もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:ゲーム > 海戦ゲーム


41278498520_c96cf17a82_k

(Photo by U.S. Naval War Collage)

ウォーゲームといっても競技用のゲームではないウォーゲームの場合、サイコロを使わないウォーゲームは珍しくはない。なお、ここでいう「サイコロ」とは、サイコロに代表される乱数発生器のことである。従ってサイコロを使わなくとも、カードによって結果を判定するゲームや相手の手札が不確定要素になるカードゲーム等は、ここでは「サイコロを使わないウォーゲーム」とはしていない。

一般にサイコロを使わないプロユースのウォーゲームを、日本ではウォーゲームとは呼ばずに「交戦理論」とか「オペレーションズ・リサーチ」等と呼ぶ。しかし英語では、日本でいうORもウォーゲームと呼ぶ場合がある。

例えば有名なランチェスターの二次法則がある。これは例えば艦対艦の戦闘モデルとして使われることが多いが、これもウォーゲームの一種と呼べる。例えば以下のような命題。

 命題:同等の能力を持つ戦艦10隻と戦艦6隻が互いに全滅するまで戦った場合、その戦闘結果を予測せよ。

ここにランチェスターの二次法則を当てはめると、劣勢側が全滅するまで戦うと優勢側は約3隻を失う。そこに乱数の介在する余地はない。

ところで戦艦対戦艦のようなモデルは比較的シンプルなのでゲームとしてルール化しやすい。しかし空母戦はそんなに簡単には行かない。例えば以下のような命題を考えよう。

 命題:1942年の空母戦である。零戦12機、艦爆36機、艦攻36機からなる攻撃隊が、空母3隻からなる米機動部隊を攻撃した場合の戦闘結果を予測せよ。なおCAP機はF4Fワイルドキャット36機とする。

この命題に対して、2種類のウォーゲーム理論を使って検証してみたい。

1.How Carrier Fought方式

How Carrier Foughtは、以前に紹介した空母戦に関する著作である。本書には簡単なウォーゲームルールが紹介されている。そこでHow Carrier Foughtのルールを使って上記の命題を解いてみよう。
How Carrier Foughtで紹介されている戦闘モデルは、"Salvo Combat Model"と呼ばれる戦闘モデルである。これは艦対艦のミサイル戦を再現したウォーゲーム理論であり、米海軍で実際に使用されている戦闘モデルである。なお言うまでもないが、ここでは艦爆や艦攻が対艦ミサイルの代わりを担うことになる。

a) CAP機による戦闘
個々のCAP機は艦爆に対して20%、艦攻に対して40%の撃墜可能性を有する。護衛戦闘機の存在は、同じ機数のCAP機に対して効果があり、CAP機の効果を半減させる(撃墜率はそれぞれ10%、20%)になる。またCAP機と護衛戦闘機の被撃墜機は考慮しない。
このルールを上記の命題に当てはめると、F4F 36機のうち12機が護衛の零戦によって効果半減になる。F4Fが半数ずつ艦爆と艦攻に向かったとすると、艦爆3機、艦攻6機がCAP機の犠牲になる。

b) 対空火器による戦闘
1942年の戦闘では、対空砲火の役割は限定的であった。従ってここではその効果を無視する。

c) 航空攻撃
艦爆の命中率は10%、艦攻の命中率は5%とする。
このルールを今回のモデルに適用すると、爆弾3.4発、魚雷1.5発が命中する。

d) ダメージコントロール
空母1隻を撃沈するのに要する弾量は爆弾5発又は魚雷2発とする。
今回の結果に適用すると、空母1.43隻を撃沈できる。実際には1隻撃沈、1隻発着艦不能ぐらいだろう。

