もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ: ゲーム

Saipan


2021年1月7日。首都圏1都3県に第2回目となる緊急事態宣言が発令された。新型コロナウィルス感染拡大に伴う措置である。その日、私は某ゲーム会に参加の予定であったが、緊急事態宣言を踏まえて参加を中止。その代わり参加プレイヤーとVASSALによる通信対戦を行うことにした。

その日予定していたゲームは、Compass Gamesの"Saopan - The Bloody Rock"である。1944年6~7月におけるサイパン島の戦いを中隊規模で描いた作品で、CSS(Company Scale Serise)と呼ばれる共通のルールで構成されている。Saipanの概要については こちら を参照されたい。

Saipanについては既に何度かプレイしたことがあるが、その結果はいつも「海岸線で米海兵隊が大損害を受けて敗退」というものであった。史実では、大損害を受けながらも海兵隊は橋頭保を確保している。何かがおかしい。
そう思っていた我々に朗報が届いた。CSSの最新版"Little Land"では、間接射撃に関するルールが改定されているとのこと。その改定内容は、「既に弾幕マーカーが置かれているヘクスに対しては、それよりも強力な弾幕マーカーを置く可能性がない限り砲撃マーカーを置けない」というものである。要するにあるヘクスに対して軽砲による間接射撃を行った場合、そのヘクスに対しては中砲又は重砲でしか砲撃できないというものである。海岸に集まる海兵隊に対して間接射撃を複数回加えることが難しくなったのだ。
また射撃についてもルールが明確化され、あるヘクスから実施される射撃は1アクション1回まで。スタックしていても個別射撃は禁止。さらに第2アクションで再度射撃を行うことも禁止となっている。
これらの改定によって海岸線の海兵隊が殲滅される可能性は大幅に減少した筈だ。

という訳でSaipanを再戦。選択したのはシナリオ3「犬の日」である。これはサイパン上陸当日を扱ったシナリオだ。今回参加したのは3名。日本軍は2名、米軍は1名で担当する。私は日本軍を担当し、陸軍第43師団を受け持った。ちなみに日本軍の残りは独立混成第47旅団(独混47)と海軍陸戦隊である。

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猛烈な艦砲射撃の後、米海兵隊2個師団の先鋒部隊がサイパン島南西部に上陸してきた。海岸に伏せていた日本軍は激しい防御射撃を実施。第2海兵師団の2個中隊が海岸線で防御射撃を受けて壊滅する。さらに水陸両用戦車2ユニットが相次いで日本軍の攻撃を受けて撃破。海岸に屍を晒す。このTurnに除去した海兵隊は、歩兵2個中隊と水陸両用戦車2個中隊である。

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米軍の上陸を迎えて水際撃滅の念に燃える我が第43師団が反撃に出る。しかし先鋒で上陸に成功した海兵隊が散開して橋頭保を固める。水際で反撃する日本軍の猛烈な射撃にも臆することなく上陸を続けていく。チャランカノア飛行場前面では指揮官、水陸両用戦車を含む3ユニットスタック(1個大隊相当)が"0"の目を出して壊滅する所(既に"Supressed"状態だったので、"Supressed"が重なると壊滅する)所であったが、「バーボン」を使用して振り直し要求で辛くも壊滅を免れた海兵隊なのであった。このTurnに除去した海兵隊は、歩兵2個中隊と水陸両用戦車1個中隊である。

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米第4海兵師団の先鋒がチャランカノア市街地に突入した。やばい。同市には第43師団の司令部がある。このままでは潰されてしまう・・・。

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チャランカノアが危ない。歩兵2個中隊をチャランカノアに突入させて同市の守備を固める。これで一応危機は去ったか・・・。いや、まだわからないぞぉ。

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チャランカノア海岸では海兵隊がオーバースタックで大混乱。まさに「三密」状態である。そこに日本軍の砲弾が降ってきた日には・・・。さらに日本軍の射撃が冴えまくり、小さい目を連発(0の2連発で壊滅した海兵隊のスタックも出た。バーボン・・・、は、もうない)。逆に海兵隊は士気チェックで高い目を出しまくり、潰走によって除去される中隊が続出である。このTurn、海兵隊は歩兵8個中隊、水陸両用戦車3個中隊、迫撃砲4個中隊の計15個中隊もの損害を被った。まるで「東京都内爆発的感染」のような損害の出し方である。サイパン西部、チャランカノア海岸は米兵の血で真っ赤に染まった。

