もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:戦史 > 太平洋戦争

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「太平洋戦史」は、2014年に国際通信社からコマンド・マガジンの別冊として発売されたSLGです。テーマは太平洋戦争で、1941年の真珠湾攻撃から1944年末のレイテ沖海戦までを1Turn=約半年、1ユニット=主力艦1隻+随伴艦艇というスケールで描いています。

今回、「太平洋戦史」のプレイ動画を作成してみました。
シンプルでかつダイナミックなゲーム展開をお楽しみいただければ幸いです。






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WaW87_表紙


Netherlands East Indies(以下、本作)は、米国Decision Games社が2022年に発表したSLGで、ゲーム付き雑誌シリーズのWorld at War誌第87号の付録ゲームだ。本作は日本軍による蘭印攻略戦を1Turn半月のスケールで描いている。ゲームシステムは2008年に発表されたRed Dragon Risingのシステムを採用している。

今回、本作を対面対戦することとなった。 最初の対戦では筆者が連合軍を担当してみたが、日本軍の怒涛の進撃を阻止できず、惨憺たる敗北を喫した。

2回目の対決

第1回目の対決は色々とルールミスがあった上、戦略的にも色々反省点があった。そこで筆者が連合軍の立場で再戦することになった。1回目の対戦ではボルネオの油田地帯を一気に占領されてしまったので、タラカンとバリクパパンにも守備隊を配置し、ボルネオでもある程度の抵抗を試みることにした。またジャワ島の3ヶ所、バタビア、チラチャプ、スラバヤにも均等に守備兵力を配置し、日本軍による上陸を阻止できる構えとした。

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第1Turn(1941年12月前半)

前回の対戦とは異なり、ボルネオに守備隊が配備されているので、日本軍も電撃的にボルネオを一気に占領するという訳にはいかない。日本軍はクチン、ミリ、ブルネイといったボルネオ北西岸を占領した。連合軍はボルネオ東岸のパレンバンとタラカンの油田爆破を試みたが、タラカンの爆破に失敗。バリクパパンのみ爆破に成功した。

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第2Turn(1941年12月後半)

日本軍はボルネオではなくスマトラのパレンバンに奇襲上陸を仕掛けてきた。パレンバンの守備隊は日本軍の攻撃を受けて壊滅。パレンバンは日本軍の手に落ちてしまう。しかし連合軍も黙ってはいない。バタビアに集結していたオランダ空軍がパレンバンに上陸した日本軍を攻撃する。航空機の援護を欠いた日本軍は連続爆撃を受けて壊滅。パレンバンの地は一時的に軍事的空白地帯となる。


写真09


第3Turn(1942年1月前半)

日本軍は直ちにパレンバンに増援部隊を派遣する。日本軍の航空部隊もパレンバンに進出してきたので、連合軍からパレンバンには手出しができなくなる。連合軍はジャワ島各地とバリ島に守備兵力を配置。守りを固める。またチラチャプの油田を爆破し、日本軍の上陸に備える。

写真10


第4Turn(1942年1月後半)

日本軍はスマトラ島に巨大な航空要塞を築き、航空兵力と地上部隊、さらには艦隊兵力を集結させていた。その意図がジャワ島侵攻にあるのは明らかである。対する連合軍も地上兵力を増強。主力はバタビア周辺に配置しつつも、チラチャプ、スラバヤ、そしてバリ島にも十分な兵力を配し、日本軍の上陸に備える。また空母「ラングレー」等によって増強されたABDA艦隊もバタビア近海に進出し、日本軍のジャワ島侵攻に備えていた。

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第5Turn(1942年2月前半)

南雲機動部隊がジャワ島近海に出現した。バタビア沖に集結中のABDA艦隊が南雲機動部隊の目標になる。空母「ラングレー」(この時期は空母ではなく水上機母艦として運用されていた筈だが、本作では空母扱いになっている)、重巡「ヒューストン」等が撃沈されてしまう。
また日本軍はボルネオで攻勢作戦を発動し、タラカンを占領した。

