めない。

お奨め度★★★

5

191213_パール判事

パール判事の東京裁判日本無罪論

田中正明 小学館文庫

東京裁判(極東軍事裁判)とは、1946年から1948年にかけて戦勝国である連合国が「戦争犯罪人」として指定した日本の指導者たちを裁いた軍事裁判である。この裁判で東条英機をはじめとするA級戦犯7名が絞首刑となった。本書は、東京裁判に参加した判事・裁判官のうち、唯一「全員無罪」を主張したラダ・ビノート・パール博士の主張を紹介し、それと共に東京裁判なるものが如何に欺瞞に満ちた茶番劇であったかを論ずる著作である。 本書によれば、東京裁判は「原告は文明である」としながらこの裁判自体が文明を冒とくし文明に逆行するものであったとしている。例えば「法の不遡及」(法は遡らない)が法治社会の根本原則であることについて、敢えて説明するまでもないだろう。しかし東京裁判は、この根本原則すら無視した暴挙であった。 さらに本書は訴える。東京裁判で醸成された日本人の自虐史観が、日本人から誇りを失わせ、占領政策の精神的虜になっていると。東京裁判の判決が全く不当なものであり、裁判自体が茶番劇に過ぎなかったことが既に世界的な常識となっているにも関わらず、当の日本人が誤った占領政策によって精神的俘虜状態を脱していないことは悲しむべきことだ。未だに東京裁判史観に基づいて反日宣伝を繰り広げる中朝韓の姿勢には呆れる他ないが、まずは当の日本人が東京裁判史観から抜け出して、誇りを取り戻すことが喫緊の課題と言えよう。

お奨め度★★★★★

戦争調査会-幻の政府文書を読み解く 井上寿一 講談社
戦争調査会とは、敗戦直後の1945年11月に当時の内閣総理大臣である幣原喜重郎が立ち上げたプロジェクトである。日本があの戦争を行うことになった原因は何か。どのような経緯で戦争へ至ったのか。そして戦争自体あのような結果に終わったのはなぜか。それらの議論を当時進められようとしていた東京裁判とは違った視点から行おうという試みである。戦争調査会自体は1年足らずの活動期間を経て中止となり、報告書も作成されなかった。そこで筆者は、当時の史料を洗い直し、戦争調査会がどのような結論を導き出そうとしていたのかを探っている。戦争の起源といっても様々な考え方があり、唯一の結論が導き出せる訳ではない。しかし本書では戦争の起源について様々な視点を与えてくれる。例えば大正デモクラシー。戦争とは一見無関係に見える大正デモクラシーだが、同時期における軍人蔑視の風潮が軍人の行動を過激化し、昭和期における軍部の暴走に繋がったとする考え方は面白い。さらに戦時中においても空襲による直接の被害よりも、空襲に起因する出勤率低下や空襲警報による避難による労働時間低下の方が生産力に及ぼす影響が大きかったという指摘も新鮮である。これらの反省は戦争直後だからこそ行い得たものであろう。太平洋戦争に対して新たな視点を開かせてくれる著作である。

お奨め度★★★

190515_戦争調査会

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サピエンス全史(上下)

ユヴァル・ノア・ハラリ/柴田裕之訳 河出書房

書店に行けば山積みになっているベストセラー本なので既に読んだ人も多いと思う。本書は一言で言えば人類史の著作だが、単純な歴史書とは全く異なる。本書では、人類(サピエンス)が他の生物に比べてどのような特徴があり、なぜ世界を支配することができたか。人類の歴史を形作っていたものは一体何だったのか。そういった観点に対して独特の史観を示してくれる。
筆者は言う。なぜ人類(サピエンス)が世界の覇者たり得たのか。なぜネアンデルタール人ではなくサピエンスが支配者となったのか。その理由は「想像力」にあると筆者は言う。想像力とは架空の物語だ。例えば神の存在である。神はサピエンス達による想像の産物だが、サピエンスが共通の神話を共有できたからこそサピエンスは協力できた。協力できたから協力できない他の動物を圧倒できたのだ。神が本当にいるかいないかの問題ではない。神がいて世界の秩序が築かれていると「多くの人が信じる」からこそ、サピエンスは他の動物を圧倒できたのだ。筆者はこれを「認知革命」と呼ぶ。
神というと我々にはうさん臭く感じるが、神という言葉を自由、平等、人権等に変えてみると良い。自由も平等も人権も想像上の産物だ。例えば「死」は現実だが、「自由」は概念であって現実ではない。にも関わらず我々は自由、平等、人権を至高のものと考え、時には自らの死をも厭わずにこれらを守ろうとする。これこそ現在と宗教だとする筆者の主張は鋭い。
認知革命を成し遂げた人類は、次に統一に向かう。その際に力を発揮したのが、宗教、貨幣、そして帝国である。宗教は言わずもがなで、サピエンスに共通の指針を与えた。また貨幣は見知らぬ人同士が互いに協力できる基盤となった。そして帝国は人類統一のために必要な力の源泉になった。その結果、今や世界は1つになり、全ての人類が共通の価値観の下で生きていくことになる。
最後は科学革命である。科学革命は、「我々は何も知らない」という無知の自覚が出発点となった。これまで人類は神や賢人が「すべてを知っている」という前提に立っており、無知であることを自覚しなかった。「私はなぜ雨が降るか知らないが、あの人に聞けばわかるだろう」が人類共通の認識だったのだ。科学革命はそのような意識を変えた。
「我々は何も知らない」
「だから我々は進歩できる」
これによってはじめて人類は進歩を手に入れた。これまで人類は「過去の方が良かった」「今は暗黒の時代」と考えていた。しかし科学革命は人類にとって「未来は現在よりもより良いもの」という希望を与えた。そしてそれに拍車をかけたのが資本主義と帝国主義で、ここで初めて「投資」と「配当」という概念が生まれる。そして核兵器の発明は人類を破滅の淵に追い込む一方で人類に対してこれまでにない平和な時代をもたらした。
それでは人類による世界の支配は果たして良いことばかりかというと、筆者は必ずしもそうは考えていない。農業革命や科学革命は人類の幸福に必ずしも寄与しなかったし、人類以外の動植物にとっては猶更だ。
最後に筆者は未来の人類像に触れている。未来の姿はSF作品に描かれているような「我々と同じような思考をする人々が光速宇宙船やレーザーガンで武装した世界ではないかもしれない」と筆者は言う。このあたり本書の最後で面白い所なので、是非読んでみて頂きたい。23世紀初頭の地球にはアナライザーはいる可能性が高いが、ひょっとしたら古代進も森雪もいないかもしれない。

お奨め度★★★★★

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明治維新1858-1881

板野淳治/大野健一 講談社

本書のタイトルは明治維新だが、明治維新の流れについて触れた歴史書ではない。本書は明治維新を「後発国の日本が極めて短時間に西欧諸国と対等に渡り合える所まで成長した世界史的にも希有な事例」と捉え、そのような事を可能たらしめたものは何かについて考察している。本書はその考察の中で、「柔構造」という仮説を設定している。簡単に言えば、「イデオロギーに囚われずに節操なく目標をコロコロ変えていく」ことこそであり、一つ間違えると欠点として扱われかねない。しかしそのような「欠点」こそが明治維新成功の最大の要因だと本書は説いている。
タイトルから歴史書を期待していた私にとってはやや期待ハズレな面もなきにしもあらずだったが、読み物としてみた場合、「このような分析もありかな」と思った。

お奨め度★★★

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