午前中の戦いで海兵隊が失った戦力は計22個中隊。対する日本軍は支援火器数個を失っただけで失われた歩兵、戦車、砲兵中隊は1個もない状態。この段階では日本軍が圧倒的に勝利していた。

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感想

海兵隊の損害はこれまでのプレイにない程の規模になってしまった。ルール改定前よりも酷い状態である。このシナリオでは海兵隊の第2海兵師団と第4海兵師団が登場し、その兵力は以下の通りである。

US_SetUp

US_Rein



午前中に登場する海兵隊は、第2海兵師団が歩兵12、水陸両用戦車4、迫撃砲4である。第4海兵師団も同じ。米軍の損害はその約2/3に達する。いやはや・・・。
ちなみに午後に上陸する兵力は、第2海兵師団が歩兵10、工兵3、迫撃砲2、加えて戦車小隊が8個と各種支援火器6が登場する。また第4海兵師団は歩兵15、工兵3、迫撃砲4、戦車小隊8、各種支援火器6が登場する。つまり午後の増援部隊の方が多いのだ。だから午前中の大損害が必ずしも海兵隊全体の敗北とする必要もないのかもしれない。

今回は日本軍のダイス目が良く、"0"を連発してしまった。"0"の目が出ると自動的に"Supressed"状態になり、それが2回出るとスタックは壊滅する。"Supressed"状態の前に回復アクションを実施できれば回復できるのだが、日本軍に連続して"0"を出されるとどうしようもない。
もう1つは"Rout"(潰走)チェックである。Routチェックは一種の士気チェックだが、これに失敗したユニットは潰走する。潰走先は所属部隊の司令部(HQ)なのだが、HQがサイパン島に上がってくるのは夕方である。それまでに潰走したユニットは潰走先がないので壊滅するしかない。ただし"散開"状態(要するに戦闘隊形のこと)が存在するスタックについては、潰走チェックに失敗しても"Pin"(釘付け)状態になるだけなので、壊滅することはない。

そして今回の決定的な要因となったのが日本軍守備隊の損害の少なさである。塹壕を掘って地形に籠る日本軍歩兵は極めて頑強であり、空爆や艦砲射撃でも制圧するのが困難である。これを潰しておけば日本軍の直接射撃は黙らせることができるのだが、今回、日本軍守備隊は殆ど損害を受けていなかった。塹壕("Trench")の防御効果が大き過ぎるのではないか、セットアップで塹壕を置くのはやり過ぎか、等、色々と思えてくるのだが、果たしてどうなのだろうか。

これは是非ソロで再戦してみたいものだ。

HMS_Sikh_(F82)


ボン岬沖海戦とは、1941年12月13日にチュニジア北部のボン岬沖で英伊の高速艦艇同士が戦った夜間水上戦闘である。
CW_DD1aこの海戦に参加した英海軍の戦力は駆逐艦4。対する伊海軍は軽巡2、水雷艇1である。兵力的には伊海軍が有利かと思われるが、海戦の結果は英艦隊の圧勝。伊軽巡2隻沈没に対して英側の損害はなしである。伊軽巡が輸送任務中で可燃物を満載していたこと、英艦隊がレーダーを装備していたのに対して伊艦隊にはレーダーがなかったこと。そして夜戦能力で英伊艦隊の間に明らかな実力差があったことが原因と考えられる。


このボン岬沖海戦を「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)でシナリオ化してみたい。地中海における夜間戦闘シナリオは初めてである。

戦闘序列

兵力は両軍とも史実通りで、英海軍が駆逐艦が4隻。伊海軍が軽巡2隻と水雷艇1隻である。
英海軍の駆逐艦は、砲力に優れたトライバル級が2隻、砲力と雷撃力のバランスが取れたL級が1隻、そしてオランダ海軍の駆逐艦1隻である。比較的新型艦が多いため、砲力が優れている。
対する伊海軍は軽巡「アルベルコ・ダ・バルビアーノ」と「アルベルト・ディ・ジュッサーノ」。 スパダ岬沖海戦 に登場した「バルトロメオ・コレオーニ」らと同型艦である。また水雷艇「チーノ」はスピカ級の水雷艇で、排水量600t強。小型駆逐艦ともいうべき艦である。

