もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ: 読書

5
200909_汝2つの祖国に巡ず

汝、ふたつの故国に殉ず

門田隆将 角川文庫

日本人の父と台湾出身の母を持ち、日本統治下の台湾台南で生まれた坂井徳章(さかいとくしょう、台湾名=湯徳章)の半生を描いたノンフィクションである。本書は40歳の若さでこの世を去った徳章の凄まじいまでの正義感と行動力が描かれている。彼は日本人との側面も持ちながら日本統治時代の日本人と台湾人の格差に疑問を持ち、台湾で人権を確立するために弁護士になる。しかし太平洋戦争後の1947年に起こった二二八事件で中国国民党から事件の首謀者に仕立てられ、苛烈な拷問の末、台南市で公開処刑に処された。しかし徳章の凄まじい生き方と正義感は伝説になり、事件から約50年後の1998年に、当時の台南市長は徳章が最期を遂げた台南市民生緑園を「湯徳章紀念公園」と命名した。さらに徳章の命日である3月13日を台南市では「正義と勇気の紀念日」に制定した。
本書は様々な意味で読みどころの多い作品だが、特に二二八事件が発生してからの徳章が最期を迎えるまでの描写、さらに事件後の描写は涙なしには読めない。これほど男らしい人がいただろうか。日本人・台湾人の枠を超えて徳章の生き様に圧倒される思いがする。
日本と台湾の歴史や現在の東アジア情勢について考える際には極めて有益なノンフィクションだろう。読み物としても優れた作品であり、万人にお勧めしたい。

お奨め度★★★★★


湯德章律師

(Photo by Wikipedia)

200816_空気の研究

「空気」の研究

山本七平 文春文庫

ここでいう「空気」とは、窒素、酸素等からなる我々が普段呼吸している「空気」、ではもちろんなく、「場の空気」のことである。筆者は戦艦大和の沖縄出撃や対米開戦決定等(他にイタイイタイ病や日中国交正常化のことも触れていた)でなぜ合理的な決定が採用されずに一見愚かに見える決定がなされていたのか。筆者はそれを「空気」の影響とし、この「空気」が日本社会に占める役割の大きさに言及している。
筆者はその後、空気の正体を分析し、それを歴史的な観点や宗教的な観点から論じているが、正直な所難解であり私にはあまり理解できなかった。機会を見て再読してみたいが、果たして理解できるかどうか・・・。
筆者の見解を正確に理解できる人物にとっては有益な内容と思われるが、私のような人物にとってはまさに「猫に小判」かもしれない。

お奨め度★★★

4
200805_山と渓谷

山と渓谷2020年8月号

特集は「日本アルプス縦走プラン」。縦走とはいわゆるピストン登山の対になる概念である。つまり往路と復路が異なるルートを辿る登山の事と思えば良い。特にアルプスのような広大な山域での縦走んは、単なるピークハントとは異なる魅力がある。
本書には数多くの縦走路が紹介されており、そのいずれもが山の魅力を感じさせてくれるコースだ。ただ残念なことに今年(2020年)は新型コロナの影響でそのうちのいくつかのルートが事実上登山不可能になっている。特に南アルプスはほぼ全滅と言って良い。折角良い記事が多いのに残念である。
もう1つの特集がロープワーク。ボウリン・ノットやフィッシャーマンズ・ベントといった基礎的な結び方が紹介されているのは嬉しい。
今回は全般的に読む所の多い内容だった。

お奨め度★★★★

3
200627_西南戦争

西南戦争

小川原正道 中公新書

西南戦争に関する著作で、征韓論に敗れた西郷隆盛の下野から始まり、私学校の設立、西郷暗殺計画と挙兵、西南戦争とその終結、そして西南戦争後の旧薩摩藩士たちの活動雄描いてる。西南戦争について可もなく不可もなく整理した著作といえよう。新たな発見はあまりなかったが、西南戦争について整理された著作であり、西南戦争入門用の著作としては好適である。

お奨め度★★★

4
200719_TheGermanFleet

The Gaeman Fleet At War, 1939-1945

Vincent P.O'Hara Naval Institute Press

ドイツ海軍水上部隊の活躍は一部大型水上艦(ビスマルク、シュペー、シャルンホルスト等)を除いて伝わっておらず、駆逐艦や水雷艇は殆ど活躍していないような印象もある(例えばナルヴィク沖では英戦艦「ウォースパイト」に10隻まとめて沈められた等)。しかし実際にドイツ海軍はWW2期において連合軍と実に69回もの水上戦闘を戦っていたのだ(Eボートや仮装巡洋艦のみによる海戦は含まず、両陣営に500トン以上の専用水上戦闘艦が参加しているもののみ)。その数値はイタリア海軍はおろか、日本海軍や米海軍すらも上回る回数であった。WW2においてドイツ海軍を上回る回数の水上戦闘を体験したのは、イギリス海軍だけであった。
本書はドイツ海軍が体験した69回の水上戦闘をそれぞれ要領よくまとめた著作である。取り上げた海戦の中には、有名なビスマルク追撃戦やラプラタ沖海戦、北岬沖海戦等の他、ドイツ海軍の戦いの多数を占めている駆逐艦、水雷艇、掃海艇等が主力として戦った小規模海戦が多数収められている。例えば1943年英仏海峡では少なくとも5回に渡って英独の水上戦闘が戦われたが、その中には水雷艇5隻のドイツ艦隊(第4水雷戦隊)が巡洋艦を含む英艦隊と戦い、巡洋艦を撃沈して勝利した10月23日の海戦等も含まれている。
知られているようであまり知られていないWW2におけるドイツ水上部隊。その活躍を概括的に把握するためには良い著作である。

お奨め度★★★★

↑このページのトップヘ