もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:ゲーム > ゲームデザイン論

最近のアニメ作品については詳しくないので「オッサン視点」と開き直って書きます。 今でいう所の「ファースト・ガンダム」って実はすごくウォーゲーム化しやすい作品なのではないかと思っています。実際、出版されているウォーゲームもファースト・ガンダムのものが多いように思えます。
で、今回、何故「ファースト・ガンダム」がウォーゲーム向きなのか、ついて考察してみました(大した考察じゃないけどね)。

一応、その理由について3点を挙げてみました。

1)全面戦争であること。
2)敵味方の実力がある程度拮抗していること。
3)敵味方が諸兵科連合であること。


1)全面戦争であること

分かりやすい反例が「Zガンダム」とか「ダグラム」「ボトムズ」ですね。これらの作品は戦術レベルではゲーム化可能なのですが、作戦レベル以上になるとゲーム化が難しい。

2)敵味方の実力がある程度拮抗していること

反例としては「イデオン」「ヤマト」「マクロス」等が挙げられます。「ヤマト」は全面戦争には違いないのですが、「ヤマト」がいない所では地球側が弱すぎ、逆に「ヤマト」がいると敵側が弱すぎるということで、実力が拮抗していません。「マクロス」も全面戦争には違いないのですが、敵が巨大過ぎてゲームにはなりません。

3)敵味方が諸兵科連合であること

実はこれが結構重要なのではないかと。ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクと性格の異なる機体が登場し、さらにコアファイター、Gファイター、ガンベリー、ホワイトベース。主役側だけでもこれだけ多彩な兵科が登場するので、その組み合わせが面白い。さらにスケールを広げると、地球側にはマゼランやサラミス、ジムにボール。敵側にも各種宇宙戦艦やモビルスーツだけではなく、戦闘機や戦車、突撃艇まで多彩な陣容。これだけ組み合わせがあるとゲームとして楽しい。
例えば「ダグラム」や「バイファム」等と比較しても一目瞭然。「銀英伝」も上記1)2)は満足しているのですが、兵器の多彩さではやや見劣りします。さらに同じガンダムシリーズでも、SEEDとかも味方側のバリエーションが乏しいのが難点かな(SEEDはあまりちゃんと見ていないので、上手く料理すれば面白いウォーゲームに化けるかも)。

余談ですが、「ダグラム」って第5話、第6話あたりをゲーム化すると結構面白いかも・・・。

結論

ちなみに「ファースト・ガンダム」以外で1)2)3)に該当する作品と言えば・・・、作品全体ではないのですが「宇宙戦艦ヤマト2」の地球vs白色彗星があげられます。「ダンバイン」は兵器の多彩さがやや微妙かな。

まあ、そんな所です。

あとおまけとして、ストーリーがあまりぶっ飛んでいないというのも大事かも。
「リックドム12機が全滅、3分も経たずにか・・・」
と驚いているぐらいなら良いのですが、
「敵の戦艦250万隻、波動砲の一撃で全艦戦闘不能」
とかいうレベルだと、もう戦争じゃないです。

ガンダムでも比較的新しい作品はぶっ飛んでいる事例が多くてゲーム作る側としてはあまり興味がそそられません(イグルーの後半部分とか・・・)


ウォーゲームで使われるマス目はヘクスと呼ばれる六角形のマス目が多い。その理由は例えば将棋などで用いられる四角形マス目(スクエア)に比べてヘクスの方が2点間の距離を精度良く表現できるからであろう。このあたりは、以前にPanzer誌だか何だかで書かれていたように記憶しているが、詳しくは覚えていない。

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ところでこのヘクスについてだが、ヘクスの大きさと実際の地図上での広さとを対応付けるパラメータとして「対向辺距離」というものがある。これはヘクスの向かい合った2つの辺の距離が実際の距離で何メートル(キロメートル)に相当するかを表現したものである。例えば「対向辺距離=4km」と書かれていれば、ヘクスの向かい合った2辺の距離が実際の4kmになる。
この対向辺距離は、別の言い方をすれば、そのヘクスマップの「距離分解能」と言い換えることもできる。例えば「対向辺距離=20km」のゲームでは、2者間の距離を20kmの単位で丸めてしか表現できない。だからヘクスの対向辺距離は、そのゲームの空間的な再現性を検証する上で極めて重要な存在となる。