状況及び特別ルール

この戦いは史実がかなり一方的な戦いなので、勝利条件はそれを反映したものとしている。すなわち伊海軍は2隻の軽巡のうち1隻をマップの北側に離脱させなければならない。対する英海軍はその阻止と自軍の損害軽減。英海軍は自身が被った損害の3倍以上の損害を伊艦隊に与える必要がある。

また特別ルールその他であるが、まずイタリア側の稚拙な戦闘を反映するため、伊艦隊の指揮値を最低の"1"とし、さらに初期CP値を"0"として英側の奇襲を再現した。これで第1Turnに英海軍は一方的な奇襲攻撃を仕掛けることが可能になる。
また伊軽巡はガソリン等を満載しているため、脆弱であることを再現する特別ルールを導入した。すなわち伊軽巡が砲撃や魚雷で特殊損傷を食らった場合、自動的に追加1損害と火災発生が適用されるものとした。

Turn0a


テスト

1Turn

伊海軍はCP(指揮ポイント)が0だから、変針・変速できない。ただ真っすぐ走るだけ。英駆逐艦は伊軽巡の前面でT字の形を取り、魚雷計8本を発射する。

Turn1a

2Turn

英駆逐艦の放った魚雷8本のうち、1本が伊軽巡「バルビアーノ」に命中した。ガソリンの誘爆その他によって「バルビアーノ」は轟沈。早くも伊軽巡は残り1隻となる。伊艦隊の右舷側に回り込んだ英駆逐艦4隻は、残った伊軽巡「ジュッサーノ」に砲火を集中。駆逐艦「レギオン」の放った主砲弾2発が「ジュッサーノ」に命中。同艦に軽微な損傷を与えた。「ジュサーノ」も「レギオン」に向けて砲撃を行うが、無情にも外れ。

Turn2a


3Turn

英駆逐艦は優速を生かして伊軽巡の前面に再展開。4隻が十字砲火を浴びせる。駆逐艦の射撃とはいえ、伊軽巡は次々と命中弾を受けたことで最大速度は20ktに低下した。  


Turn3a


4Turn

伊艦隊は右へ舵を切って英駆逐艦から離隔を図る。勝利条件を考えれば真っすぐ北上したい所だが、このまま北上し続けても英駆逐艦のT字戦法による十字砲火を浴びるだけだ。それなら一旦右へ躱して並行砲戦で再起を図りたい。伊艦隊の変針を見た英駆逐艦も少し慌てて120度回頭で伊監隊を追う。

Turn4a


5Turn

英伊両艦隊は距離6km(4Hex)で並行砲戦を行う。「ジュサーノ」の砲撃が漸く威力を発揮し、英駆逐艦「レギオン」に1発の命中弾を与えた。「レギオン」の損害は軽微であった。
対する英駆逐艦4隻が「ジュサーノ」に砲撃を集中。今度は並行砲戦だけに命中率が高く、3発の12cm砲弾が「ジュサーノ」に命中した。「ジュサーノ」は大破、戦闘力を失う。

Turn5a


感想

IT_CL1aこの時点で結果が見えたので終了とした。イタリア軍の損害は、軽巡1隻沈没、1隻大破。英海軍の損害は駆逐艦1隻小破。このまま継続したら、恐らく「ジュサーノ」は沈没し、水雷艇「チーノ」も生還するのは難しかっただろう。
シナリオの出来具合だが、悪くないと思う。序盤に英側の奇襲が約束されているので、この時の当たり具合で全て決まってしまう感も無きにしも非ずだが、短時間でプレイできるシナリオなので、極端な結果になればやり直せば良い。イタリア側で勝利するのは難しいと思うが、その分やりがいはあると思う。不利なイタリア側を率いて英駆逐艦の脅威を躱すことができれば、大いに自慢して良いと思う。

という訳でこのシナリオは完成とする。次はどのシナリオにしようか・・・。一応K部隊の活躍を描いたシナリオを考えているのだが、はてさて・・・。

RMS_Barbiano

ウォーゲームの元が図上演習と呼ばれる軍隊の演習であったことはウォーゲーマーの多くがご存じであろう。というよりも、図上演習=ウォーゲーム(の一形式)というのが本来の姿だ。例えば 米海軍大学校のHPには、 Wargamingというセクションがあり、そこには体育館のような場所を使ってユトランド海戦に興じる(??)人々の姿が描かれている。

