もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > 戦史

3
220119_ノモンハン

ノモンハン責任なき戦い

田中雄一 講談社現代新書

NHK特集を書籍化したもの。NHK特集らしく丹念に調査してあり、その点は好感が持てる。ノモンハンの戦いそのものを描くというよりは、ノモンハンの戦いに参加した将兵のインタビュー記録等を追い、彼らがノモンハンでどのように考え、行動したのか、その結果はどうだったのかという点を追求している。
ノモンハン事件を起こした日本側の首謀者は言うまでもなく関東軍、中でも関東軍の中で独自の地位を築いていた辻正信の存在は大きいと言わざるを得ない。辻と言えば現在でも毀誉褒貶の激しい人物だが、本書では初めて辻の遺族と会い、家庭での辻や辻の遺書についても触れている。その価値は大きい。とはいえ、本書における辻の評価は厳しく、さらに辻の暴走を許した陸軍組織についても批判的な筆致になっている。私としては同意できる内容であった。
辻関係以外では特に目新しい内容はなかったが、ノモンハン事件で明らかになった日本型組織の問題点について知ることができるという点では良い著作である。

お奨め度★★★

220112_歴史群像202202

歴史群像2022年2月号

これも入院先の病院で購入した本。とかく入院生活は暇なので、本を読むぐらいしかやることがない。まあ手術が終わって少し余裕が出てきたら、VASSALソロプレイとか、Game Journalの原稿とかを書きたいとは思っているが・・・(この稿、21/01/12に記す)。
特集は日本海軍航空隊。戦前から戦中にかけて日本海軍航空隊がどのような思想に基づきどのような形で整備され、戦争を戦ってきたのか。「大艦巨砲主義」と呼ばれる人種は本当にいたのか、といった感じの内容になっている。末尾に1945年8月における海軍航空隊戦力表が記載されているが、この時点で海軍航空隊は相当大規模な航空兵力を有していたことが理解できる(質的な面は兎に角とした)。
他には八甲田山雪中行軍についての記事があり、新田次郎氏の小説で描かれている同行軍の実態がどのようなものだったのか。そういった観点から興味深い記事であった。
他にも全体的に読む所が多く、今回は「当たり」であった。

お奨め度★★★★

3
220106_後期日中戦争

後期日中戦争

広中一成 角川新書

本書は1941年12月以降の日中戦争を扱った戦史である。太平洋正面の戦いとは違い、日中戦争はいわば「忘れられた戦争」であり、日本軍にとっても連合軍にとっても中国戦線は主戦線ではなかった。日中戦争全体についても盧溝橋事件や南京虐殺、あるいは零戦絡みで重慶爆撃戦などはそこそこ有名ではあるが、それ以外の戦いは殆ど知られていない。本書はその「忘れられた戦争」である1941年12月以降の日中戦争について、そこで主役をつとめた第3師団の戦いを軸に描いている。
本書で取り扱うのは、長沙作戦、常徳会戦、大陸打通作戦など計5つの戦いである。筆者はこれらの戦いについて全般的な流れを記すとともに、日本軍による細菌兵器や化学兵器の使用、日本軍による虐殺についてもページを割いている。
本書は決して日本軍の悪行を糾弾する著作ではない。とはいっても日本軍万歳的な著作でもない。どちらかといえば日本軍に対して批判的な立ち位置ではあるが、イデオロギーに偏することなく戦場での事実を淡々と描き進んでいる。そういった意味で好感が持てる著作であった。
日中戦争に興味のある向きには一読をお奨めしたい作品だ。

お奨め度★★★

211220_街道上の怪物

街道上の怪物

小林源文 ゴマブックス株式会社

戦史漫画家小林現文が描いた短編戦史漫画。第2次大戦におけるドイツ、イギリス、ソ連、日本等の戦いを短編形式で描いている。また一番最後にベトナム戦争での米兵をも扱っている。個々のストーリーは10ページ前後の短い話なのですぐに読み終えることができ、全体でも1時間弱で読むことができる。

お奨め度★★★

5
211218_日本軍兵士

日本軍兵士-アジア・太平洋戦争の現実

吉田裕 中公新書

「太平洋戦争で日本軍は善戦した」「連合軍は日本軍兵士の戦いぶりを驚嘆した」等とはよく言われる。自国民や戦争に参加した人たちだけではなく敵である連合軍側からも同様の評価がなされることがある。陸海軍を問わず旧日本軍にある種の「精強さ」を評価する向きがあることは否定できない。しかし「精強さ」の裏でどのような悲惨な死があったのか。そしてそれらを生み出した日本軍の組織的な欠陥とは何だったのか。本書はそのような事実に着目し調査した著作である。
本書はまず日本軍兵士の「死に方」に着目する。個々の兵士がどのような「死に方」をしたか、については、細かいデータが存在していないため実数は不明である。しかしいわゆる純粋な意味での「戦死」の割合は極めて少なく、その大半が戦病死、つまり病死であったとする筆者の主張は衝撃的だ。例えば日中戦争の段階(1941年12月まで)のデータでも戦病死の割合は50%以上となっており、中国戦線を戦い抜いたある連隊の場合、戦病死の割合が73%にのぼるという。補給面で比較的恵まれていたとされる中国戦線ですらこの数値なのだから、補給の断たれた太平洋の島嶼戦や悲惨の代名詞とされるインパール戦等はもっと割合が増えるであろう。その原因は日本軍の衛生観念の低さや衛生対策の遅れ等が挙げられているが、戦闘力至上主義の弊害と読み取ることもできる。
さらに純粋な病死以外にも、例えば自殺者や事故死(軍隊内のイジメにより死亡に至ったもの)、さらに輸送中の海没、さらには特攻による強制自殺等も含めると、日本軍における「名誉の戦死」の実態が実は陰惨なものであったことが浮かび上がってくる。
またこのような悲惨な実態を生み出した背景には、日本陸海軍の急速な規模拡大を挙げることができる。「精鋭主義」を打ち出していた日本陸海軍の規模は、1930年の段階で陸軍20万人、海軍5万人の計25万人。それが太平洋戦争終結時の1945年には陸軍550万人、海軍170万人の計720万人まで膨れ上がり、実に30倍規模に膨れ上がった。このような「大衆化」した軍隊で「精鋭主義」が通用する訳がないのだが、そのような事態を直視して本質的な対策を打たなかったことが悲惨な事態を招いたと言えよう。
日本軍の「強さ」について改めて見直してみるには良い著作だと思う。

お奨め度★★★★★

余談だが、戦後に所謂「戦記」物の著者はほとんどが「25万人」のグループに属しており、その中でもさらに一部のエリート層であったことは覚えておいて損はない。そしてエリート達の作文が、「残り720-25万人」の思考に全く及ばなかったことは、大岡昇平、山本七平らの作品を見れば明らかである。

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