もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:ゲーム > ゲームデザイン論

たまには、思いついたこと・・・。

ウォーゲームでは通常乱数が必要な場合にダイスを使うことが多い。
その時、多くのゲームでは「大きい目が有利(又は不利)」というように傾向を決めているように思う。
で、気になったことというのは、「ダイス目の扱いって大きいほうが有利なゲームが多いのか、あるいは逆が多いのか」。

まず「大きいほうが有利なゲーム」。
私が知っている範囲で一部取り上げると、Victory in the Pacific(AH)、信長最大の危機(GJ)、Paths of Glroy(GMT)、シモニッチ作品(GMT他)等。一般的な陸戦作戦級ゲームでは、「でかい目が有利」というのが一般的な傾向のように思う。

逆に「小さいほうが有利なゲーム」。
有名な所ではASL。あと空戦ゲームのAir Power等も小さいほうが有利。どちらかといえば精密戦術級ゲームでは小さいほうが有利というゲームがチラホラみかける。

統計を取ったわけではないのであくまでも印象だが、どちらかといえば「大きい目が有利ばゲーム」が多いように思う。
「ろっくでなさーい」
という掛け声はゲーム会での定番だ。

私的には「小さいほうが有利」の方が好き。というのも小さいほうが有利にしたほうがダイスを能力を比較するシステムにする場合にユニットの数値で能力の判断が容易になる。
例えばダイス小さいほうが有利なシステムなら「攻撃力以下で命中」になるが、逆なら「攻撃力以上で命中」となる。この場合、前者なら攻撃力の数値が大きいほうが強い=わかりやすいが、後者なら攻撃力の数値が小さいほうが強い=わかりにくい、となる。
(まあダイス+攻撃力が6以上で命中、みたいな変則技もあるが・・・)

とはいえ、ウォーゲーム界隈で「6が有利」が一般的だということは、
「ろっくでなさーい」
という掛け声は今後もゲーム会での定番になり続けるだろう。

余談だが、2d6の場合、大きい小さい以外に端目(2とか12)が有利か真ん中が有利かという傾向もあるよう。あるいは「パットン第3軍」のように「何が有利なのかよくわからない」のもあって、非常に面白い。

こういうどうでも良いことで楽しめるのも「ウォーゲームの魅力の1つ」といえば言いすぎかな?。

プレイヤーにとってはどうでもよいようなこの問題も、デザイナー氏は結構悩んでいるらしく、中には「無理やりデカイ目有利」に統一しようと苦心しているデザインの跡が読み取れると微笑ましく感じる。


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(Photo by U.S. Naval War Collage)

ウォーゲームといっても競技用のゲームではないウォーゲームの場合、サイコロを使わないウォーゲームは珍しくはない。なお、ここでいう「サイコロ」とは、サイコロに代表される乱数発生器のことである。従ってサイコロを使わなくとも、カードによって結果を判定するゲームや相手の手札が不確定要素になるカードゲーム等は、ここでは「サイコロを使わないウォーゲーム」とはしていない。

一般にサイコロを使わないプロユースのウォーゲームを、日本ではウォーゲームとは呼ばずに「交戦理論」とか「オペレーションズ・リサーチ」等と呼ぶ。しかし英語では、日本でいうORもウォーゲームと呼ぶ場合がある。

例えば有名なランチェスターの二次法則がある。これは例えば艦対艦の戦闘モデルとして使われることが多いが、これもウォーゲームの一種と呼べる。例えば以下のような命題。

 命題:同等の能力を持つ戦艦10隻と戦艦6隻が互いに全滅するまで戦った場合、その戦闘結果を予測せよ。

ここにランチェスターの二次法則を当てはめると、劣勢側が全滅するまで戦うと優勢側は約3隻を失う。そこに乱数の介在する余地はない。

ところで戦艦対戦艦のようなモデルは比較的シンプルなのでゲームとしてルール化しやすい。しかし空母戦はそんなに簡単には行かない。例えば以下のような命題を考えよう。

 命題:1942年の空母戦である。零戦12機、艦爆36機、艦攻36機からなる攻撃隊が、空母3隻からなる米機動部隊を攻撃した場合の戦闘結果を予測せよ。なおCAP機はF4Fワイルドキャット36機とする。

この命題に対して、2種類のウォーゲーム理論を使って検証してみたい。

1.How Carrier Fought方式

How Carrier Foughtは、以前に紹介した空母戦に関する著作である。本書には簡単なウォーゲームルールが紹介されている。そこでHow Carrier Foughtのルールを使って上記の命題を解いてみよう。
How Carrier Foughtで紹介されている戦闘モデルは、"Salvo Combat Model"と呼ばれる戦闘モデルである。これは艦対艦のミサイル戦を再現したウォーゲーム理論であり、米海軍で実際に使用されている戦闘モデルである。なお言うまでもないが、ここでは艦爆や艦攻が対艦ミサイルの代わりを担うことになる。