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(Photo by, https://usnwc.edu/Research-and-Wargaming/Wargaming)

今から10年ほど前に放映されたNHKのドラマ「坂の上の雲」では主人公が海軍大学校で図上演習を指導する場面が描かれているが、そのようなことを持ち出すまでもなく日本陸海軍で各種のウォーゲームが実際に用いられていたことは今更言うまでもないだろう。

旧海軍が行ったウォーゲームで有名なのが、日米開戦前に聯合艦隊が行った一般図上演習とハワイ作戦図上演習、あるいはミッドウェー作戦前にやはり聯合艦隊が実施した第二段階作戦図上演習等がある。特に第二段階図上演習では、ミッドウェー作戦に対して不安を感じさせる場面が出たにもかかわらず演習結果を無理矢理裁定して「バラ色の未来」を演出したとして批判されることが多い。しかし実際の結果は周知の通りで、図らずもウォーゲームの再現性の高さが皮肉な形で証明されたことになる。
再現性といえば、先に挙げた「ハワイ作戦図上演習」は、現時点で見ても驚くほど正確に実際の真珠湾攻撃の結果を予測している。実松譲著「海軍大学教育」(光人社NF文庫)によれば、同演習で日本機動部隊は合計360機を真珠湾攻撃に放ち、戦艦4隻撃沈1隻大破、空母2隻撃沈1隻大破等の戦果を挙げたとされている(在ハワイの基地機による反撃によって空母2隻沈没等の被害を被ったが・・・)。
史実では真珠湾に米空母が不在であったために空母に対する戦果は皆無であったが、戦艦の撃沈・大破数については、事前の図上演習と史実との結果が完全に一致しており、巡洋艦やその他に対する戦果も史実から大きく乖離していない。つまり真珠湾攻撃の戦果は、事前のウォーゲームが予測した結果とかなり近い精度で一致している。
一般に真珠湾攻撃での戦果が予想以上に大きかったこと(及びマレー沖で英戦艦2隻が航空攻撃によって撃沈されたこと)を以て戦艦主兵から航空主兵へ切り替わったとされているが、ウォーゲームというツール上では、戦争開始前から既に航空機の有効性は半ば以上証明されていたともいえるのである。

写真02

photo by Wikipedia

ところで日本海軍以上に「ウォーゲーム大好き」なのが米海軍である。小説「坂の上の雲」でも示されている通り、そもそも図上演習(兵棋演習)を熱心に取り入れていたのは米海軍である。太平洋艦隊を率いて日本海軍と戦ったニミッツ提督はいみじくも以下のような言葉を残している。

「日本との戦争は、かつて海軍大学のウォーゲーム講堂において、多くの学生によって実施されてきたウォーゲームの再演であった。戦争を通じて、我々の予期しなかった事象が生起したことは、戦争末期における神風攻撃を除き、皆無であった。」 

当時のニミッツ提督が海軍大学においてどのようなウォーゲームを実施してきたかについて今では知る由もない。しかし図上ではなく実動演習の記録ならば残っている。Fleet Problemと呼ばれるもので、Wikipediaによれば、1923年に実施したFleet Problem Iから、1940年のFleet Problem XXIまで、計21回の実動演習が行われたとされている。それらの実動演習で主役を演じたのは空母であり、演習の内容もパナマ運河防衛やハワイ防衛、さらには太平洋方面への進攻作戦等であった。空母同士の対抗演習では後の空母決戦に似たような場面が演習によって実施されており、空母の有効性と脆弱性とが確かめられていたのである。
これらの実動演習や図上演習(ウォーゲーム)を通じて米海軍は空母の有効性を確認し、未来の戦争における空母の役割について予見していたのである。と同時にこれらの演習を通じて航空攻撃に対する水上艦艇の脆弱性に気づき、戦闘機や対空火器を用いた艦隊防空を急いで発展させていくことになる。そしてそのことはやがて実戦において実を結ぶことになる。
戦間期における米海軍の空母運用や艦隊対空防御についての急速な発展を見た時、「航空主兵か戦艦主兵か」といった議論が実に些細なことに思われてくる。彼ら(米海軍)の考え方はもっと実戦的で、「戦艦でも空母でも使える物は使う」という考え方だ。真珠湾攻撃で戦艦が潰されたから空母を主体としたタスクフォースで戦い、戦艦が復活してきたら対地支援や水上打撃戦、対空防御に戦艦を有効活用する。日本海軍における「航空機か戦艦か」といった議論が「どちらが王様か」といった些か子供じみた印象を持ってしまうのに対し、米海軍はもっと実戦的かつドライに考えているという印象を受ける。

