もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:戦史 > 太平洋戦争

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221124_世界の艦船

世界の艦船2021年5月号増刊-太平洋戦争の日本戦艦

海人社

太平洋戦争で戦った日本戦艦に関する写真と記事を集めた一冊である。写真と文章からなる内容だが、写真は全体の3割弱で、どちらかというと本文記事の方が多い。そういった意味では結構読み応えのある1冊である。
記事の内容は主に旧海軍軍人が書いた日本戦艦に関するもので、「世界の艦船」誌にかつて掲載された記事が中心である。昭和時代に書かれた記事が多く、現在の視点から見れば首を傾げるような内容も多いが、昭和時代の戦史研究の実態を知るという意味でも興味深い。一部で有名な黛治夫氏の「日本戦艦3倍命中率」を読めるのも現在では貴重であろう。黛氏以外の投稿者も日本戦艦の水上砲戦能力に高い評価を与えているのが特徴だが、戦史関係の記事については命中弾数の数値等でかなり日本海軍によって有利な見解が採用されている点は注意が必要である。

お奨め度★★★



SilentVictory01

太平洋戦争の潜水艦戦を扱ったソロプレイゲーム「Silent Victory」。
そのプレイ状況を動画にしました。
今回は前編です。




つづく

2
220901_太平洋戦争

太平洋戦争通説のウソ

彩図社

サブタイトル「最新研究でここまでわかった」とあるが、正直な所、「最新研究」という程でもないと思う。例えば米本土を日本機が爆撃した件などは、昭和時代から知られており、零戦無敵神話のウソ、3倍命中率のウソ等は、「何を今さら」といった感が否めない。さらに「中国大陸では日本軍は補給に苦しむことはなかった」等と書いているあたり、「どこが最新研究やねん」と突っ込みたくなる(「日本軍兵士-アジア・太平洋戦争の現実」吉田裕参照)。勿論本書に書かれてあることを「すべて俺は知っていたぜ」等と嘯くつもりは毛頭なく、国際関係や外交関係で新たな知見を得た面もある。しかし全般的には「新説と呼ぶほどではないことを殊更大袈裟に書いている」感は拭えず、Kindle Unlimitedで無料でなければ、読む価値のない書籍と思えた。

お奨め度★★

3

220630_SBDvsA6M

SBD Dauntless vs A6M Zero-Sen

Donald Nijboer Osprey

太平洋戦争の空戦について調べてみると、日本の戦闘機(特に零戦)が意外と爆撃機相手に苦戦しているのに気づく。それもB-17やB-24のような大型機ではなく、SBDドーントレスやTBFアヴェンジャーといった単発艦載機にも苦戦しているのだ。あの「サムライ」サカイが危うく命を落としかけたのもSBDドーントレス編隊との空中戦であった。
本書では、太平洋戦争におけるSBDドーントレスと零式艦上戦闘機の対決にスコープをあてて、その実態を両軍の史料資料を基に分析した作品である。米軍側の史料だけではなく日本側の資料にもあたっているので、比較的精度は高いと言えよう。
両者の対決がどのようなものだったかは本書を読んでいただくとして、その意外な結果に読者は驚くかもしれない。

お奨め度★★★

写真00


「真珠湾強襲」(以下、本作)は、2011年にGame Journal#39の付録ゲームとして発表されたシミュレーション・ウォーゲームだ。テーマは1941年12月に開始される太平洋戦争。3年8ヶ月に及ぶ太平洋戦争を1Turn4ヶ月、計11Turnで再現する。

本作のシステムについては 以前の記事で紹介したので 、参照されたい。

今回、シナリオ4「第2ターンからのキャンペーン」を対人戦でプレイすることになった。このシナリオは文字通り第2ターンからのキャンペーンシナリオで、1942年1~2月頃の状況からゲーム開始となる。
日本軍はマレー半島、フィリピンへの上陸には成功しているが、シンガポール、マニラ等は未だに連合軍が押さえている状況だ。日本軍としては東南アジア一帯を速やかに占領して長期不敗態勢を固めると共に、インド、南東太平洋、ハワイ方面といった連合軍の枢要地域に侵攻作戦を行って勝利を確実なものにしたい。
一方の連合軍は日本軍によるサドンデス勝利を阻みつつ、反攻の糸口を捉えて日本軍に打撃を与えたい。

今回、私は連合軍を担当した。

2Turn



写真01


JP_AF台南まず日本軍は東南アジア一帯を支配下に収めようとする。地上部隊の攻撃によりマニラ、シンガポールを相次いで占領。スラバヤに対しては「急襲作戦」を仕掛けて電撃戦でこれを占領した。ビルマ方面では、日本軍2個師団がラングーンに前進を果たしたが、同地を占領するには至らず。さらにガダルカナルは2個旅団を投入したが、これまた占領には至らない。

写真02


このTurn、日本軍はマニラ、シンガポール(各5VP)、スラバヤ(2VP)の計12VPを獲得し、VPの総量は19VPとなった。

写真03


3Turn

JP_BG川口アメリカ西海岸から米空母機動部隊が出動し、ソロモン諸島南東海域に進出する。米空母から発進した艦載機がガダルカナルの日本軍に対して激しい空襲を加えてこれを制圧するも、日本軍は不屈の精神(単に「補給」カードを使用しただけ)で復活。「急襲作戦」でガダルカナルを守る米軍部隊を撃破し、同地を占領した。