と、実はここまでは前フリの部分で、ここからが本題なのですが、ヘクスの対向辺距離に使う「単位系」に注目してみました。我々日本人はSI単位系の世界で生きているので、距離を測る時にはメートル法が基本です。余程の酔狂でない限り、日常生活でマイルやヤード、フィートは使いません。しかし他国では些か事情が異なり、マイル、ヤードが使われていたりします。
ウォーゲームの世界でも、我々は時折距離単位系について国際的なギャップに直面することがあります。私の好きなゲームにAH社のFlat Topという空母戦ゲームがあるのですが、このゲームの1ヘクス対向辺距離は20マイル(約32km)です。

「海戦ゲームならマイルじゃなくて海里(ノーティカルマイル)だろう」

と我々なら突っ込みたい所なのですが、こういった違和感を感じる例は結構多かったりします。
そこで今回、私の視点で見た「距離単位系の違和感」について書いてみました。

戦術級陸戦ゲーム

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概ね中隊規模までの戦術級のゲームです。このクラスで使われている距離の単位系はメートルかヤードで稀にフィートが使われているぐらい。マイルが使われることは殆どありません。私的には、メートルが一番馴染みやすく、ヤード、フィートであれば少し違和感を感じます。

作戦級陸戦ゲーム

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メートル(キロメートル)やマイルが殆ど。海里が使われている例を私は知りません。私的には、メートル、マイルいずれも可です。

戦略級ゲーム

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キロメートルかマイルが殆ど。このスケールになると地図自体が抽象化されている場合があり、厳密な距離の単位系はあまり重要ではなくなります。

戦術級海戦ゲーム

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実は距離単位系は、二者の物理的距離が重視される海空戦ゲームでより顕著になります。戦術級海戦ゲームというのは、艦と艦が1対1で撃ち合うようなゲームで、亜流として潜水艦戦ゲームや空対艦攻撃のゲームなども含まれます。
このクラスのゲームでは、メートル(キロメートル)かヤード(キロヤード)が主流ですが、海里を使うゲームもあります。海里は1海里=2000ヤードで近似可能なので、ヤード系の亜流とも言えます。私的には、上記どれでもOKです。

作戦級海戦ゲーム

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いわゆる空母戦ゲームや大きなスケールで描いた艦隊戦ゲームです。このクラスで最も多く使われているのは、恐らく海里で、マイル(陸マイル)を使っているゲームもあります。メートル系のゲームは少数派かな?。日本機動部隊が75kmと言っていましたが、これは40海里をメートル法で表現しただけだし・・・。
私的にはこのクラスは海里以外は生理的に受け付けません。海でメートル法はないだろ。いわんや陸マイルを何で海で使うんだ・・・。

空戦ゲーム

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空戦ゲームといっても結構幅が広く、1対1のドッグファイトゲームから、Down Townのような作戦級に近い空戦ゲームもあります。使われている距離単位系は、メートル、フィート、ヤード、マイル、海里と様々。まさに千差万別です。個人的には1対1のドッグファイトゲームなら陸マイル以外なら何でも可ですが、作戦級に近い(つまり実際の地形を模した地図上で戦うゲーム)では、メートル法か海里が嬉しいですね。ドッグファイトゲームのAir Powerで陸マイルを使っていたのは少しぶっ飛びました。そういえばAir Forceの1ヘクスって何メートルだっけ?。

宇宙戦ゲーム

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宇宙戦だとそもそも「史実」がないので、近未来戦かあるいはSF作品を土台にするしかない。さらにSF作品の場合、スペースオペラ的な作品では作品自体で距離単位が不明瞭な場合があり(1宇宙キロって何メートル?、Fラインの距離は?)、ヘクスの対向辺距離を云々してもあまり意味がない(でも、ガンダム系ゲームでは、実距離で再現して欲しかった・・・)。
そんなこんなで宇宙戦ゲームの距離単位系は難しいのですが、例えば近未来に予想される宇宙戦を再現するゲームなら、距離はやはりメートル法(キロメートル)になるのかな。例えばガンダムのように地球と月の間が戦場になる場合、光秒(約300,000km)だと数値が小さくなりすぎるかも。
戦場がもう少し広がり、例えば「航空宇宙軍史」のように惑星間が舞台になったら、光秒でも良いのかな。
さらに「トラベラー」や「インペリウム」のように恒星間戦闘になると、光年とかパーセクというような大きな単位系が宜しいようで・・・。
私的には宇宙戦ゲームに深い思い入れはないので、何でも良いのですが、例えば「メイデイ」のようなゲームで光秒を使ってくれると、「目標まで3.2光秒」とかいって盛り上がるので嬉しいです。