太平洋戦争時、米海軍にはパイロット資格を持つ高級将校が多くいて、彼らの活躍が戦史に際立っている。アーネスト・キング、ウィリアム・ハルゼー、マーク・ミッチャーなどがその代表例だ。しかしその一方でパイロット資格を持たず、航空端出身ではない高級士官達であっても、巧みに空母や航空部隊を運用し、勝利に貢献している例が多いことにも気づく。先に挙げたニミッツ提督はもちろん、珊瑚海や第2次ソロモン海戦で日本機動部隊と互角の戦いを演じたフランク・フレッチャー、ミッドウェーで「奇跡の勝利」を演出したレイモンド・スプルーアンス、マーク・ミッチャーの参謀長としてマリアナ、レイテの二大海戦を戦い、日本軍の囮作戦を見抜いたアーレイ・バーク等。彼らは航空機の専門家ではなかったが、戦前の演習(ウォーゲーム)を通じて航空機や空母の有効性を知っていたので、それらを巧みに操ることができたのである。

太平洋戦争における米海軍の勝利。それはウォーゲームが大きな役割を果たしていたと考えて間違いないだろう。

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1930年、Fleet Problem Xの一場面
photo by https://navy-matters.blogspot.com/2020/06/fleet-problems-then-and-now.html

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Iron Curtain(以下、本作)は、SCSシリーズの1作で、西ドイツ周辺で起こり得た東西両陣営の直接対決を作戦レベルで再現した作品である。本作の特徴は、年代別にシナリオが複数用意されている事で、1945年、1962年、1975年、1983年、1989年の各シナリオの中から、好みの時代を選択してプレイできるようになっている。

これまでに 1962年シナリオの対人戦1989年シナリオのソロプレイ を紹介してきた。そこで今回はさらに別のシナリオを紹介しよう。

今回紹介するのは1983年シナリオ。本作の中では5つ設定されている年代のうち、4番目に新しい年代である。
1983年といえば、米国ではレーガン政権が生まれて3年目にあたり、600隻艦隊構想に代表される軍拡によってソ連との対立を深めつつあった時期でもある。一方のソ連側はブレジネフ体制で強化された核・非核戦力が文字通り最高潮の時期にあり、ソ連軍にとっては「最も輝いていた」時期でもあった。

このシナリオは。ジョン・ハケット将軍がその著書「第3次世界大戦」で描いた時期そのものといえる。ヴェトナムの泥沼から這い上がり、生まれ変わりつつあった米軍と、今や最高潮にあったソ連軍。世界大戦の危機が本当に高かった時期を描いたものである。

今回は対人戦。私はNATO側を担当した。

準備段階

これまでの2度の戦いを通じて私はいくつかの教訓を得ていた。

 (1) 後退無視地形(大都市、山岳)以外で守るのは徒に損害を増やすだけで足止め以外の意味はない。
 (2) 従って戦法は一撃離脱。通常移動・通常戦闘で敵を包囲殲滅した後、第2次移動で大都市や山岳へ籠る。決して前では守らない。
 (3) 自身が攻撃する際には、大都市や山岳に対する攻撃は必要な場合を除いて行わない。またもし大都市攻撃が必要な場合には、オーバーランを駆使して可能な限り速やかに落とす。その理由は、大都市・山岳では敵側が後退免除になるため、敵を完全に殲滅しない限り、攻撃部隊はその場で拘束されてしまう(ZOC内のユニットは第2次移動できない)。その結果、攻撃者が敵の包囲反撃にあってしまうからだ。
 (4) ヘリ部隊は極めて有能である。だから敵のヘリ部隊は最優先で撃破しなければならない。


上記方針に従い、RunUp(戦争準備)段階では、NATO軍は西ドイツ各地に展開している地上部隊を可能な限り大都市や山岳地帯に「避難」させ、これらを死守せんとした。また最前線には一部の部隊を除いてすべての部隊は大都市防御に投じられることになる。

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1Turn(X Day)

