もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ: 読書

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220824_ソ連帝国の崩壊

ソビエト帝国の崩壊-瀕死の熊が世界であがく

小室直樹 光文社

本書は1980年に初版が発売された書籍だ。本書の凄い所は、1980年という段階でソ連の崩壊を見事に予言している点にある。今でこそソ連の崩壊は歴史的事実だが、1980年の段階で世界最強の国家であるソビエト連邦が崩壊すると予想する人間は殆どなかった。事実、1980年代のテレビアニメ等では、21世紀になっても米ソ両大国による対立構図が続いているという図式が多く見られた。
本書では階級論や組織論、そして経済の観点から当時のソビエト連邦が断末魔の状態にあることを見事に看過している。そしてこれらの矛盾が噴出した時、ソ連が崩壊するとしている。結果を知っている我々が本書を評価するのは些かズルいような気もするが、逆に後知恵でも凄さを感じるのが本書の凄さだ。
さらに本書の凄いのは単なる未来予測に留まらない点だ。本書は当時の日本における安全保障政策に鋭い批判を加えている。筆者の主張が、当時と異なる安全保障環境下にある現在の日本に当てはめても、十分に首肯できるものだ。
現在の視点で見れば歴史に対する認識等でやや「古い」と思える記述も伺えるが、それでもソ連の崩壊という予言を見事に的中させたという点で本書の価値は大きい。

お奨め度★★★★

3

220819_LeanとDevOps

LeanとDevOpsの科学

Nicole Forsgren Ph.D他/武舎広幸・武舎るみ訳 インプレス

ソフトウェア開発組織の成熟度を示す指標としてCMMIがある。今でもCMMIは有益だと評価されているが、変化の激しい現在のシステム開発環境において、CMMIは過度に「官僚的」であるという批判もある。本書は、現在のソフトウェア開発環境に適合した組織とは何かという点に着目し、そのための望ましい尺度や望ましい組織の姿について考察した著作である。本書によれば、継続的デリバリこそがソフトウェア開発組織における「勝ち組」に求められる共通の項目であり、そのための手段として包括的な攻勢管理、継続的インテグレーション、継続的テストを実現する仕組みが必要であるとしている。
現実のソフトウェア開発の世界で本書の唱える考え方が実現できる企業はそれほど多くはないと思われるが、本書で提唱されている考え方がソフトウェア開発企業の生き残り戦略として有益なものであることは否定できないだろう。

お奨め度★★★

3
220814_リベラルの正体

「リベラル」の正体

茂木誠/朝香豊 WAC

日本で「リベラル」といえば、左派勢力を指す場合が多い。しかしこれはおかしな話だ。リベラリズムとは自由主義と訳されるが、日本でいう「リベラル」には、自由主義とは全く相容れない共産党が含まれているからだ。
それはさておき、本書では、日本で言う「リベラル」な人たちが、どのような考えを持っているのか。そして彼らは保守勢力をどのように捉え、どのように嫌悪しているのかを記した著作である。
さらに本書では、共産主義が形を変えていまでも世界を蝕んでいる有様を語っている。なるほど、旧ソ連は崩壊し、共産主義陣営は自由主義陣営に敗れた。しかし共産主義そのものは、ある時は人権運動に姿を変えて、またある時は環境保護運動に姿を変えて、今でも自由主義社会を蝕んでいる。そして自由主義の総本山であるアメリカ合衆国も、今やこのような「隠れ共産主義」によって瀕死の状態にあるという。
本書の主張をどのように受け取るのかは読者次第だろう。かくいう私も本書で書かれていることをそのまま額面通りに受け取るつもりはない。しかし昨今の世界情勢を見た時、本書の主張があながち絵空事でもないな、とは思っている。

お奨め度★★★

3
220726_WW1海戦

第一次世界大戦大海戦史

柳橋海人 ダイアプレス

第1次世界大戦における海戦史をムック形式で整理した著作。第1次世界大戦の主要な海戦であるフォークランド沖海戦、ドッカーバンク海戦、ジュトランド海戦等は網羅されており、コロネル島沖海戦、ヘリゴランド・バイト海、さらにトルコ巡洋戦艦「ヤウズ・セリム」(旧ドイツ巡戦「ゲーベン」)の活躍も描かれている。ボリュームがそれほど大きくない本なのでディテールはあまり詳しくないが、WW1の海戦について一通り網羅していると言える。

お奨め度★★★

3
220808_小隊

小隊

砂川文次 文藝春秋

1990年生まれの元自衛官が書いた現在兵士の物語。3編の小編からなり、主人公はいずれも自衛官又は元自衛官である。舞台は、ロシア軍の侵攻に晒された根室~釧路地区で遅退戦闘を行う陸自第5旅団。イラク又はアフガニスタンに派遣された元自衛官の傭兵が行う警固任務。そして最後は自衛官の監部候補生達が経験する過酷な行軍演習である。いずれも主人公は前線に立つ1人の下級指揮官であり、彼らの目から見た「戦場」の赤裸々な姿が描かれている。
個人的に一番面白かったのは、表題作「小隊」で、現代戦の猛烈な火力戦闘に巻き込まれた主人公達の葛藤や苦しみがリアルに再現されている。小隊規模の歩兵戦闘がどのような形で行われているか、そしてその中で個々の幹部や曹士たちがどのように考え、行動したのかが克明に描かれている。
他の2作品は、より主人公の内面に入っていくような作品である。ちゃんと「読める」人には面白い作品だとは思うが、字面を丹念に追いかけるのがやや苦手な私にのっとては、やや面倒臭く感じる作品であった。

お奨め度★★★

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