The DoomsDay Project Episode 2(以下、本作)は、CompassGamesが2021年に発表したSLGである。テーマは1985年を想定した東西両陣営の直接軍事対決で、実際には発生しなかった史実に基づいている。
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シナリオ4.四季ある土地へ
翌日は参加者が1名減って3名となったので、シナリオ4「四季ある土地」をプレイすることにした。1名はWPを担当、残り2名はNATOのそれぞれギリシア軍、トルコ軍を担当する。筆者はトルコ軍を担当する。このシナリオは、トルコ、ギリシア戦線のみを切り取った中規模キャンペーンシナリオである。シナリオの長さは全14Turn。使用するマップは、最南端部に相当するギリシア・トルコマップのみ。
WP軍は、当初はブルガリア、ルーマニア、ユーゴスラビアの各国が登場し、後に本命ともいうべきソ連軍が登場する。NATO軍はトルコ軍とギリシア軍が登場し、さらに第3Turnからはアメリカ海軍の第6艦隊の空母艦載機が登場する。前回のシナリオでもそうだったが、米第6艦隊の空母艦載機はNATO側では最強の航空兵力であり、その登場はバルカン半島における航空戦力のバランスを一変する力を持っている。
ちなみに前回のプレイで重大なミスが判明した。というのも、トルコ・ブルガリア国境付近にWP軍の補給拠点があり、WP軍増援部隊のエントリーポイントになっているのだが、そこから1Hex以内はNATO軍ユニットが進入できないという特別ルールがあったのだ。
前回のプレイではそのルールを失念していたので、トルコ軍の1部隊がこのHexを押さえてWP軍の増援部隊登場を阻止していた。そのためWP軍増援部隊は遠くルーマニア国境付近から時間をかけてトルコ戦線に送られてくる羽目になっていた。
しかし上記ルールによりトルコ軍によるWP側増援登場Hexを押さえることは不可能となってしまった。これにより初期配置に弱点のあるNATO側は、いきなり窮地に立たされることになる。
1Turn
第1Turn特別ルールによりソ連軍特殊部隊スペツナツが降下してきた。狙いはクルクラーレリ、リュレブルガズといった東トラキア地方における大都市である。大都市を狙ったのは、トルコ軍の布陣を妨害するという意味もあるが、それ以上に大都市を戦場にすることによりNATO側の避難民を発生させてNATOの補給に負荷をかけるという意味もあった。さらにソ連軍のヘリボーン部隊がエーゲ海沿岸に近い都市チョルルを占領。ブリガリア国境地帯からはブルガリア軍第3軍の機械化部隊が黒海沿岸を南下してきて、東トラキア地方に進入する。このためトルコ・ギリシア国境付近に布陣していたトルコ軍3個師団が後方遮断の危機に陥る。トルコ軍は予備移動で第8歩兵師団を出動。
リュレブルガズのスペツナツを撃破し、エーゲ海沿岸地帯に沿って薄い戦線を引く。
2Turn
さらに南下してきたブルガリア軍。それに対してトルコ軍はギリシア・トルコ国境付近に布陣していた3個師団のうち、何とか2個師団について連絡線を回復してイスタンブール方面に向けて後退させる。残り1個師団(第2歩兵師団)は後退を諦め、その場に留まって抵抗を続ける。後退したトルコ軍2個師団(第3機械化師団、第4歩兵師団)と、後退援護のトルコ軍約4個師団がリュレブルガズ~チョルル付近にまで進出してきたブルガリア軍を包囲攻撃。しかし戦闘の出目が最悪で戦果なし。うぐぐ。
3Turn
米空母登場。これでNATO側が制空権を確保した。WP軍は戦局を挽回すべくNATO側のインフラ網に対して化学兵器を使用した攻撃を実施。一部は有効打となりNATO側インフラの一部が破壊されてしまう。非道な奴らめ。トルコ戦線ではブルガリア軍、ソ連軍の増援部隊が現れ、東トラキア地方を南下する。そしてリュレブルガズ~チョルル付近で包囲されているブリガリア軍を救援すべく包囲中のトルコ軍を攻撃する。ブルガリア軍のSu-25が航空支援のために出撃してきたが、米空母を発進したF-14がSu-25を撃墜した。ブルガリア軍の攻撃も失敗し、ブルガリア軍は大きな損害を被った。