写真04


ビルマ方面では日本軍が航空部隊の支援の元、ラングーンを連続攻撃し、遂にラングーン占領を果たした。他にレイテを日本軍部隊が無血占領している。

このTurn、日本軍はガダルカナル、ラングーン、レイテ(各2VP)の計6VPを獲得し、VPの総量は25VPとなった。他にボーナス1VPがあるので、サドンデス勝利まであと4VPである。

写真05


4Turn



写真06


JP_CV飛龍蒼龍南太平洋で日米の機動部隊が激突した。「空母機動部隊」によって先制攻撃をかけてきた日本機動部隊に対し、米機動部隊は「迎撃機」で反撃。激しい戦いにより日本軍は空母「隼鷹/飛鷹」が沈没、「飛龍/蒼龍」が中破する。一方米機動部隊も空母「ホーネット/ワスプ」が沈没。空母同士の戦いは痛み分けに終わった。
その間、ガダルカナルには米海兵隊2個師団が上陸。同島の奪回を図るも、日本軍守備隊の奮戦によってこれを撃破するには至らず。

写真07


ビルマ戦線では英東洋艦隊が出撃し、ベンガル湾に進出して制海権を握る。英軍2個師団が、英東洋艦隊と航空兵力の援護の下、ラングーンに反攻作戦を実施。「急襲作戦」によって日本軍を撃破し、ラングーン奪回に成功した。

写真08


このTurn、連合軍がラングーン(2VP)を奪回し、日本軍のVPの総量は23VPに減少した。

写真09


5Turn

日本軍はラングーン奪回のため航空兵力を地上兵力を投入したが、英軍も2個師団を投入し、ラングーンを守り切った。

US_AF南東太平洋方面では、ガダルカナルで日米両軍の睨み合いが続く中、珊瑚海に米機動部隊が進出する。米機動部隊の攻撃によってラバウルの日本軍基地航空部隊が一掃されたため、日本軍は慌てて地上部隊をラバウルに送り込んだ。一方日本軍も空母機動部隊をソロモン海に送り込み、空母機の攻撃で米空母「エンタープライズ/ヨークタウン」を撃沈することに成功する。

米軍はニューギニア北東岸のラエに陸軍2個師団と航空部隊を進出させ、その攻撃によりトラック島に展開する日本軍の航空部隊を撃破した。

写真10


このTurn、VPに変化はなく、日本軍のVPの総量は23VPのままである。

写真11


6Turn

US_CVエセックスバンカーヒル米艦隊の一部がダンビール海峡を越えてビスマルク海に進出。同地の制海権を米軍が確保した。さらに新鋭空母「エセックス/バンカーヒル」、インデペンデンス級軽空母2ユニット(4隻)が艦隊に加わり、珊瑚海に進出。ベテランの空母「サラトガ/レキシントン」と合流する。南太平洋で三度日米の機動部隊が激突。先手を取った米機動部隊は空母「翔鶴/瑞鶴」を撃沈し、ベテラン「赤城/加賀」も艦載機を失ったので日本本土へ後退していった。

トラック島が危ない。
US_DV1MD日本軍はトラック島に1個旅団を送り込んで守りを固める。連合軍は「急襲作戦」を利用して海兵師団1個にてトラック島を攻撃。日本軍の守備隊を撃破してトラックを占領した。

写真12


この時点で日本軍のVP総量は21VPに減少。日本軍は勝利の望みを失ったと判断し、ゲーム終了となった。

プレイ時間=3~4時間

写真13


感想

JP_CV赤城加賀ルールは簡単だが、意外なほど歴史的に忠実な展開になる。ソロモン諸島や東部ニューギニアでVPの高い地域が集まっているため、必然的に同方面が激戦地になる。現実の戦略的な価値を考えた時、ソロモン諸島や東部ニューギニアに高い戦略的価値があったかどうかは疑問だが、ゲーム展開を歴史に忠実になるように誘導するという観点からは有効なデザイン手法と言える。
ルールが簡単な太平洋戦争キャンペーンゲームとして、「太平洋戦史」や「Victory in the Pacific」等があるが、これらの作品に比べると、本作の展開は比較的「大人しい」ものと言える。また上記2作品では陸軍の存在がかなり抽象的に扱われているが、本作では米海兵隊や日本海軍の小規模部隊(一木支隊、川口支隊、南海支隊等)の有用性がしっかりと再現されているので、嬉しい所だ。
本作で気になる所はカードの使い方で、この点についてはある程度の経験値が必要になるだろう。とはいえ一度プレイすればコツが掴めるレベルのものなので、致命的な欠点という訳ではない。
総じていえば、本作はゲーム性やシミュレーション性の両面から万人にお奨めできる太平洋戦争キャンペーンゲームといえる。既に発売から10年近くが経過しているが、豪華版という形で再販が望まれる作品だ。


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