a) CAP機による戦闘
個々のCAP機は艦爆に対して20%、艦攻に対して40%の撃墜可能性を有する。護衛戦闘機の存在は、同じ機数のCAP機に対して効果があり、CAP機の効果を半減させる(撃墜率はそれぞれ10%、20%)になる。またCAP機と護衛戦闘機の被撃墜機は考慮しない。
このルールを上記の命題に当てはめると、F4F 36機のうち12機が護衛の零戦によって効果半減になる。F4Fが半数ずつ艦爆と艦攻に向かったとすると、艦爆3機、艦攻6機がCAP機の犠牲になる。

b) 対空火器による戦闘
1942年の戦闘では、対空砲火の役割は限定的であった。従ってここではその効果を無視する。

c) 航空攻撃
艦爆の命中率は10%、艦攻の命中率は5%とする。
このルールを今回のモデルに適用すると、爆弾3.4発、魚雷1.5発が命中する。

d) ダメージコントロール
空母1隻を撃沈するのに要する弾量は爆弾5発又は魚雷2発とする。
今回の結果に適用すると、空母1.43隻を撃沈できる。実際には1隻撃沈、1隻発着艦不能ぐらいだろう。

2.Midway Inquest方式

Midway Inquestについても以前に紹介した。ミッドウェー海戦を扱った興味深い著作である。本書の中でもウォーゲーム理論が紹介されていた。これは、先に紹介したHow Carrier Fought方式とはかなり異なっているので紹介したい。

a) CAP機による戦闘
護衛の零戦は1対1の割合でF4Fを追い払う。追い払われたF4Fの半数が零戦によって撃墜され、零戦はF4Fと2:3の交換比で損失する。
護衛の零戦を掻い潜ったF4Fは、1機につき艦爆1機、又は艦攻1.5機を撃退する。撃退された艦爆・艦攻の3/4が撃墜される。F4Fは艦爆相手に1:8、艦攻相手に1:12の交換比で損失する。
このルールを上記の命題に当てはめると、零戦とF4Fの交戦で4機の零戦と6機のF4Fが失われ、6機のF4Fが撃退される。残った24機のF4Fは半数ずつに分かれて艦爆艦攻を攻撃。艦爆は12機撃退(内9機撃墜)、艦攻は18機撃退(内13.5機撃墜)。F4Fは約2.2機を失う。

b) 対空火器による戦闘
空母1隻につき艦爆又は艦攻1機が撃墜される。
これを命題に当てはめると、空母3隻なので3機が失われる。ここでは艦爆1機、艦攻2機が対空砲火の犠牲になったとしよう。

c) 航空攻撃
艦爆の命中率は1/3、艦攻の命中率は1/5とする(この命中率は史実の日本軍のそれよりも良好だが、ミッドウェー海戦に参加したパイロットは「Aクラス」だったことを考慮した、としている)。
これを命題に当てはめると、艦爆23機が投弾し7.67発命中、艦攻16機が投弾し3.2発が命中、となる。

d) ダメージコントロール
250kg爆弾の打撃力を1ポイント、魚雷の打撃力を3ポイントする。ヨークタウン級空母は5ポイントの損害で作戦能力を失い、9ポイントの損害で沈没する。また空母3隻の場合、損失は3:2:1の割合で各艦に割り振られる。
これを今回の命題に当てはめると、米空母が被る打撃は17.27。計算を単純化するために18ポイントとすると、1隻が9ポイント、もう1隻が6ポイント、もう1隻が3ポイントの損害を被る。
これを実際の戦場に当てはめると、「ヨークタウン」が沈没又は沈没寸前、「ホーネット」が飛行甲板が破壊されて航空機運用不能、そして「幸運な」「エンタープライズ」は爆弾3発が命中したものの緊急修理により作戦行動可能、となる。
日本軍は零戦2機、艦爆10機、艦攻15.5機の計27.5機を失った。これは出撃機の約1/3に対する損害であった。

3.結論

如何であろうか。どちらのモデルが現実に近いだろうか。個人的にはMidway Inquestのモデルがより実際に近いように思うのだが、爆弾・魚雷の命中率をもう少し下方修正した方が良いかもしれない。ただ、かなり異なったルールを採用している2つのモデルが、戦闘結果については類似の結果になったことは興味深いことである。

無論ここで一番興味深いのは、「戦闘をモデル化しよう」という考え方である。実際の戦闘には運の要素が大きな役割を果たす。従って「サイコロを使わないウォーゲーム」を「リアルではない」として切り捨てることは容易だ。しかしゲームは所詮ゲームだ。ゲームそのものに現実を変える力はない。ゲームで勝つことで実戦に勝てるのであれば、イカサマサイコロを使うとか、無理矢理裁定(所謂「只今の命中弾は1/3とする」)を使ってゲーム上での勝利を演出すれば良い。しかし、いくらゲームで勝っていても実戦で勝てなければ無意味である。繰り返すが、ゲームそのものに現実を変える力はないから。

プロユースのウォーゲームの役割は「予言」ではなく「見積もり」である。予言と見積もりは違う。予言には必ずしも根拠は必要ないが、見積もりには根拠が必要だ。また不正確な予言は無意味だが、不正確な見積もりは必要悪でもある。何故なら見積もりは現実の結果をフィードバックすることによって精度を高めていくものだからだ。この「戦闘をモデル化する」という考え方について、日本海軍は米海軍に及ばなかったことは今更言うまでもない。

