もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ: 読書

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240210_OperationPrdestal

Operation Pedestal 1942

Angus Konstam Osprey

OspreyのCampaign(戦役)シリーズの1作品。1942年8月のマルタ島物資輸送作戦である「ペデスタル作戦」を描いている。オスプレイ作品の通例として、戦いの背景や戦略目標、両軍の兵力や部隊配置がコンパクトにまとめられており、非常に読みやすい。使われている英文も平易なので、電子書籍の翻訳機能を併用すれば、苦も無く大意をつかむことができる。ページ数は決して多くはないもの、要領の良い記述となっており、資料性もそこそこ高い。唯一の難点は値段がやや高いところか。

お奨め度★★★★

Operation Pedestal 1942: The Battle for Malta窶冱 Lifeline (Campaign Book 394) (English Edition)


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240207_がん治療

最高のがん治療

津川友介/勝俣範之/大須賀覚 ダイヤモンド社

「がん」。我々の世代にとっては最も現実的な「脅威」である。現時点で日本人の死因の第1位は「がん」であり、今や「二人に一人」は「がん」になると言われている。
本書は、がん治療の専門家が、最高のがん治療について紹介している著作である。筆者らが言う「最高のがん治療」とは、「標準治療」。つまり「保険が適用される普通の治療」である。保険が適用されるということは、高額医療費補助も適用されるので、高額医療費控除が適用される。つまり、「最高のがん治療」とは「最もお金のかからない治療」なのである。本書では、なぜ「標準治療」が「最高のがん治療」になるかを実例を挙げて説明している。本書を読めば、仮に「がん」と診断されても、怪しげな高額治療のカモにされる危険は多いに低減することができよう。万人にお奨めしたい著作である。
ちなみに私は本書の読んだ後、がん保険を解約した。

240206_JWing

J-Wings 2024年2月

イカロス出版


少し軽めの航空雑誌J-Wings。今回の特集は、洋上戦力としての空母と艦載機。海上自衛隊待望の軽空母「かが」がいよいよ実現が見えてきた中、現代の世界各国の空母とその艦載機を多角的にとらえている。元々が軽めの雑誌なので記事もあまり突っ込んだ内容はないが、それでも空母「キティホーク」がコマンド空母として運用されたことや、無人艦上機の最新事情等、興味深い記事もいくつかある。他には築城基地の航空祭情報(空自に女性のファイターパイロットがいたとは・・・)、海自徳島航空基地一般公開の情報等の他、F-22/F-35用の小型誘導徹甲爆弾SDBの情報、シドラ湾事件、フェアリースピアフィッシュの記事などは面白かった。

お奨め度★★★

J Wings (ジェイウイング) 2024年2月号[雑誌]-洋上戦力としての空母と艦載機
J Wings (ジェイウイング) 2024年1月号[雑誌]-F-16解体新書
J Wing (ジェイウイング) 2023年6月号[雑誌]-待ってろ!航空祭
J Wings (ジェイウイング) 2023年3月号[雑誌]-戦闘機の世代図鑑
J Wings (ジェイウイング) 2022年10月号[雑誌]-NATOの翼


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240116_なぜサイゼリア

なぜ星付きシェフの僕がサイゼリアでバイトするのか

村山太一 飛鳥新社

本書で書かれていることは、個人と組織が成功するためのノウハウである。個人レベルで筆者が主張するのは「サバンナ思考」と「マヨネーズ理論」だ。サバンナ思考とは、強烈な危機意識を持ち、一つでも多くの事に気づき、素早く行動することである。またマヨネーズ理論というのは、自己流では行わず、一流のやり方を徹底的にマネする方法である。いずれも首肯できるが、なかなか実行できないこと。サバンナ思考で行動するほどの危機感を持ち続けることは難しいし、マヨネーズ理論はプライドが邪魔をする。そういうことを言っている間はダメなんだろうな。
さらに本書の凄い所は、個人レベルでのノウハウ本に留まらないことだ。筆者は個人レベルでは星付きレストランのシェフとして成功しながらも、チームとして成功していないことに忸怩たる思いを持つ。そこで筆者はレストランチェーンのサイゼリアでバイトすることを選ぶ。彼はそこでサイゼリア流の優れた組織マネジメントを知り、愕然とする。高校生アルバイトを含むチームながら、彼らの能力を上手く引き出し、組織としての能力を発揮しているサイゼリア。そして収益の面では、サイゼリアが高価格帯レストランの優に2倍以上の時間生産性を発揮していることに愕然とする。そして筆者は、組織を成功させる秘訣が構成員の「幸せ」を追求することにあったことを知る。
非常にわかりやすい本だけど得る所の多い著作で、特に個人レベルや組織レベルでの処世術について大いに参考になった。


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恐れのない組織

エイミー・C・エドモンドソン/野津智子訳 英治出版

240112_恐れのない組織

心理的安全性という言葉が注目されている。昨今話題のハラスメントという言葉と似たような文脈で語られることが多いが、本書を読めば心理的安全性とハラスメントは全く異なる概念であることがわかる。
心理的安全性とは、エンゲージメント向上が主目的ではなく、むしろ組織の生産性向上やイノベーション創造のための不可欠の手段としてとらえる必要がある。VUCAの時代と呼ばれる不確実で変化の激しい世界においては、組織は常に変化し、新たな試みに挑戦する必要がある。しかしそのためには数多くのアイデアを出し、様々な立場から多様な意見をぶつけ合う必要がある。そのために欠かせない背景が心理的安全性なのだ。

「私はこの中で何を言っても許される」

その安心感がなければ人は組織の中で積極的に発言しようとしない。むしろリスクを回避しようと沈黙を選ぶだろう。思い出してほしい。かつての日本軍が「空気」という沈黙を重視し、そのためいかに数多くの学びの機会を失ってきたかを。ミッドウェー海戦しかり、沖縄戦しかり。
本書は、心理的安全性の本質を理解し、組織の中で活用していくために極めて良質な著作といえる。


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