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第6Turn(1942年2月後半)

シンガポールが陥落した。ちなみにこのゲームでのシンガポール戦はイベント扱いになっていて、ダイス目によって進攻する。普通のダイス目なら第5Turn前後に陥落するのだが、今回は日本軍出目が少し悪かったようで、シンガポール陥落が少し遅れた。ちなみに極端なダイス目が続いた場合、ゲーム終盤までシンガポールが陥落しない可能性はある。逆に日本軍にとって良いダイス目が出た場合、最短の場合第3Turnにシンガポールが陥落することもある。
シンガポールを連合軍が確保していると、連合軍が実施できるアクション数が1Turnに1回分増加する。逆に日本軍がシンガポールを占領すると、日本軍が実施できるアクション数が1Turnに1回分増加する。もともと実施できるアクション数が多い日本軍はとにかく、アクション数が限られている連合軍にとってはシンガポールの占領はかなりダメージが大きい。

兵力に余裕の出てきた日本軍はボルネオ方面で侵攻作戦を実施。バリクパパンを占領し、ボルネオを一帯を日本軍が支配した。そして地上兵力をスマトラに移動。ジャワ進攻の構えを見せる。

[写真13]

第7Turn(1942年3月前半)

日本軍が狙いをつけたのは、ジャワ島の中で最も守りの手薄なチラチャプ地区である。前回のプレイでもチラチャプから上陸した日本軍がジャワ島一帯を支配したが、今回連合軍は守備戦力を強化しており、簡単には上陸できない。ちなみに本作の場合、上陸作戦で同じエリアの敵地上部隊を全滅させることができなかった場合、上陸部隊が全滅する。従って上陸作戦を行うためには、事前に敵の守備隊を十分に弱体化しなければならない。

敵地上部隊を弱体化するための方法としては、艦砲射撃と航空攻撃がある。両者を比較すると、艦砲射撃は比較的攻撃側に損害が出にくいが、打撃力自体も小さい。一方航空攻撃は打撃力自体は大きいが、対空砲火により損害を被る可能性が高い。

損得を勘案した日本軍は、水上部隊による艦砲射撃を選択。戦艦「金剛」を含む打撃部隊を編制し、チラチャプ近海に出撃させた。激しい艦砲射撃を行いオランダ軍守備隊を弱体化することには成功したものの、完全に排除することはできなかった。このままでは上陸作戦を実施するには危険すぎる。
どうする?。日本軍?
どうする?。今村中将?

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チラチャプ沖の日本艦隊を狙ってABDA艦隊が出撃。艦隊決戦を挑む。今回日本艦隊は空母を伴っていなかったので、ABDA艦隊が先制攻撃権を握った。オランダ潜水艦と米潜水艦の雷撃により戦艦「金剛」、重巡「妙高」を撃沈。この戦役が始まって以来、連合軍にとって初の大戦果が上がった(ちなみに、この時のダイス振りで、長年愛用していたダイスロール用ガラスケースが疲労破壊してしまった。ビックリしたなぁ)。練度に勝る日本艦隊の反撃でABDA艦隊も水上艦2ユニット、潜水艦1ユニットを失ったが、このチラチャプ沖海戦ではABDA艦隊が辛勝を収めた。

そして弱体化した日本艦隊に対してジャワ島各地を発進した連合軍爆撃隊が連続攻撃を加える。日本艦隊の対空砲火で連合軍爆撃機1ユニットが失われたが、連合軍爆撃隊は日本艦隊を壊滅させることに成功した。

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その後

チラチャプ沖海戦におけるABDA艦隊の勝利は、日本軍のジャワ島進攻の望みを打ち砕いた。その後日本軍はスマトラ島全域とセレベス島北部のメナドを空挺強襲で占領(史実通りだ)したが、それ以上占領地を広げられなかった。