今回も結局第3Turnまでプレイし、この時点で時間切れで終了となった。
感想
まず自身が担当したトルコ戦線について。ギリシア国境に配置されているトルコ軍3個師団は、そのまま放置するとWP軍に後退路を断たれて壊滅してしまう。それを避けるためには完全に分断される前に可能な限り後退させてイスタンブール方面に収容するしかない。今回は3個師団中2個師団を戦線に収容でき、このためイスタンブール方面の守りを固めることができた。しかし、もし兵力の集中に失敗した場合、イスタンブール方面を守る兵力がかなり苦しくなる可能性がある。WP側の戦略としては、上記トルコ軍3個師団の後方を速やかに遮断し、その退路を断つのが良いのではないだろうか。そのためのチャンスが第1Turn、第2Turnの僅か2Turnしかないのが苦しい所だが、もしトルコ軍の戦線を分断できれば、可能性はあると思う。
とはいえ、このシナリオ、WP側が苦しいのは間違いないようだ。NATO側は旅団規模のユニットなのでユニット数が多く、WP側は師団規模なのでその逆である。このゲーム、戦闘の勝敗は関連するユニット数の大小に関わる部分が大きく、その点でユニット数の少ないWP側は打つ手が少ない。今回のプレイでもゲーム中盤のWP側は、戦線構築を半ば諦めて攻勢軸に攻撃兵力を集中投入してきた。NATO側もLOCによって機動を制約されるので、自由に戦線後方を襲撃できる訳ではないが、戦線を張れないことはWP側にとって弱点となりそうだ。
プレイをしてみての感想だが、戦闘解決に手間がかかりすぎる感は否めない。1回の戦闘解決で下手をすれば両軍合わせて10回以上ダイスを振り合う。1Turn1日の戦術作戦級ゲームとはいえ、そこまで戦闘解決の手間を増やすのも如何なものかな、と思う。案の定、今回も7時間ほどプレイしたが、3Turnまでしか進まなかった。シナリオ全体では14Turnもあるので、事実上完遂するのは不可能に近いと思う。
あと気になったのは、例外事項ともいうべきルールの多いことだ。最悪と思われるのが指揮官ルールで、指揮官の性格(積極性によって5段階に分かれる)によって活性化できるユニット数や戦闘修正が事細かく変化するのだが、正直面倒な上にわかりにくい。さらにルールの記載とチャートに矛盾があり、プレイ中に混乱を招くもとになっている。
戦闘時に適用される特殊イベントも効果が大きすぎて意味不明。大都市を防御していた部隊がいきなり「道に迷って」いなくなってしまうとか、いったい何をシミュレーションしたいのか意味不明である。しかも英文の書き方が曖昧でプレイの際に揉める要因ともなる。ただでさえ複雑で特殊な概念のゲームなのに、何を好んで「屋上に屋を架す」ような真似をするのか、全く理解できない。
このような特殊ルールは、前作Episode 1でもあったのだが、Episode 2でさらに過激になっている。筆者としてはEpisode 1でも面倒だったこれら特殊ルールを、さらに細かくする必要があるのかと疑問を禁じ得ない。
このデザイナー、こんな変な特殊ルールをつけるのが好きなようで、本人はニヤニヤしながらルールを作っているのかもしれないが、プレイする側は白ける。
とまあ色々書いたが、褒めるべき点もある。まずはシステムが同時進行を意識したものになっていて、現代戦らしい機動戦がさりげなく再現されているところだ。このシークエンスは秀逸なので、是非他のゲームにも生かしてほしい所だ。
航空戦ルールもやや複雑すぎるような気がしないでもないが、現代航空戦の雰囲気は良く出ている。地対地ミサイル攻撃等もあって盛り上がるのは良い点だ。まあ、1Turn1日の戦術作戦級ゲームで、航空戦や地対地ミサイルをここまで細かくプレイする必要があるかどうかは不明だが、デザイナーとしては拘りたい所なのであろう。理解できる。
総じて言えば、本作は決して悪いゲームではなく、プレイして楽しいゲームであることは確かだ。そういった意味でいわゆる「クソゲー」ではない。ただし細かいルールが多すぎ、プレイの爽快感を阻害しているのは確かだ。しかも今回のEpisode 2で行われた様々な改定は、「改悪」の部分が多いように思う。
「もう1度プレイしましょう」
と誘われても、丁重にお断りしたい作品である。