戦争が始まった。WTO軍は鉄のカーテンを超えて西側に侵攻する。空ではNATO機とWTO機による激しい制空戦闘。しかし航空戦力で優位に立つNATO軍は、戦場の制空権をガッチリ握って離さない。

TornadoADV


WTO軍は開戦当初から化学兵器をベルリン攻略戦に使用してきた。西ベルリンはWTO軍の猛攻を受けたが、西ベルリンを守るNATO軍部隊は辛くもそれを凌いだ
先にも書いた通り、NATO軍の主力は大都市に籠っているので、WTO軍は大都市に向けて攻撃を仕掛ける。ハンブルグ、ハノーバー、カッセル、ニュルンベルクがWTO軍の攻撃を受けたが、都市を守るNATO軍は強力であり、簡単には撃破できない。

NATO軍の反撃は大都市を攻めるソ連軍機甲部隊に対して指向された。大都市を包囲攻撃中のWTO軍部隊はNATO軍による側面からの反撃に対して頑強に抵抗することができず、次々と包囲撃破されていった。特にNATO側が優先的に狙ったのはWTO軍の攻撃ヘリ部隊で、航空戦力を主に対ヘリ攻撃に使用。それ以外でも不用意に前線に取り残されていた攻撃ヘリのスタックを包囲攻撃。このTurnだけで5個の攻撃ヘリ旅団を撃破した。
NATOは例の「一撃離脱」戦法を徹底。通常戦闘でWTO軍に一定の損害を与えた後は、後方に下がって大都市に籠る。

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2Turn(X+3 Day)

WTO軍は西側への侵攻を断念。攻撃目標を西ベルリン一本に絞り、残りは東ドイツ領内に後退していく。航空戦力も積極的な運用を行わず、NATO軍の航空戦力が戦場を支配する。WTO軍はNATO空軍機による損害を極限するため、部隊を散開させて対応する。西ベルリンに対する攻撃は今回も化学兵器を使用。2ヘクスの西ベルリンのうち、1か所をWTO軍が支配することに成功した。
NATO軍は西ベルリン付近に英空挺部隊を降下させた。化学兵器汚染地域に向けて前進する英空挺部隊。彼らの運命はWTO軍の包囲下で化学兵器の攻撃を受けて全滅するだけという過酷なものであったが、彼らは西ベルリンにおける友軍を助けるために敢えて過酷な運命を受け入れた。

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西ドイツ領内のNATO軍はWTO軍の後退を追って東ドイツ領内に逆侵攻・・・、はせず、あくまでも「一撃離脱」戦法に徹して前線に残ったWTO軍を個別に撃破していく。またWTO軍が攻勢に出てきているデンマークに対して増援部隊を投入。先行部隊として英独の攻撃ヘリ部隊をコペンハーゲンの守備に加わり、さらに西ドイツ軍の機甲旅団2個がユトランド半島に進んでいく。

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3Turn(X+6 Day)

デンマークでNATO軍が反撃に出る。WTO軍の機械化師団2個がコペンハーゲン周辺に展開していたが、それに対してNATO軍の攻撃ヘリ部隊(米英独)と西ドイツ軍機甲旅団が反撃を実施。これを撃破してデンマークに侵攻したWTO軍を一掃した。
西ベルリンでは新たな増援部隊としてフランス軍空挺部隊が西ベルリンの守備に投入された。彼らの過酷な運命については言うまでもない。そのせいもあってか、このTurnも西ベルリンは持ちこたえた。しかし西ベルリンで苦戦する友軍を後目に、NATO軍は相変わらずの「一撃離脱」戦法。これでは「苦戦する友軍を見捨てるのか」という世論が沸騰しそう。映画「遠すぎた橋」ではないが、前線では「なぜ救援に行かないのか」「上からの命令だから仕方がない」的な会話が会話が交わされていたのかもしれない。

