
ノモンハン責任なき戦い
田中雄一 講談社現代新書
NHK特集を書籍化したもの。NHK特集らしく丹念に調査してあり、その点は好感が持てる。ノモンハンの戦いそのものを描くというよりは、ノモンハンの戦いに参加した将兵のインタビュー記録等を追い、彼らがノモンハンでどのように考え、行動したのか、その結果はどうだったのかという点を追求している。
ノモンハン事件を起こした日本側の首謀者は言うまでもなく関東軍、中でも関東軍の中で独自の地位を築いていた辻正信の存在は大きいと言わざるを得ない。辻と言えば現在でも毀誉褒貶の激しい人物だが、本書では初めて辻の遺族と会い、家庭での辻や辻の遺書についても触れている。その価値は大きい。とはいえ、本書における辻の評価は厳しく、さらに辻の暴走を許した陸軍組織についても批判的な筆致になっている。私としては同意できる内容であった。
辻関係以外では特に目新しい内容はなかったが、ノモンハン事件で明らかになった日本型組織の問題点について知ることができるという点では良い著作である。
お奨め度★★★