もりつちの徒然なるままに

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カテゴリ:戦史 > 日清日露戦争

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190907_日露戦争史

日露戦争史ー20世紀最初の大国間戦争

横手慎二  中公新書/

本書は日露戦争の通史である。ただし個々の戦闘場面にはそれほどページを割いておらず、それよりは個々の戦闘が日露戦争全体の中でどのような位置づけにあるか。あるいは戦闘の結果が戦争全体の行方にどのような影響を与えたかについて触れている。また本書では日露戦争が開始されるまでの道程に多くのページを割き、日本から見たロシア、ロシアから見た日本という点について考察している。そして日露戦争が起こる前の東アジア情勢が日露戦争の開戦にどのような影響を与えたかについて考察している。
本書は所謂「血沸き肉躍る」タイプの作品ではない。しかし今まで見過ごされがちであった戦争前の外交、とりわけロシアが日本をどのように見ていたか、あるいは日露両国が相手の「意図や能力」をどのように「見誤った」について考えてみるには良い著作である。

お奨め度★★★

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乃木希典と日露戦争の真実 司馬遼太郎の誤りを正す

桑原嶽 PHP新書

本書は司馬遼太郎氏の傑作歴史小説「坂の上の雲」に対する反論として記された著作である。本書で問題提起されているのは、「坂の上の雲」の中での乃木希典と伊地知孝介の描き方である。乃木希典とは言うまでもなく乃木将軍のことで、日露戦争では日本陸軍第3軍を率いて旅順要塞を攻略した。また伊地知孝介は、乃木将軍麾下の参謀長で、やはり旅順攻略戦で中心的役割を果たした人物である。「坂の上の雲」では、乃木を「戦下手」、伊地知を「頑迷固陋」としているが、本書では乃木、伊地知が決して「坂の上の雲」で描かれているような人物ではないとしている。本書によれば、旅順攻略戦で乃木・伊地知が採用した作戦は極めて理にかなっており、「坂の上の雲」における乃木・伊地知批判は基本的な歴史認識の欠如から来る誤ったものだとしている。歴史的事実に対する評価なので本書が正しいのかそれとも「坂の上の雲」が正しいのかを決定するのは難しいが、「坂の上の雲」に対してこのような批判があることは知っておいて損はない。ただし本書の主張のみを完全に正しいとするのもまた危険である。旅順攻略戦や日露戦争については現時点でも様々な視点から論じられており、未だに新たな主張が提示されているのが実情だ。
いずれにしても「坂の上の雲」については、本書以外にも様々な視点から批判が寄せらいるのは事実。だから「坂の上の雲」に描かれている姿をそのまま史実として捉えるのは危険だろう。とはいっても「坂の上の雲」が極めて優れた歴史小説であり、その価値は現在でも失われていないことは間違いない。

お奨め度★★★★

190704_乃木将軍

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日露戦争1~8

児島襄 文春文庫

戦記作家として名高い児島襄(こじま のぼる)氏の作品である。日露戦争の開戦前から戦争そのもの、ポーツマスでの講話会談から日比谷の焼き討ち事件を経て終戦までの約3年間を描いたノンフィクション作品で、日露戦争における陸戦、海戦が詳細に描かれている。日露戦争を扱った作品としては、司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」が有名だが、「坂の上の雲」があくまでも歴史小説であるのに対し、こちらはノンフィクション作品となっている。従って「読み物」としての面白さは、当然ながら「坂の上」が勝る。
本書は純粋に日露戦争史と読む事も可能だが、現在の東アジア情勢のルーツとして読むこともできる。例えば朝鮮半島と日本とのギクシャクした関係は何に起因しているのか。あるいは現在の日中、日露関係の起源は何か。そういった疑問に対してある種の答えを与えてくれるだろう。
本書を読んで興味深かったのは、なんと言ってもポーツマスでの講話会談である。小村寿太郎とウィッテの駆け引きも興味深いが、それよりも日本国民がこぞって反対した講話条約の今日的な意味について考えてみるのも良いだろう。
また最終章における日露戦争全般に関する考察も興味深い。動員兵力では日本の方がロシアよりも若干だが多かったという事実。にもかかわらず陸戦における死者数では日本はロシアの4~5倍に達し、人的被害ではむしろ日本側の方が多かったという事実。これらの事実を目にしたとき、日露戦争は決して日本側が「勝利を得た」戦争ではなく、ギリギリで何とか引き分けに持ち込んだ戦争というのが正しいのかもしれない。
現在でも容易に入手できる著作であり、廉価でもあるので、万人にお奨めできる作品である。

お奨め度★★★★

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海戦から見た日清戦争

戸田一成 角川Oneテーマ21

日清戦争における日本、清国両海軍の激突をテーマとし、そこに至る過程や海軍力整備の流れ、個艦整備状況や戦略思想の発展、そして豊島沖、黄海の各海戦や高陛号撃沈、威海衛襲撃等の戦いや、日清戦後の動きについても記している。その中で筆者は三景艦と呼ばれるフランス式設計の主力艦が、日清戦争ではあまり役に立たず、むしろ英国式の高速巡洋艦「吉野」「浪速」といった艦の方が役に立ったということ。あるいはマハンの海軍理論が日本海軍だけではなく、日本国全体で一種のブームとして取り上げられたということ。さらには清国での海軍増強計画についても触れ、その中には日本海軍を圧倒できるような恐るべき建艦計画等もあったことなどを取り上げている。
ページ数が少ないだけにあまり細かい点についての記述は見られないが、それでも日清戦争における海軍作戦についていくつか新鮮な知識を得ることができる点、評価したい。

お奨め度★★★

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歴史群像アーカイブ22--日露戦争

学研

このシリーズは過去歴史群像史に掲載された記事をテーマ別に再編集したものである。
今回は日露戦争がテーマで、旅順攻防戦、奉天会戦、日本海海戦等、日露戦争における主要な陸戦、海戦が計10個の記事に収められている。枚数的な制約のため個々の記事は概略的なものに留まっている。また極端な解釈はなく内容は常識的なものになっているが、その分日露戦争における「常識」を知ることができる。

お奨め度★★★

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