昔のゲーム

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メートル法が広く普及したのは19~20世紀と言われていますが、それ以前のゲーム、例えば日本の戦国時代を扱うゲームや7年戦争のゲーム等はどのような単位系を使っているのでしょうか。私の知る限りはメートル(キロメートル)、ヤード、マイル等、現在使われている単位系で置き換えて表現している場合が多いように思います。たしかエポック社の「関ヶ原」では「町」という単位が使われていたような・・・。
個人的にはこういった時代のゲームでは単位系に対する拘りはなく、取り敢えず「決めてさえくれればよい」というのが本音です。

まとめ

ゲームとはあまり関係ない話になりましたが、個人的には距離系を明記している作品の方が曖昧にしている作品よりも好きです。SFゲームのように対象自体が曖昧な場合であっても、距離系が明記されている方が嬉しいです。



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たまには、思いついたこと・・・。

ウォーゲームでは通常乱数が必要な場合にダイスを使うことが多い。
その時、多くのゲームでは「大きい目が有利(又は不利)」というように傾向を決めているように思う。
で、気になったことというのは、「ダイス目の扱いって大きいほうが有利なゲームが多いのか、あるいは逆が多いのか」。

まず「大きいほうが有利なゲーム」。
私が知っている範囲で一部取り上げると、Victory in the Pacific(AH)、信長最大の危機(GJ)、Paths of Glroy(GMT)、シモニッチ作品(GMT他)等。一般的な陸戦作戦級ゲームでは、「でかい目が有利」というのが一般的な傾向のように思う。

逆に「小さいほうが有利なゲーム」。
有名な所ではASL。あと空戦ゲームのAir Power等も小さいほうが有利。どちらかといえば精密戦術級ゲームでは小さいほうが有利というゲームがチラホラみかける。

統計を取ったわけではないのであくまでも印象だが、どちらかといえば「大きい目が有利ばゲーム」が多いように思う。
「ろっくでなさーい」
という掛け声はゲーム会での定番だ。

私的には「小さいほうが有利」の方が好き。というのも小さいほうが有利にしたほうがダイスを能力を比較するシステムにする場合にユニットの数値で能力の判断が容易になる。
例えばダイス小さいほうが有利なシステムなら「攻撃力以下で命中」になるが、逆なら「攻撃力以上で命中」となる。この場合、前者なら攻撃力の数値が大きいほうが強い=わかりやすいが、後者なら攻撃力の数値が小さいほうが強い=わかりにくい、となる。
(まあダイス+攻撃力が6以上で命中、みたいな変則技もあるが・・・)

とはいえ、ウォーゲーム界隈で「6が有利」が一般的だということは、
「ろっくでなさーい」
という掛け声は今後もゲーム会での定番になり続けるだろう。

余談だが、2d6の場合、大きい小さい以外に端目(2とか12)が有利か真ん中が有利かという傾向もあるよう。あるいは「パットン第3軍」のように「何が有利なのかよくわからない」のもあって、非常に面白い。

こういうどうでも良いことで楽しめるのも「ウォーゲームの魅力の1つ」といえば言いすぎかな?。

プレイヤーにとってはどうでもよいようなこの問題も、デザイナー氏は結構悩んでいるらしく、中には「無理やりデカイ目有利」に統一しようと苦心しているデザインの跡が読み取れると微笑ましく感じる。


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(Photo by U.S. Naval War Collage)

ウォーゲームといっても競技用のゲームではないウォーゲームの場合、サイコロを使わないウォーゲームは珍しくはない。なお、ここでいう「サイコロ」とは、サイコロに代表される乱数発生器のことである。従ってサイコロを使わなくとも、カードによって結果を判定するゲームや相手の手札が不確定要素になるカードゲーム等は、ここでは「サイコロを使わないウォーゲーム」とはしていない。

一般にサイコロを使わないプロユースのウォーゲームを、日本ではウォーゲームとは呼ばずに「交戦理論」とか「オペレーションズ・リサーチ」等と呼ぶ。しかし英語では、日本でいうORもウォーゲームと呼ぶ場合がある。

