もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:世界の軍隊 > ロシア・ソ連軍

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Soviet Tactical Aircraft

Yefim Grodon & Dmitriy Komissarov HIKOI Publication

タイトル通りソ連戦術空軍について扱った著作である。時期的にはWW2終了直後からソ連崩壊まで、1946~1991年頃までの約半世紀におけるソ連戦術空軍の軌跡を扱っている。
本書の最大の魅力は多数掲載されている写真である。アフガンにおける戦場写真や冷戦初期の主力機(MiG-15/17、Su-7、Yak-28、Il-28等)は特に貴重である。またカラーで掲載されているソ連機の写真も魅力的で、本書を読むことによって「悪役」のイメージが定着しているソ連戦術機について新たな魅力を見つけることができるだろう。
本文内容も興味深い。例を上げれば、今では旧式機という烙印が押されているIl-28が出現当時は極めて期待された核攻撃機であったことや、冷戦初期におけるカムチャッカ半島沖でのMiG-15と米長距離偵察機(RB-29/WB-50等)との交戦、さらには亡命を図るクリバク1型フリゲート艦とYak-28との交戦等、日本では今まであまり広く知られていなかったことが紹介されている。アフガンでのソ連機とアフガンゲリラとの交戦記録も面白い。
値段がやや高め(日本版アマゾンなら\5,310)なのが難点だが、本書のボリュームを考えれば納得できる。日本語で同種の本を読もうと思えば、恐らく万単位の金額が必要となろう。

お奨め度★★★★

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世界の傑作機ツポレフTu-95/142ベア

文林堂

ターボプロップ4発の後退翼大型爆撃機というTu-95/142シリーズは、ソ連機の中でも異彩を放つ機体といえます。一見地味な機体ですが、フリートシリーズのゲームでは東側陣営における長距離偵察能力の主役であり、またトムクランシーの「レッドストームライジング」では大西洋戦争におけるソ連側航空攻撃力を支える重要な存在として描かれています。本書はベアシリーズの大型長距離爆撃機を主に技術的観点から記載した著作です。機体解説が中心で運用面での記述がややさびしい点が難点といえば難点です。

お奨め度★★★

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ソ連/ロシア巡洋艦建造史

アンドレイ・V・ポルトフ 海人社

ソ連/ロシアにおける巡洋艦の建造史を扱った著作。本書は主にロシア革命後に建造された巡洋艦に焦点を当てており、WW2戦前型であるスヴェドラーナ級、キーロフ級、チャパエフ級(完成はWW2戦後)、クロンシュタット級(未成)、スターリングラード級(未成)。戦後型ではスヴェルドロフ級、キンダ型、クレスタ1,2型、カーラ型、スラヴァ級、キーロフ級、未成原子力巡洋艦を取り扱っている。いずれもソ連/ロシア側の視点で記載されており、今まで西側ではあまり知られていなかった事例が紹介されている点は興味深い。ただ前作「ソ連/ロシア原潜建造史」程インパクトを感じることがなかったことも事実である。潜水艦という「閉ざされた世界」に比べると、水上艦の場合冷戦時代にあってもある程度ロシア側の事情を西側でも知り得ていたという事実が、両者の差となっているのかもしれない。

お奨め度★★★★

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ソビエトロシア戦車王国の系譜

古是三春 酣燈社

本屋で見つけて思わず衝動買いしてしまいました。面白かったです。
戦後におけるソビエト・ロシア戦車の開発経緯がわかりやすく書かれていました。以前に紹介したWAR MACHINE REPORT No.6とかぶる所が多かったですが、こちらの方が全般に読み応えがありました。
以下、興味深かった記述を紹介します。

核兵器に対する戦車の防御力

1950年代に核戦争の恐怖が現実味を帯びてきた時、旧ソビエトは現用戦車の核兵器に対する防御力を色々と調べてみたそうです。それによると改良されたT-55戦車の場合、キロトン級の核弾頭が300m以内で爆発した際にも無傷で生き残ることができるそうです。結構強いんだなあ。

腔内発射式対戦車ミサイル

ソビエト・ロシアは冷戦時代から腔内発射式対戦車ミサイルの開発に熱心でした。その最新型が9M119「レフレクス」(AT-11「スナイパー」)です。なんでも最大射程が5000mで、現用西側戦車のほぼ全てを撃破できる貫通能力を持っているそうです。今まで「腔内発射式対戦車ミサイル」というのは「オマケ」的な位置づけだと思っていたのですが、実はAPFSDS弾等の運動エネルギー弾を上回る威力を持っていたとは驚きです。

アクティブ防御システム

戦車を敵ミサイルの攻撃から守るシステム。敵ミサイルの飛来を探知すると、適当な場所で散弾を爆発させて敵ミサイルを無力化するものだそうです。腔内発射式対戦車ミサイルにしてもアクティブ防御システムにしても冷戦時代には殆ど知られていなかったようですが、もしこのような情報が伝わっていたら、1980年代に作られた戦車戦ゲームにおけるソ連製戦車の評価が少し変わっていたかもしれません。

お奨め度★★★

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WAR MACHINE REPORT No.6 ロシア軍MBT

PANZER臨時増刊

この「WAR MACHINE REPORT」シリーズは、時々「思わず買ってしまいたくなる」作品が出てきます。値段の割に内容が薄く、読み始めると1時間程で1冊を読み終えることができるシリーズなのですが、それでもテーマの魅力でつい手が出てしまうことがあります。
この「ロシア軍MBT」は、T-54/55から始まるソ連/ロシアの主力戦車開発史を辿ります。本書に登場するMBTはT-54/55、T-62、T-64、T-72、T-80、T-90と多彩で、これ一冊あれば戦後におけるソ連/ロシアの戦車開発の流れを抑えておくことができます。
戦車に詳しい人にとって本書を読んで新たな発見は望み薄かもしれません。しかし戦車に対する知識に乏しい私のような人間にとっては本書の記述内容は新鮮さに溢れていました。
本書を読んで面白かったことはソ連/ロシア各戦車の評価に関する記述です。特に我が国では「恐怖の代名詞」として語られていたT-72シリーズが実は性能の劣った二線級装備であったこと、あるいはソ連/ロシア戦車が対戦車ミサイル搭載とその防御に異常な努力を払っていたコトなど、今まで知られていなかったソ連/ロシア戦車に関する詳細な記述は、かつて「ソ連/ロシア原潜建造史」を読んだ時と同じ種類のゾクゾク感を感じました。
戦車に詳しい人、あるいは戦車に興味のない人にはお奨めできませんが、ソビエト/ロシア戦車について「ちょっと覗いてみようかな」と思っている人にお奨めしたい一品です。

お奨め度★★★

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