2.Midway Inquest方式

Midway Inquestについても以前に紹介した。ミッドウェー海戦を扱った興味深い著作である。本書の中でもウォーゲーム理論が紹介されていた。これは、先に紹介したHow Carrier Fought方式とはかなり異なっているので紹介したい。

a) CAP機による戦闘
護衛の零戦は1対1の割合でF4Fを追い払う。追い払われたF4Fの半数が零戦によって撃墜され、零戦はF4Fと2:3の交換比で損失する。
護衛の零戦を掻い潜ったF4Fは、1機につき艦爆1機、又は艦攻1.5機を撃退する。撃退された艦爆・艦攻の3/4が撃墜される。F4Fは艦爆相手に1:8、艦攻相手に1:12の交換比で損失する。
このルールを上記の命題に当てはめると、零戦とF4Fの交戦で4機の零戦と6機のF4Fが失われ、6機のF4Fが撃退される。残った24機のF4Fは半数ずつに分かれて艦爆艦攻を攻撃。艦爆は12機撃退(内9機撃墜)、艦攻は18機撃退(内13.5機撃墜)。F4Fは約2.2機を失う。

b) 対空火器による戦闘
空母1隻につき艦爆又は艦攻1機が撃墜される。
これを命題に当てはめると、空母3隻なので3機が失われる。ここでは艦爆1機、艦攻2機が対空砲火の犠牲になったとしよう。

c) 航空攻撃
艦爆の命中率は1/3、艦攻の命中率は1/5とする(この命中率は史実の日本軍のそれよりも良好だが、ミッドウェー海戦に参加したパイロットは「Aクラス」だったことを考慮した、としている)。
これを命題に当てはめると、艦爆23機が投弾し7.67発命中、艦攻16機が投弾し3.2発が命中、となる。

d) ダメージコントロール
250kg爆弾の打撃力を1ポイント、魚雷の打撃力を3ポイントする。ヨークタウン級空母は5ポイントの損害で作戦能力を失い、9ポイントの損害で沈没する。また空母3隻の場合、損失は3:2:1の割合で各艦に割り振られる。
これを今回の命題に当てはめると、米空母が被る打撃は17.27。計算を単純化するために18ポイントとすると、1隻が9ポイント、もう1隻が6ポイント、もう1隻が3ポイントの損害を被る。
これを実際の戦場に当てはめると、「ヨークタウン」が沈没又は沈没寸前、「ホーネット」が飛行甲板が破壊されて航空機運用不能、そして「幸運な」「エンタープライズ」は爆弾3発が命中したものの緊急修理により作戦行動可能、となる。
日本軍は零戦2機、艦爆10機、艦攻15.5機の計27.5機を失った。これは出撃機の約1/3に対する損害であった。

3.結論

如何であろうか。どちらのモデルが現実に近いだろうか。個人的にはMidway Inquestのモデルがより実際に近いように思うのだが、爆弾・魚雷の命中率をもう少し下方修正した方が良いかもしれない。ただ、かなり異なったルールを採用している2つのモデルが、戦闘結果については類似の結果になったことは興味深いことである。

無論ここで一番興味深いのは、「戦闘をモデル化しよう」という考え方である。実際の戦闘には運の要素が大きな役割を果たす。従って「サイコロを使わないウォーゲーム」を「リアルではない」として切り捨てることは容易だ。しかしゲームは所詮ゲームだ。ゲームそのものに現実を変える力はない。ゲームで勝つことで実戦に勝てるのであれば、イカサマサイコロを使うとか、無理矢理裁定(所謂「只今の命中弾は1/3とする」)を使ってゲーム上での勝利を演出すれば良い。しかし、いくらゲームで勝っていても実戦で勝てなければ無意味である。繰り返すが、ゲームそのものに現実を変える力はないから。

プロユースのウォーゲームの役割は「予言」ではなく「見積もり」である。予言と見積もりは違う。予言には必ずしも根拠は必要ないが、見積もりには根拠が必要だ。また不正確な予言は無意味だが、不正確な見積もりは必要悪でもある。何故なら見積もりは現実の結果をフィードバックすることによって精度を高めていくものだからだ。この「戦闘をモデル化する」という考え方について、日本海軍は米海軍に及ばなかったことは今更言うまでもない。

最後に米海軍大学校におけるウォーゲームに対する取り組みを紹介したい。彼らがウォーゲームを研究や学生教育のための重要な要素に位置付けていることが理解できよう。

秋のゲームマーケットに向けて鋭意準備中の水上戦ゲーム「ソロモン夜襲戦DX」ですが、カウンターシート案が完成しました。

写真1


当初は、シルエットの他には艦名と艦番号のみ表記の予定だったのですが、装甲厚、最大速度、さらには砲口径を追記しました。砲口径は小さいフォントなので読み取ることが難しいかもしれません。いずれにしてもデータは全てデータシートに記載されているので、カウンターの表記が読めなくてもプレイは可能です。