例えば有名なランチェスターの二次法則がある。これは例えば艦対艦の戦闘モデルとして使われることが多いが、これもウォーゲームの一種と呼べる。例えば以下のような命題。

 命題:同等の能力を持つ戦艦10隻と戦艦6隻が互いに全滅するまで戦った場合、その戦闘結果を予測せよ。

ここにランチェスターの二次法則を当てはめると、劣勢側が全滅するまで戦うと優勢側は約3隻を失う。そこに乱数の介在する余地はない。

ところで戦艦対戦艦のようなモデルは比較的シンプルなのでゲームとしてルール化しやすい。しかし空母戦はそんなに簡単には行かない。例えば以下のような命題を考えよう。

 命題:1942年の空母戦である。零戦12機、艦爆36機、艦攻36機からなる攻撃隊が、空母3隻からなる米機動部隊を攻撃した場合の戦闘結果を予測せよ。なおCAP機はF4Fワイルドキャット36機とする。

この命題に対して、2種類のウォーゲーム理論を使って検証してみたい。

1.How Carrier Fought方式

How Carrier Foughtは、以前に紹介した空母戦に関する著作である。本書には簡単なウォーゲームルールが紹介されている。そこでHow Carrier Foughtのルールを使って上記の命題を解いてみよう。
How Carrier Foughtで紹介されている戦闘モデルは、"Salvo Combat Model"と呼ばれる戦闘モデルである。これは艦対艦のミサイル戦を再現したウォーゲーム理論であり、米海軍で実際に使用されている戦闘モデルである。なお言うまでもないが、ここでは艦爆や艦攻が対艦ミサイルの代わりを担うことになる。

a) CAP機による戦闘
個々のCAP機は艦爆に対して20%、艦攻に対して40%の撃墜可能性を有する。護衛戦闘機の存在は、同じ機数のCAP機に対して効果があり、CAP機の効果を半減させる(撃墜率はそれぞれ10%、20%)になる。またCAP機と護衛戦闘機の被撃墜機は考慮しない。
このルールを上記の命題に当てはめると、F4F 36機のうち12機が護衛の零戦によって効果半減になる。F4Fが半数ずつ艦爆と艦攻に向かったとすると、艦爆3機、艦攻6機がCAP機の犠牲になる。

b) 対空火器による戦闘
1942年の戦闘では、対空砲火の役割は限定的であった。従ってここではその効果を無視する。

c) 航空攻撃
艦爆の命中率は10%、艦攻の命中率は5%とする。
このルールを今回のモデルに適用すると、爆弾3.4発、魚雷1.5発が命中する。

d) ダメージコントロール
空母1隻を撃沈するのに要する弾量は爆弾5発又は魚雷2発とする。
今回の結果に適用すると、空母1.43隻を撃沈できる。実際には1隻撃沈、1隻発着艦不能ぐらいだろう。

2.Midway Inquest方式

Midway Inquestについても以前に紹介した。ミッドウェー海戦を扱った興味深い著作である。本書の中でもウォーゲーム理論が紹介されていた。これは、先に紹介したHow Carrier Fought方式とはかなり異なっているので紹介したい。

a) CAP機による戦闘
護衛の零戦は1対1の割合でF4Fを追い払う。追い払われたF4Fの半数が零戦によって撃墜され、零戦はF4Fと2:3の交換比で損失する。
護衛の零戦を掻い潜ったF4Fは、1機につき艦爆1機、又は艦攻1.5機を撃退する。撃退された艦爆・艦攻の3/4が撃墜される。F4Fは艦爆相手に1:8、艦攻相手に1:12の交換比で損失する。
このルールを上記の命題に当てはめると、零戦とF4Fの交戦で4機の零戦と6機のF4Fが失われ、6機のF4Fが撃退される。残った24機のF4Fは半数ずつに分かれて艦爆艦攻を攻撃。艦爆は12機撃退(内9機撃墜)、艦攻は18機撃退(内13.5機撃墜)。F4Fは約2.2機を失う。

b) 対空火器による戦闘
空母1隻につき艦爆又は艦攻1機が撃墜される。
これを命題に当てはめると、空母3隻なので3機が失われる。ここでは艦爆1機、艦攻2機が対空砲火の犠牲になったとしよう。