最後に米海軍大学校におけるウォーゲームに対する取り組みを紹介したい。彼らがウォーゲームを研究や学生教育のための重要な要素に位置付けていることが理解できよう。

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Simulation War

Philip Sabin BloomSbury

サブタイトルは"Studying Conflict through Simulation Games"(シミュレーションゲームを使って闘争を学ぶ)とあり、シミュレーションゲームを主に学習ツールとしての側面から論じた著作である。本書は3章構成からなり第1章はTheoryでウォーゲームについての一般的な定義。第2章はMechanicsでウォーゲームのメカニズム(Turn、Hex、ZOC等一般的なウォーゲームの仕組み)について語っている。第3章はSampleということで、著者が学生教育用に作成したいくつかのウォーゲームの紹介記事になっている。テーマは戦略級のポエニ戦争、作戦級のコルスン包囲戦、戦術級の歩兵戦闘といった一般的な所から、歩兵部隊同士の市街戦(スクエアマップを使用している)、ドイツ本土を巡る戦術・作戦級の航空戦、戦術級の空戦ゲームといった珍しいテーマのゲームも含まれている。
ウォーゲーマーの立場から本書を見た場合、プレイヤーの立ち位置や戦場の霧、摩擦の再現といった既に語り尽くされた感のある話題について、改めて見直すことができる。また日本では殆ど顧みられない教育ツールとしてのウォーゲームについても新たな視点を与えてくれるだろう。

お奨め度★★★★

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「ウォーゲームに対する汚名」「ウォーゲームに対する烙印」・・・、まあ、何でも良いんですけど、まあそんな意味ではないでしょうか。このブログでも何度か紹介しているPhilip Sabin教授がまとめた「ウォーゲームに対する"様々な言葉"を集めたものです(必ずしもネガティブな言葉ばかりではない)。英文ですが、小さな冊子なので一読してみては如何でしょうか。ウォーゲームというホビーに対する一般的な見解をワールドワイドに知ることができます。

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私が興味を持ったのは"Art vs Science"の項目。これは米海軍大学教授であるRobert Rubel氏がウォーゲームについて語ったもので、プロフェッショナルな視点から見たときのウォーゲームの価値について興味深い記述になっています。

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有効な知識は戦争ゲームから出てくることができますが、デューデリジェンスが適用されている場合に限ります。 その勤勉さは、戦争賭博が真の職業ではなく技巧であるため、今日、かなり妨げられています。 はるかに多くの作業が必要です。 ゲームの価値を信じる人は、真にプロフェッショナルな戦争ゲームの目標に向かって結びつき、今作業しなければなりません。
(Geogle翻訳より)

まあ翻訳ソフトなのでこんなものですが、私なりに意訳すると
「ウォーゲームからは有用な知識を得ることができるが、それは不断な努力が行われた場合のみである。その不断な努力とは、今日ウォーゲームが真にプロフェッショナルなツールではなく技巧的なものになっているためにしばしば妨げられている。真にプロフェッショナルなウォーゲームというゴールに向けて今こそ仕事をするときである。」

・・・、Geogle翻訳に負けているかも・・・。

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Zone of Control - Perspectives on Wargaming

Henry Lowood and Raiford Gunis

ウォーゲームに関する書籍で約60件のウォーゲームに関する記事が掲載されている。執筆者の多くは現役のゲームデザイナーで、Mark Herman、Jack Green、Ted S.Raicer等は我が国でも良く知られたデザイナーだ。執筆者の中には、Game Journal編集長のふーらー氏も名を連ねており、実世界を実世界通りにモデリングする限界や抽象化したシミュレーションの優位性を説いている(個人的にはあまり合意できない内容であった)。
個人的に面白いと思ったのは、まずJack Green氏の論文。ジュトランド海戦をテーマとした精密ゲームのDNで、詳細化された砲戦システムと審判を導入したマルチプレイヤー用のビックゲームのようであった。またDown Townシリーズのデザイナーとして知られているLee Brimmicombe-Woodは、ゲームにおける航空戦力の扱いと空戦ゲームの歴史について語っている。Mark HermanはEmpire of the Sun(GMT)を題材としてCard Driven System(CDS)について、Ted RaicerはPaths of Glory(GMT)を題材としてWW1テーマゲームとCDSの可能性についてそれぞれ興味深い論文を投稿している。
また本書は単なるウォーゲーム紹介ではなく、軍や学術界におけるウォーゲームの利用、あるいはコンピュータ利用の一人用シューティングゲーム(FPG)等についてもページを割いている。尤も、FPGに関する記述は殆ど理解できなかったというのが本音だが・・・。
英文約800ページととにかくボリュームが多く、読み通すのは大変だが(私は2ヶ月以上かかった)、それほど高価でもなくウォーゲーマーなら一読して損のない内容だと思う。

お奨め度★★★★

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