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ゲーム終了時のVPを計算すると。日本軍は40VPを獲得した。これに両軍の損害によるVP増減を計算することになるが、こちらは計算していないので詳細は不明である。結構日本軍も損害を出していたので、ここでは-10VPとして計算すると、勝利レベルは日本軍の「実質的勝利」である。これは第1回目のプレイでの「戦域レベル勝利」に比べて1ランクダウンだが、それでも日本軍の勝利には違いがない。史実に比べて随分頑張ったように思うのだが、やはり連合軍にとって苦しいゲームであることは間違いないようだ。

感想

テーマ自体がマイナーであり、そういった意味では貴重な作品といえる。ただしシステムが相当抽象的なものなので、現実との対応付けという点では違和感がある。航空戦はまだしも、艦隊や地上部隊については局所集中の効果が効き過ぎて、特に1ヶ所に集結した大艦隊を攻撃側が叩くのは至難の技である。ABDA艦隊が日本側航空脅威の下で悠々と停泊しているのは、日本軍プレイヤーならずとも我慢ならない所だろう。

戦略的に見ても地理的な要因が殆ど考慮されておらず、攻撃側は相手の弱点を狙って進攻する。防御側は重点を決めて守りを固める以外に戦略的なオプションに乏しい。その一例として両軍にとって重要な筈の豪北からジャワ島へ至る海上交通路の保全が殆ど考慮されておらず、日本軍が実施したアンボンやティモールへの侵攻戦の戦略的意義が再現されていないのも寂しい。

逆に本作の優れた点は、ゲームとしてみた場合には結構色々な手が考えられる点である。先に「局所集中した艦隊は無敵だ」と書いたが、逆に日本軍としてはそうならないよう、先手を打ってABDA艦隊の早期排除を狙う手もある。また今回連合軍の潜水艦が大金星を上げたが、日本側にも潜水艦があり、それを有効活用すればABDA艦隊に打撃を与える可能性もある。とにかく陸海空の作戦を縦横無尽に駆使することができ、しかも作戦の自由度が高いのでフラストレーションが溜まる可能性も小さい。

「俺は蘭印作戦なんてどうでも良いんだ。戦艦、空母、飛行機、地上部隊を自由自在に操って敵をやっつけたい」

という楽しみ方なら、十分楽しめる作品だと思う。

ちなみに蘭印作戦については、現時点でも決定版と言える作品が出ていない状況であり、今後の新作に期待したい分野だ。



WaW87_表紙


Netherlands East Indies(以下、本作)は、米国Decision Games社が2022年に発表したSLGである。本作は、ゲーム付き雑誌シリーズのWorld at War誌第87号の付録ゲームで、World at Wat誌はWW2をテーマとしたゲームを毎回添付している。

本作のテーマは、太平洋戦争初期における日本軍によるオランダ領インドネシア(以下。蘭印)侵攻戦。ボルネオ、スマトラ、ジャワ、セルベス等の巨大な島々からなる蘭印は、当時世界有数の油田地帯である。日本が戦端を開いた目的の1つが蘭印油田確保による石油の安定供給確立にあった。

本作は日本軍による蘭印攻略戦を1Turn半月のスケールで描いている。ゲームシステムは2008年に発表されたRed Dragon Risingのシステムを採用している。これは、アクション実施を基本としたシステムで、毎Turn実行できるアクション数を決定し、アクション数だけ任意のアクションを実施する。アクションには、地上移動、海上移動、航空攻撃といったシンプルなものから、空挺降下、強襲上陸、艦砲射撃、統合作戦など特殊な内容のものもある。いずれにしてもアクション数の範囲内であれば、好きな内容のアクションを実施できるのが特徴である。

マップは8x12のマス目で区切られており、1マスの大きさは実際の400km四方に相当する。マップの範囲は、インドネシアの主要4島(ジャワ、ボルネオ、スマトラ、セレベス)は勿論、サイゴン、パラオ、西部ニューギニア、ダーウィンなども含まれている。ユニットのスケールは、大隊~師団規模の地上部隊、同型艦数隻からなる水上部隊、数十機の航空機、といった所か。