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感想

時間の関係で今回はここまでとした。ここまでの所要時間はセットアップを含めて約8時間である。時間のかかった理由は、主に3つある。
1つはセットアップに時間がかかること。マルチシナリオゲームなので、ユニットを探し出さなければならず、それに時間がかかる。さらにセットアップシートも昔ながらの「ユニット名を羅列する」タイプ。最近のゲームでよくあるカラーのユニットリストのようではない。従ってユニットを探し出すのがより困難である。OCS等でも言えることだが、どうしてシナリオをこうも「読みにくい」ようにするのだろうか。カラーのセットアップシートをつけるだけでどれだけセットアップが楽になることか・・・。今回、セットアップに要した時間は2時間以上になった。
2つ目は、RunUpと呼ばれる事前手順が必要なことである。戦争が始まる前の両軍の事前準備を再現する手順だが、これが思いのほか時間がかかる。今回も1時間以上かかった。そんなこんなで、今回セットアップ開始が10時過ぎだったのが、実際にゲームを始めたのが午後2時少し前。休日の時間を潰すには少し痛い時間の長さである。
3つめの理由は、言うまでもなく各Turnでの所要時間が長いことにある。このゲーム、ルールは比較的シンプルなのだがユニット数が多く、考えることが多い。またシステム的な特性も大きい。ZOCが緩く攻撃側が有利なシステムなので、どんどん攻撃しなければ勝てない。そのため本来は守る側のNATO軍も攻撃に精を出すことになるが、その時戦闘比は3-1以上(地形効果がある場合は4-1以上)に持っていく必要がある。何故なら2-1以下の戦闘比では、後退の結果が得られない場合がある。もし後退せずに相手がその場に留まってしまったら、2次移動が使えないので、攻撃した部隊が「一撃離脱」できなくなる。そうなると今後は攻撃側が敵の包囲攻撃の餌食となってしまう。

「3-1,4-1以上の戦闘比で包囲攻撃をできるだけ多く実施する」

これが命題になるが、この命題をこなすためにパズル的な思考を要求されるため、その分時間がかかることになる。これはシステム特性上仕方がないが、正直、私がSCSなるシステムを好きになれない理由がここにある。

ともあれ、これで8本のシナリオのうち、3本を体験したことになる。あと5本。できれば1945年シナリオ等は試してみたい気がするが、果たしてどうだろう。時間を投入する価値が果たしてあるのか・・・。

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Picket Duty(以下、本作)は、Legion Wargameが2013年に出版したソロプレイ専用のウォーゲームだ。テーマは1945年3~6月における沖縄水域の戦い。プレイヤーはフレッチャー級駆逐艦の艦長となり、襲いかかってくる日本の特攻機と戦う。Picket Dutyとは、沖縄周辺海域を警戒するレーダーピケット任務のことだ。

本作は1Turnが実際の1日を表し、1日は午前、午後、夜間の3フェイズに分かれている。戦いはフェイズを基準として進められる。
最初に天候と自艦を守ってくれる友軍戦闘機の数を決定する。続いて飛来する特攻機の機数を決定し、特攻機の配置、対空射撃、自艦の緊急回避、特攻機の命中判定、ダメージコントロール要員の配置、ダメージコントロール判定で1フェイズが終了する。これを1日3回実施し、最後に保守整備を行って1日が終わる。キャンペーンシナリオの場合には、数日間繰り返して勝敗を判定する。

まず最初ということで、シナリオ2「A Fiery Sunday Morning:May 25, 1945」をプレイしてみることにした。これは5月25日に菊水8号作戦と直面した米駆逐艦「ブレイン」(USS Braine, DD-630)の戦いを描いたものである。

準備

まず最初に艦長と8人の士官について能力を決定する。能力決定には専用のチットを用いる。チットには-2から+2まで5段階あり、+2が最高だ。また0が最も多い。今回は、Damage Control Officer(ダメコン士官)とRepair Chief 1(第1修理班長)が能力+1で優秀。逆にRepair Chief 2(第2修理班長)が能力-1、Repair Chief 3(第3修理班長)が能力-2と無能である。
次にFDT(Fighter Direction Team = 戦闘機誘導班)が乗艦しているかどうかを判定する。2d6で5以上なら乗艦だ。FDTが乗艦していると、戦闘機の配置で有利になる。出目は"9"なのでFDTは乗艦していた。
次にSFS(Surface Fire Support = 水上火力支援)の数を判定する。これも専用の表で判定し、0~2個のSFSが登場する。SFSが0個だと不利になる。出目は"7"(2d6)で、SFS 1個が登場する。
最後に陸上レーダーの作動状況を判定する。この時期、伊江島や座間味等、3ヶ所の陸上レーダーが既に設置されていた。これらのレーダーが稼働していると、特攻機を早期警戒する上で有利になる。2d6で5以上が出れば陸上レーダーは稼働している。出目は"9"だったので、陸上レーダーは稼働してくれた。

