もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:戦史 > 太平洋戦争

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201029_日本軍はなぜ敗れたのか


なぜ日本軍は敗れるのか敗因21ヶ条

山本七平 角川

まずタイトルに注目して欲しい。「なぜ日本軍は敗れたのか」ではなく「なぜ日本軍は敗れるのか」である。一見小さな相違だが、これこそが本書の価値を示している。筆者は言う。戦後の人々は戦前と全く同じような思考図式の中にはまり込んでいる、と。わかりやすくいえば、戦前「非国民」という言葉は戦後「平和の敵」という言葉に置き換わっただけだと・・・。
本書で示されている敗因21ヶ条をここで列挙することはしない。しかし全ての言葉が当時の、否、現在における日本人の弱点を表しているのだと。筆者の掲げる21ヶ条を読んで、ナルホド、と万人が納得する言葉もある。「物量・物資・資源で問題にならないぐらい劣っていた」「電波兵器の劣等」「陸海軍の不協力」ふむふむ、尤もだ。しかし例えば「克己心の欠如」「個人として修養していない」「精神的に弱かった」「精兵がいない」と書けば、旧軍人あたりは反発してくるかもしれない。さらに「思想の不徹底」「日本文化がない」「生物的常識の欠如」「バアーシー海峡の損害」と書けば、あの戦争にそこそこ詳しい我々でさえ、「それが何で敗因なの?」と首を傾げるかもしれない。なぜこれらが敗因なのかは本書を読んで是非確かめて頂きたい。
「竹槍でB-29を落とす」と言えば、旧軍人たちでさえ笑うだろう。しかしそんな職業軍人たちが戦後になってもなお「戦艦同士で艦隊決戦をやれば戦争に勝てた」と言っているのは、「竹槍でB-29」と発想の根本部分で同質なのである。そのことにすら気づかず、気づかない人たちが戦争を指揮していた。それを冷ややかな目で見ていた当時少尉であった山本七平氏。階級の高い人物が階級相応の教養、知識、人格、腕力を持っていたら、軍事組織は堅牢であったろうし、そうではなかった日本軍は崩壊するしかなかった。確かに本書の筆者よりも階級が遥かに上だった旧軍人達が戦争について記した著作の多くが極めて浅薄な内容(特に人間観察という点において)であるのを見た時、結局日本軍は敗れるべくして敗れたのだと思わざるを得ない。
日本軍という軍事組織だけではなく、日本社会の問題点を鋭く抉った本書は、万人にお奨めできる名著である。

お奨め度★★★★★

4
201027_Battleship

Battleship Victory: Principles of Sea Power in the War in the Pacific

Rovert Lundgren Nimble Books

「太平洋戦争におけるシーパワーの原則」というサブタイトルの本書は、太平洋戦争における戦艦の役割を戦略論の立場から再評価しようとする内容である。筆者によれば「戦艦は戦争の全期間を通じて決定的な役割を果たし続けた」とし、戦争のターニングポイントは「第3次ソロモン海戦で米戦艦2隻が日本戦艦「霧島」を撃沈した瞬間である」としている。
また筆者は戦時中における日本海軍の戦略を批判し、山本五十六の戦略が日本海軍を敗北に導いたとしている。筆者の言葉を借りれば「日本は戦前から準備していた全ての計画を窓から投げ捨てて、殆ど航空戦力だけで戦争を戦った」とし、日本海軍は決して戦艦に固執していた訳ではなく、むしろ戦艦を捨てて空母や航空戦力に過度に依存したとしている。同様の批判は日本海軍にもあり、特に旧海軍の砲術関係者から発せらることが多い。
このように筆者は空母や航空戦力をあまり評価せず、それよりも戦艦の役割を高く評価する傾向が強い。「空母の航空戦力は全ての艦隊や機動群を破壊することはできず、その一方で空母自体は爆弾1~2発で破壊される脆弱な存在である」と筆者は述べている。
筆者の主張にはかなりクセがあり、全てに合意するのは難しいが、「まあそんな見方もあるのかな」という感じで一歩引いた視点から読んでみると興味深い。また欧米人の著作にしては日本側の事情に明るく(生麦事件や佐藤鉄太郎、樋端久利雄まで言及していたのには驚いた)、欧米人から見た日本海軍や日本人についてその一端を知ることができる。