今回、本作を対面対戦することとなった。まずは筆者が連合軍を担当してみた。



最初の対決

レッドラシステムの特徴として、兵力を集中した方が圧倒的に有利になる、というものがある。攻撃側は移動スタックの大きさ制限があるので極端な兵力集中は難しいが、防御側は原則スタック制限なしなので、兵力集中によって攻撃側を圧倒することが可能だ。そこで今回連合軍は、スラバヤとパレンバンの2ヶ所を兵力集中ポイントと見極め、そこを要塞地帯とすることにした。

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しかし極端な後退配備と局所集中は早くも裏目に出る。第1Turn、日本軍がボルネオの各地を電撃侵攻。サラワク、ブルネイ、タラカン、バリクパパンといった油田地帯は、無傷のまま日本軍の手中に落ちてしまう。

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こりゃいかん。バリクパパンに進出した日本軍を叩くべく、スラバヤから発進したオランダ空軍機でバリクパパンへ空襲を仕掛けるも、戦闘機と防御砲火によって2ユニットを失い、攻撃は失敗に終わった。

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日本軍はポンティアナに巨大な航空要塞を築き、次の侵攻作戦の拠点とした。ちなみにポンティアナのエリアには飛行場がないためそもそも航空基地を展開することは不可能だったのだが、そのことに両軍プレイヤーが気づいたのはゲームが終わった後だった。

写真04


第4Turnにはシンガポールが陥落。ジャワ島中部のチラチャプに上陸。連合軍側の集中配備が仇となってチラチャプの防備は手薄であり、日本軍はチラチャプに橋頭保を築く。連合軍も艦隊を出撃させてチラチャプのインド洋側から艦砲射撃で日本軍地上部隊をかく乱する。

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その後チラチャプを拠点としてスラバヤ、バタビアを日本軍が次々と攻略。こうしてジャワ島一帯を手に入れた日本軍は、さらにスラバヤのパレンバンに上陸。スラバヤ一帯を制圧した所でゲーム終了となった。

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最終的に日本軍はボルネオ、ジャワ、スラバヤを制圧、セルベスやチモール一帯は連合軍が支配し続けている。ABDA艦隊もほぼ無傷で残存していたので、史実の連合軍に比べれば随分マシな状況だと思う。しかし勝利条件的には日本軍の戦域レベルの勝利。日本軍の決定的勝利の一歩手前という敗北であった。

つづく

20230820a_大東亜共榮圏01

Bonsai Games「大東亜共栄圏」は、A3サイズのマップ、50個のカウンター、24枚のカード、16ページのルールブックでアジア・太平洋戦争を再現するシミュレーション・ウォーゲームです。
コンポーネントを見ればわかるとおり、このゲームはミニゲームでありながら、外交戦をも含めたアジア・太平洋戦争全域を再現しようとした野心作です。しかもプレイ時間は1時間未満というシンプルさ。ウォーゲーム界の奇跡といえば、ほめ過ぎかな?

今回、このゲームのプレイ風景を動画にまとめました。






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230727_歴史群像

歴史群像2023年8月号

学研


特集はマリアナ沖海戦。これまで何度も取り上げられてきたテーマだが、今回は主に米側からみたマリアナ沖海戦について宮永忠将氏が解説している。これまであまり触れられなかった米海軍における飛行機乗りと非飛行機乗りの対立などにも触れ、米海軍はマリアナ戦で勝利するまでの過程を細かく解説している。
あと面白かったのはフランス空軍史。WW1では世界最強の空軍を築き上げたものの、WW2ではドイツの電撃戦を前に脆くも敗れ去ったフランス空軍の歴史とその敗因について古峰文三氏が鋭く解説している。
他にも熊本城攻防戦の後半、徳川と武田の戦いにおける高天神城攻防戦、ウクライナ戦争における作戦術など、興味深い記事が満載であった。

お奨め度★★★★



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