写真2


カウンターのサイズは12.5mm四方です。マップに合わせて少し小さめです。小さめにしたおかげで太平洋戦争に登場した日米英蘭豪の主要艦艇大半をユニット化できました。大型巡洋艦「アラスカ」「グアム」が活躍するシナリオを作ってみたいなぁ・・・。

写真3

写真00

以前に歴史群像2019年8月号付録である「マレー沖海戦」を紹介しました。今回はもう1本の「第2段作戦」をプレイしてみました。こちらは珊瑚海、ミッドウェー方面への日本軍の侵攻を扱った作品です。以下はその記録です。

第1Turn

序盤、日本軍は2隻の空母「翔鶴」「瑞鶴」を保有している。そこで「翔鶴」を珊瑚海エリア、「瑞鶴」をガダルカナルエリアに派遣した。このゲーム、戦闘システムがやや不思議なシステムになっていて、兵力集中が必ずしも有利ではない。例えば空母2隻と1隻が戦うと、2隻の側の方が通常多くの損害が出る。まあ2隻側の方が耐久力が大きいので、戦闘自体の勝率は高くなるのだが・・・。
珊瑚海に対する日本軍の進撃を察知した米軍は、「レキシントン」「ヨークタウン」の2隻を珊瑚海に派遣した。珊瑚海海戦。「翔鶴」1隻と米空母2隻の対決である。数的優位は連合軍側にあったが、先に書いた「奇怪な戦闘システム」が威力を発揮。「翔鶴」は殆ど無傷のまま米空母2隻を撃破し、日本軍が珊瑚海の制海権を握った。さらに「瑞鶴」もソロモン海を制圧する。

写真01a

写真01b

第2Turn

日本軍は「翔鶴」「瑞鶴」の2隻でMO作戦を発動し、ポートモレスピー攻略作戦を開始した。対する米軍は「ホーネット」を珊瑚海に派遣し、これを迎撃する。「奇襲」チットをつぎ込んで必勝を喫した日本軍であったが、肝心の「奇襲」チットがまさかの空振り。「翔鶴」「瑞鶴」の2艦も「ホーネット」艦載機の攻撃を受けていずれも中破して戦場離脱を余儀なくされる。「ホーネット」は小破どまり。第2次珊瑚海海戦(又はポートモレスピー沖海戦)は米軍の勝利に終わった。

写真02

第3Turn

南雲機動部隊に所属する「赤城」以下4隻の空母が増援として登場する。そこで日本軍は「赤城」「加賀」の2隻でFS作戦を実行。フィジー諸島攻略作戦を開始した。対する米軍は「エンタープライズ」「ホーネット」の2隻を迎撃に派遣する。フィジー沖海戦。米軍「奇襲」チットの効果もあって「赤城」「加賀」の2空母が中破。米軍は「エンタープライズ」中破、「ホーネット」小破。海戦は米軍の勝利に終わり、FS作戦は失敗に終わった。

写真03

第4Turn

日本軍は目先を変えて第2航空戦隊の「蒼龍」「飛龍」でニューカレドニア方面への攻略作戦を開始した。対する米軍は歴戦の「エンタープライズ」「ホーネット」を迎撃のために投入する。再び米軍の「奇襲」チットが使われた。しかし今回は日本軍は善戦。米空母2隻がいずれも中破したのに対し、日本軍は「蒼龍」中破、「飛龍」小破となり、初めて日本軍が空母戦に勝利した。ニューカレドニアに対する日本軍の攻略作戦も成功に終わる。

写真04

第5Turn

最早勝機の乏しい日本軍であったが、最後のあがきということで、再びMO作戦発動。「赤城」「翔鶴」「飛龍」の3空母をポートモレスピー近海に派遣した。対する米軍は「レキシントン」1隻でこれを迎え撃つ。海戦の結果は、「飛龍」が中破。「レキシントン」は一撃離脱で戦場を離脱していく。残った日本空母はポートモレスピーの連合軍基地航空兵力の制圧に失敗し、日本空母は後退していった。第2次MO作戦は失敗に終わった。

