もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 戦史

230324_黒騎士物語

黒騎士物語

小林源文 日本出版社

かつてHobby Japanに連載され、今でもミリオタ界隈ではバイブルともいうべき漫画である。ストーリーは1943年秋、ロシア南部の名もない村から始まる。第8戦車中隊、別名「黒騎士中隊」。10両前後の戦車を保有するその戦車中隊とその将校、兵士達が物語の主役だ。ストーリーは地獄のような東部戦線での黒騎士中隊の戦いを追う形で進められていく。圧倒的な兵力を持つ敵軍、理不尽な上官、戦意の疑わしい友軍等、様々な困難に直面する黒騎士達の運命や如何に・・・。
ミリオタ界隈では評価の高い作品だが、正直な所、絵の質は高いとは言えない。例えば新谷かおる氏の戦闘場面と比べると、場面の描写が分かりにくいのだ。キャラクターの顔も特徴がなく、主人公のバウアー中尉にしても隻眼だから目立つだけ。それがなければ他のキャラクターと区別がつかなかっただろう。
本作が氏の作品群の中でも際立って有名なのは、主人公の「わかりやすさ」が際立っていたから、というのは言い過ぎだろうか?。
とはいえ、そんなウンチク話ができるのも、本書の魅力の1つともいえる。

お奨め度★★★★




4

230324_歴史群像

歴史群像2022年4月号

学研

特集は「海上護衛戦」。大東亜戦争時における日本海軍による海上護衛戦について、長南政義氏が分析している。海上護衛戦という性格上、個別の戦いではなく全体を追う形になっているのは仕方がない所。どちらかと言えば大井篤氏の「海上護衛戦」に対する再検証という内容が主になっている。大井氏の著作が現在に我が国における海上護衛戦のイメージの土台になっているは否めないので、そういった意味において今回のような記事は価値が高いと言えよう。ただ、そこで語られている結論は、通説から大きく離れたものではないことは、通説の正しさを改めて実証したとも言えそうだが・・・。
また特集記事に対比する形で書かれた「アメリカ海軍潜水艦の戦い」(神野英雄氏)も面白い。写真が中心で文章が少ないので、概要的な記事なのは否めないが、特集記事と合わせてこういった記事の載せる所が「歴史群像誌」の上手い所だろう。
他には、前号がの続きとなっている有坂純氏によるウクライナ戦争の分析記事も面白い。現在進行中の時事ネタをランチェスター理論を用いて分析するという内容だが、納得感はとにかく「なるほど、こういった考え方もあるのか」という知的興味を満足させてくれる内容であった。
日本軍機に関する記事が得意な古峰文三氏は、今回は日本兵器の部品互換性というテーマに挑戦。「基礎工業力の低さ」という一言で語られがちな旧日本軍の兵器生産技術について氏がどのように分析したのがが見所。
今回も読む所の多い内容であった。

お奨め度★★★★


4
221228_歴史群像

歴史群像2022年12月号

学研

特集は「比島攻略作戦」。開戦劈頭に行われたフィリピン攻略作戦について、主に陸軍第14軍の作戦指導に着目して評価した記事である。バターン戦での苦戦のみが知られているフィリピン戦だが、その実態と、第14軍首脳部が犯した作戦ミスにメスを入れていて興味深い内容であった。他にもウクライナ戦争に関する記事が2点。ウクライナ空軍に関する記事は、期待して読んだのだが、ちょっと肩透かしを食らった感じがした。まあ情報が錯綜しているだけに仕方がないか。YouTube動画も話題性のみ先行している感が強いしね。
今回も全般に読む所が多く、「買い」であった。

お奨め度★★★★

3

221217_日本人のためのWW1

日本人のための第1次世界大戦史

板谷敏彦 角川文庫

第1次世界大戦の通史である。単純な戦史ではなく、戦争に至る背景や戦時下の経済活動、銃後の動きなど、WW1を多角的に追いかけている著作である。特に戦争に至る前の経緯や技術的、社会的背景に全体の1/3以上のページを割いている。
ボリュームも大きく、全体で500ページ近い大作であり、読み応えがあった。
戦史としてみた場合、単なる戦史部分が薄く、部隊名等も出てこないためやや寂しい感があるのは否めない。

お奨め度★★★


4
221121_牟田口

牟田口廉也とインパール作戦

関口高史 光文社新書

本書は、日本陸軍の中でも悪名高い牟田口廉也と彼のインパール作戦における戦いを再評価した著作である。本書は基本的に牟田口廉也を擁護するために書かれた著作と言えるもので、世評における牟田口評をほぼ完全に否定する。
牟田口が批判されるのは、何と言ってもあの悲惨なインパール作戦を指揮し、大敗を喫したからである。無論太平洋戦争の中ではインパール作戦に比すべき悲惨な戦いがいくつもあり、ニューギニア、フィリピン、沖縄等の戦い等は、死者数においてインパール作戦を凌駕する。しかしインパール作戦とこれらの作戦の違いは、インパール作戦は専ら日本側が望んで起こした戦いだということ。従って、ある意味「必要がなければ実施しなくても良かった」戦いと言える点だ。牟田口が批判されるのは、「やらなくても良い作戦」を強引に推し進め、「止めれば良いのに」止めずに被害を拡大した点にある。その点を本書はどのように評価しているのか。
筆者の主張によれば、インパール作戦は大本営も含めた日本陸軍の総意であったとしている。従って牟田口個人に責任を擦り付けるのは間違いだとしている。さらに作戦の失敗については、牟田口自身は作戦完遂のために尽力したにもかかわらず、無責任な参謀や部下たちが足を引っ張った、とのこと。
筆者の主張をどう感じるかは読者次第だが、私自身はやや過剰な「牟田口擁護」が気になった。ただ、読んでいて面白い本だったことは確かだ。

お奨め度★★★★

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