煙突から黒煙を吹き上げる「ソブレメンヌイ」級駆逐艦。本級の蒸気タービン機関は、本級の致命的な欠陥だったのか?
「ソブレメンヌイ」級駆逐艦
「ソブレメンヌイ」(Sovremenny)級駆逐艦。ロシアでは956型駆逐艦と呼ばれるこのクラスは、対空、対艦兵装に優れた汎用駆逐艦とされています。特にその搭載する対艦ミサイルSS-N-22「サンバーン」(ロシア名:3M80)は、高速かつ大威力の「優レモノ」とされていました。先日発売された「アジアンフリート」というボードゲームにおいても、「ソブレメンヌイ」級駆逐艦は中国海軍の中核を成す強力艦として扱われています。しかし、実はこの「ソブレメンヌイ」級駆逐艦。「欠陥品」という説が一部に流布されています。
例えば「世界の艦船」2007年6月号の中で「ロシア海軍通」として知られるアンドレイV.ポルトフ氏は、以下のような興味深い文章を残しています。
例えば「世界の艦船」2007年6月号の中で「ロシア海軍通」として知られるアンドレイV.ポルトフ氏は、以下のような興味深い文章を残しています。
956型(ソブレメンヌイSovremenny級)ミサイル駆逐艦は、ロシア国内では大失敗プロジェクトとしてよく知られている。というのも、機関をはじめ各種装備の故障件数が非常に多かったためだ。
果たして「ソブレメンヌイ」級が「強力艦」なのか。あるいは「欠陥艦」なのかは興味深い所です。上記ポルトフ氏の記事によれば、「ソブレメンヌイ」級の問題点は設計ミスではなく製造不良にあるとのこと。中国向けの艦は船体を再設計して完成させた艦であるので、オリジナル艦の欠陥はかなり是正されているのかも知れません。

「アジアンフリート」に登場する「ソブレメンヌイ」級駆逐艦「杭州」。対艦、対空火力に優れた有力艦として評価されています。
世界の欠陥艦
この「ソブレメンヌイ」級に限らず、世界には個艦性能の良否を越えた「欠陥艦」というものが存在しているようです。例えばナチスドイツ海軍の「ヒッパー」級重巡。広田厚司氏の「ドイツ海軍入門」によると、「ヒッパー」級は機関トラブルは悩まされて乗組員からの苦情が絶えなかったそうです。そういえば「ヒッパー」級の諸艦は「優秀」と言われている割には戦果は今ひとつの感があります。
米海軍の重巡「オレゴン・シティ」は、強力な「バルチモア」級重巡を改造した艦です。砲戦用重巡としては極めて優秀なカタログスペックを持つ同艦ですが、大塚好古氏の「世界の重巡洋艦パーフェクトガイド」によると、「オレゴン・シティ」は公試中に発覚した不具合のために公試終了前に予備役に編入され、遂に現役に復帰することなく除籍されてしまいました。ある意味「不幸な」経歴の艦ですね。
その点では我が帝国海軍。色々と言われることが多いのですが、致命的な欠陥艦がなかったということは誇っても良いかもしれません。