c) 航空攻撃
艦爆の命中率は1/3、艦攻の命中率は1/5とする(この命中率は史実の日本軍のそれよりも良好だが、ミッドウェー海戦に参加したパイロットは「Aクラス」だったことを考慮した、としている)。
これを命題に当てはめると、艦爆23機が投弾し7.67発命中、艦攻16機が投弾し3.2発が命中、となる。

d) ダメージコントロール
250kg爆弾の打撃力を1ポイント、魚雷の打撃力を3ポイントする。ヨークタウン級空母は5ポイントの損害で作戦能力を失い、9ポイントの損害で沈没する。また空母3隻の場合、損失は3:2:1の割合で各艦に割り振られる。
これを今回の命題に当てはめると、米空母が被る打撃は17.27。計算を単純化するために18ポイントとすると、1隻が9ポイント、もう1隻が6ポイント、もう1隻が3ポイントの損害を被る。
これを実際の戦場に当てはめると、「ヨークタウン」が沈没又は沈没寸前、「ホーネット」が飛行甲板が破壊されて航空機運用不能、そして「幸運な」「エンタープライズ」は爆弾3発が命中したものの緊急修理により作戦行動可能、となる。
日本軍は零戦2機、艦爆10機、艦攻15.5機の計27.5機を失った。これは出撃機の約1/3に対する損害であった。

3.結論

如何であろうか。どちらのモデルが現実に近いだろうか。個人的にはMidway Inquestのモデルがより実際に近いように思うのだが、爆弾・魚雷の命中率をもう少し下方修正した方が良いかもしれない。ただ、かなり異なったルールを採用している2つのモデルが、戦闘結果については類似の結果になったことは興味深いことである。

無論ここで一番興味深いのは、「戦闘をモデル化しよう」という考え方である。実際の戦闘には運の要素が大きな役割を果たす。従って「サイコロを使わないウォーゲーム」を「リアルではない」として切り捨てることは容易だ。しかしゲームは所詮ゲームだ。ゲームそのものに現実を変える力はない。ゲームで勝つことで実戦に勝てるのであれば、イカサマサイコロを使うとか、無理矢理裁定(所謂「只今の命中弾は1/3とする」)を使ってゲーム上での勝利を演出すれば良い。しかし、いくらゲームで勝っていても実戦で勝てなければ無意味である。繰り返すが、ゲームそのものに現実を変える力はないから。

プロユースのウォーゲームの役割は「予言」ではなく「見積もり」である。予言と見積もりは違う。予言には必ずしも根拠は必要ないが、見積もりには根拠が必要だ。また不正確な予言は無意味だが、不正確な見積もりは必要悪でもある。何故なら見積もりは現実の結果をフィードバックすることによって精度を高めていくものだからだ。この「戦闘をモデル化する」という考え方について、日本海軍は米海軍に及ばなかったことは今更言うまでもない。

最後に米海軍大学校におけるウォーゲームに対する取り組みを紹介したい。彼らがウォーゲームを研究や学生教育のための重要な要素に位置付けていることが理解できよう。



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Simulation War

Philip Sabin BloomSbury

サブタイトルは"Studying Conflict through Simulation Games"(シミュレーションゲームを使って闘争を学ぶ)とあり、シミュレーションゲームを主に学習ツールとしての側面から論じた著作である。本書は3章構成からなり第1章はTheoryでウォーゲームについての一般的な定義。第2章はMechanicsでウォーゲームのメカニズム(Turn、Hex、ZOC等一般的なウォーゲームの仕組み)について語っている。第3章はSampleということで、著者が学生教育用に作成したいくつかのウォーゲームの紹介記事になっている。テーマは戦略級のポエニ戦争、作戦級のコルスン包囲戦、戦術級の歩兵戦闘といった一般的な所から、歩兵部隊同士の市街戦(スクエアマップを使用している)、ドイツ本土を巡る戦術・作戦級の航空戦、戦術級の空戦ゲームといった珍しいテーマのゲームも含まれている。
ウォーゲーマーの立場から本書を見た場合、プレイヤーの立ち位置や戦場の霧、摩擦の再現といった既に語り尽くされた感のある話題について、改めて見直すことができる。また日本では殆ど顧みられない教育ツールとしてのウォーゲームについても新たな視点を与えてくれるだろう。

お奨め度★★★★



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