お奨め度★★★★

4
201002_インパール

インパール

高木俊朗 文藝春秋

タイトルはインパールとなっているが、本書ではインパール作戦で南部からインパール進攻を狙った弓師団(第33師団)に焦点を当てて描いている。本書では戦場で日本軍が苦戦した様を師団長、連隊長、さらには前線の将校や兵士の立場から描いている。本書の見どころは戦場の悲惨な光景を赤裸々に描いている点で、飢餓と病気で死に絶えていく様は陰惨である。さらに「精鋭」と言われる日本陸軍にあっても実は様々な人物がいたこと。例えば戦場を避けて放浪する大隊長、味方から後方へ離脱して死体の肉を「牛肉」と称して飢えた兵隊に高価で売りつける増援部隊の兵隊など。「日本軍は精強だった」といういわゆる「仲間ボメ」を徹底的に否定している。その一方で本書は臆病と言われている第33師団長の柳田元三に対して好意的に評価している。
インパール作戦については様々な意見があり、本書もその1つであろう。従って本書の記述だけでインパール作戦の全てを論じるのは危険である。ただし本書はインパール作戦について非常に丹念に調べてあるので、一読の価値はある。続編についても是非読んでみたい。

お奨め度★★★★

200922_WorldWonderd

The World Wonder'd - What Really Happened Off Samar

Robert Lungren Nimble Book LLC

サブタイトル「What Really Happened Off Samar」(サマール島沖で本当に起こった事)で分かる通り、本書はサマール沖海戦について詳細に追った著作である。本書の白眉は、日本戦艦の砲撃に関する詳細な分析で、これまで「殆ど命中弾がなかった」とされている戦艦「大和」の砲撃についても新たな視点を提供している。本書の分析によれば、海戦開始時に「大和」が米空母「ホワイトプレーンズ」に対して実施した砲撃をして「戦艦の戦いの中で最も遠距離から命中を与えた事例」として賞賛し(実際には命中はなかったが、至近弾によって「ホワイトプレーンズ」は無視できない損害を被った)、さらに駆逐艦「ジョンストン」が雷撃実施直後に被弾した大口径砲弾についても、従来は「榛名」の14インチ砲弾とされていたが、筆者は入射角度から「大和」の18.1インチ砲弾であったとしている。このように本書は日本戦艦や巡洋艦の砲撃能力について比較的好意的な評価をしており、これまでの米側が描いたサマール沖海戦の戦史とはやや異なる印象を受ける。
本書では写真に基づいた詳細な分析を行っていることも特徴の一つで、「この着弾は大和の第3斉射目」とか「これは榛名の射撃」とか写真にキャプションをつけている様は爽快ですらある。
さらに本書の魅力は同海戦で米艦が被った詳細な被弾状況が示されていることである。先の「ホワイトプレーンズ」や「ジョンストン」は勿論、唯一の沈没空母である「ガンビアベイ」の被弾状況や多数の命中を受けて大破した「カリニンベイ」の被弾状況などは興味深い。
無論、本書の内容を全て鵜呑みにするのは危険であり、他の文献とのクロスチェックは必要であろう。しかし私の知る限りサマール沖海戦についてこれほど詳細に分析した著作は他にはない。そういった意味でも日米海戦に興味のある向きには必読書と言って良いだろう。

お奨め度★★★★★

3
1式陸攻

戦史叢書-海軍航空概史

防衛省戦史室

戦史叢書がいつでもどこでも無料で読めるようになったのは良いことだ。今回、海軍航空戦備の概要が知りたくなって読んでみた。戦前における統一空軍論(海軍は反対だったという)、戦時中における機材や搭乗員、装備などの装備状況、燃料状況など、普段余り目にすることのない情報に接することができて面白かった。
戦史叢書全般に通じることだが、旧軍人又はその関係者が書いた書籍だけに旧軍に対する評価は全般に甘めである。もう少し辛辣な評価があっても良かったのかなとも思う。そんな中でも日本海軍航空隊の教育上の問題点(狭義の術科に重点を置きすぎて、戦術眼などの総合的な能力を養う訓練には不熱心。攻撃偏重防御軽視など)についても書かれており、必ずしも「旧軍万歳」的な内容ばかりではない。
資料的な価値も高く、海軍航空史に興味があるのであれば、一読の価値はある。

お奨め度★★★

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