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午前

まず天候チェックを行う。2d6で出目は"4"。結果は「雨」であったが、面白くなさそうなので、「晴れ」に変更した。続いて援護戦闘機の数を決定する。今日は「菊水」攻撃が実施されるので、専用の表(Table 7-3)を使って戦闘機数を決定する。ダイス判定の結果、空母機7機と海兵隊機7機が上空援護に飛来した。
続いて来襲する日本機の機数を決定する。今日は「菊水」攻撃が行われるので、Table 22を使用する。2d6で出目は"3"。日本機9機が飛来した。Table 8-3で攻撃隊を複数の"wave"に分割する。5機が第1波、4機が第2波となる。
第1波で飛来してきたのは、零戦、九七艦攻、二水戦、零式観測機、そして最新鋭の流星改、と、編成もバラバラ。日本人としては、

「こんなバラバラな編成で来るわけねえよ」

と突っ込みたくなる。それぞれの進入高度、進入包囲をダイスで決める。

写真02


戦闘機が流星改を撃墜し、対空砲火が零戦を爆散させた。残った二水戦と九七艦攻は長い炎を引きつつ「ブレイン」に迫ってくる。もう1機の零式観測機も対空砲火を受けながらなおも突進を止めない。二式水戦は炎を引きながら「ブレイン」の手前に墜落。しかし残った2機は被弾で炎上しながらも、次々と「ブレイン」の左舷後部に突入した。1機は水線下の倉庫に命中。もう1機は艦中央部の5インチ砲に命中した。5インチ砲は損傷したものの、手動で操作が可能である。さらに弾薬庫にも被害が及んだが、幸い誘爆も浸水もなかった。

続いて4機に日本機が迫る。二式複戦、一式戦、九七重爆、そして新鋭の偵察機、彩雲だ。なんだよ、この編成。絶対あり得ねぇ・・・。

突っ込んできた4機に対して、1機は40mm機関砲を受けて爆散。2機は「ブレイン」の至近距離に墜落したが、直接的な被害はなかった。最後の1機は炎上しながらも後部から甲板に突入。40mm連装機関砲1基を破壊した。

3機もの特攻機を食らった「ブレイン」だが、損害復旧班が走り回る。火災を鎮火し、弾薬庫を修理し、さらに火砲も修理する。午後になる前に「ブレイン」は殆どその機能を回復した。

午後

午後になると、今度は11機もの日本機が「ブレイン」を襲った。最初に6機が突入してきたが、3機を友軍戦闘機が撃墜。さらに対空砲火で1機を爆散させた。残った2機は「ブレイン」の至近海域に突入し、「ブレイン」の船体に軽微な損傷を与えた。
さらに5機の特攻機が現れたが、対空砲火と戦闘機によって全機撃墜に成功し、1機が至近海面に突入したものの、「ブレイン」に実質的な損害はなかった。

夜間

夜に入ると日本機の空襲はなく、「ブレイン」にとって長い1日は終わった。

結果

「ブレイン」が生き残ったので米軍の勝利。

写真03


感想

3機も特攻機が命中したのに、駆逐艦は殆ど無傷であった。何かルールを間違っているのだろうか・・・?。仮にルールミスがないとすると、駆逐艦の頑丈さが気になる所だ。あと本文でも触れたが、日本機の扱いが変である。様々なヒコーキが登場するのは良いが、陸軍の二式戦や三式戦、九七戦、さらには零式水偵や零式観測機、大艇等が特攻機として飛び込んでくるのにはやはり違和感を禁じ得ない。編成がバラバラなのも気になる所だ(実際には、特攻隊は概ね同一の機種で編成されている。エリア88じゃあるまいし)。
また折角様々な機種が登場してきても、それぞれのキャラクター性が乏しい点も寂しい所だ。一応単発機と双発機の違いはルール化されているが(双発機の場合、艦に命中した時のダメージが大きい)、それ以外は機種による違いはない。二式水戦のように凡そ特攻には不向きと思われる機種と、高速と大きな爆弾搭載能力を誇る流星改や彗星後期型が全く同じ扱いというのも寂しい所だ。

まあ日本人から見ると色々と不満の残る所だが、特攻攻撃を受けた米駆逐艦乗組員の苦闘を体験できるという意味では良いゲームだ思う。

写真04


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