写真05

結果

日本軍:空母1中破、1小破(4VP)、ニューカレドニア占領(5VP)  合計9VP
米軍:空母1中破、4小破(6VP)、Hit&Run(14VP)  合計20VP
米軍の圧勝

感想

初心者向けゲームとしては良く出来ていると思う。中級者以上なら不満が残る内容だと思うが、仕方がない。元々初心者にターゲットを絞った内容なのだから。ただ米軍プレイヤーに殆ど選択の余地がない点が少し気になる。むしろ日本軍プレイヤー用のソロプレイ用ゲームとして纏めた方が良かったのではないかとも思える。

シミュレーションゲームとしてみた場合、兵力集中の原則が再現できないとか、空母戦らしくないとか、いろいろと不満を並べることも可能だが、不満ならもう別のゲームをプレイすれば良いだけのことである。様々な視点やレベルで歴史を再現できること。それこそがこのホビーの奥深さであり、魅力なのだから。

秋のゲームマーケットに向けて鋭意準備中の水上戦ゲーム「ソロモン夜襲戦DX」ですが、マップ案が完成しました。

今まではSSG/HJ「聯合艦隊」方式で変形A4マップ9枚としていましたが、今度の版では分割方式を止めて通常のスタンダードマップ1枚としました。理由は、ユーザー側のメリットとして取り回しを容易にしたこと。また制作側の事情としては価格低減と品質安定化です。

マップのデザイン変更に合わせて、一部シナリオで初期配置等を見直す必要が出てきました。

Map1

3
写真1


歴史群像2019年8月号には、2本の簡単なシミュレーションゲームが付録としてついています。1本は「第二段作戦」というタイトルで、日本軍によるポートモレスピーやミッドウェー方面への侵攻作戦とそれに対する米軍の迎撃を扱った2人用ゲームです。後者はマレー沖海戦をテーマとした1人用ゲームです。
まずは簡単な「マレー沖海戦」をプレイしてみました。これは日本航空部隊指揮官の立場になってプリンス・オブ・ウェールズとレパルスの撃沈を狙うゲームです。
第1海戦
捜索マーカーの出具合が面白くない。4ラウンドまで捜索して確度10まで引き上げた後、攻撃を実施。まずウェールズを集中攻撃。第5ラウンドにこれを撃沈。残ったレパルスも第6ラウンドには仕留めた。損害は水平爆撃隊1隊のみ。悪くない戦果だったが、評価判定のダイス目が悪くて評価D(低評価)。なんでやねん!。

第2海戦
今回は捜索マーカーの出具合は悪くなかった。第2ラウンドまでで既に確度8。欲張ってもう1ラウンド捜索したら確度13。これは楽勝と思ったが、そうは問屋が卸さない。序盤対空砲火でいきなり爆撃隊2ユニットが撃墜されるとさあ大変。何とか最終ラウンドギリギリで両艦を撃沈したが、またもや評価判定のダイス目に祟られて評価D(低評価)。なんでやねん!。

第3海戦
今回も捜索マーカーの出具合が良く、第2ラウンド終了時で確度が10になった。さあ攻撃。今回もいきなり高橋中隊と白井中隊がプリンス・オブ・ウェールズの対空砲火に食われて前途多難。しかし鹿屋空の雷撃が成功して速度の低下したウェールズがまず沈没。残ったレパルスも魚雷命中で速度の低下したところを爆撃機に狙われて第6ラウンドに沈没した。今回は評価判定のダイス目が悪くなく、評価B(成功)。やっとこれで出世の糸口を掴んだもりつち中将なのであった。

感想
慣れればセットアップ込みで10分以内でプレイできます。私も第3海戦では一々駒を並べないで、捜索マーカーをカップから引いて配置する方法にしました。これだとセットアップの手間が省けるので、プレイ時間短縮できます。
ゲームとしての出来具合を云々するのも何ですが、一応ちゃんと遊べます。「運のし」ゲームの面も無きにしも非ずですが、それはそれでありかな。雑誌付録ゲームとしては十分な内容と考えてよいのではないでしょうか。

↑このページのトップヘ