
イラン空軍のF-14トムキャット飛行隊
トム・クーパー&フィルザード・ビショップ著 平田光夫訳 大日本絵画
イラン空軍のF-14Aトムキャットと言えば、従来は「交換部品が不足しているため殆ど戦力にはなっていない」とか「戦闘機としての運用ではなく簡易AWACS的な運用が主である」といったように、西側からの一方的な情報が長らく信じられていた。
本書は、筆者独自の取材に基づき、イラン空軍のF-14トムキャット飛行隊の活躍について調査した著作である。筆者は、イラン空軍のF-14トムキャットの正確な撃墜数は不明としながらも、相当数のイラク空軍機がイラン空軍F-14の餌食になったと分析している。しかもその数は少数ではなく、100機前後といった大きな数のイラク機がイラン空軍F-14トムキャットの犠牲になったと筆者はみている。
また本書の魅力は詳細な戦闘場面で、特にAWG-9火器管制レーダーとAIM-54フェニックスミサイルが実戦で有効だったのか否かについては、航空戦ファンなら見逃せない場面だろう。さらにF-14最大の特徴である6目標同時攻撃能力やAIM-54フェニックス6発同時発射などの実戦での評価も明らかになっている。
無論、秘密のベールに包まれたイラン空軍の調査であるから、本書の内容が今後の研究で覆る可能性も十分にある。そういった点も含めて現時点におけるイラン空軍F-14トムキャットに関する最新研究成果という見方もできる著作である。
お奨め度★★★★