もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ: 読書日記

イメージ 1

戦争論

クライゼヴィッツ 清水多吉訳 中公文庫

18~19世紀にかけてプロイセン、ロシアの軍人として活躍した著者が戦争について記述した著作である。戦略、戦術論に関する古典的な著作だが、内容はかなり難解であり、一読しただけでは大意はつかみにくい。戦争論といっても単に戦争の何たるかを論じているだけではなく、戦争全般から攻撃戦術、防御戦術の細部まで論じている。18~19世紀の戦術論なので現在からみると古い個所もあるが、一般論として通用する部分もあり、なんといっても戦略・戦術について古典としての意味は色あせていない。
クライゼヴィッツの主張の特徴は、戦争を無制限な暴力と捉え、敵戦闘力の殲滅を戦争の目的としている点である。しかし実際の戦争では様々な要因によって戦闘力の無制限な戦闘力の発揮が抑制されている。何故なら戦争は政治の一部であり、戦争は他なる手段を以て行う政治の延長に過ぎないからである。
現在では思想的に古くなっている面もあるが、戦争についての古典的な概念について、理解を深めるには有益な著作である。

お奨め度★★★★

イメージ 1

海戦から見た日清戦争

戸田一成 角川Oneテーマ21

日清戦争における日本、清国両海軍の激突をテーマとし、そこに至る過程や海軍力整備の流れ、個艦整備状況や戦略思想の発展、そして豊島沖、黄海の各海戦や高陛号撃沈、威海衛襲撃等の戦いや、日清戦後の動きについても記している。その中で筆者は三景艦と呼ばれるフランス式設計の主力艦が、日清戦争ではあまり役に立たず、むしろ英国式の高速巡洋艦「吉野」「浪速」といった艦の方が役に立ったということ。あるいはマハンの海軍理論が日本海軍だけではなく、日本国全体で一種のブームとして取り上げられたということ。さらには清国での海軍増強計画についても触れ、その中には日本海軍を圧倒できるような恐るべき建艦計画等もあったことなどを取り上げている。
ページ数が少ないだけにあまり細かい点についての記述は見られないが、それでも日清戦争における海軍作戦についていくつか新鮮な知識を得ることができる点、評価したい。

お奨め度★★★

イメージ 1

メルトダウン

大鹿靖明 講談社

2011年3月11日、未曽有の大地震が東日本一帯を襲った。東日本大震災である。この時の地震と津波の影響により東京電力福島第1原子力発電所は電源喪失の事態となり、冷却機能を失った原子炉は次々と炉心融解(メルトダウン)を引き起こした。世界最大規模の原子力災害となった福島第1原発事故である。
本書は地震発生及び津波による被害発生から電力喪失、炉心融解に至る事故の過程を追い、地震発生後1週間における福島第1原発と東京電力、そして日本政府の動きを明らかにしている。また本書は地震直後の状況のみならず、事故発生後の東電再生やエネルギー政策の推移、さらには大飯原発再稼働問題まで話を広げている。本書を読むと、地震発生後の東電及び日本政府の混乱した状況や東電の体質的欠陥が明らかになり、福島原発事故が単なる天災というよりは人災の面を強く持っていたことがわかる。
本書を書いた大鹿氏は朝日新聞系のライターなので、どちらかといえば「反原発」の姿勢が強い。しかし筆致は全般的に中立的な視線を保っており、その点は好感を持てる。ただ(これは好みの問題だが)福島原発の現場に関する記述が事故直後およそ1週間(自衛隊機による空中放水とその後の自衛隊、消防庁による地上からの放水まで)に限定している点、やや残念だ。一般に「危機を脱した」と認識された事故後1週間後以降について、もう少し詳しく知りたいと思った。
原発については賛否両論があり、国民的な合意形成はできていないと思う。私個人についていえば、事故前は原発推進派であった。しかし事故によりいわゆる「原発安全神話」が崩壊し、個人的な考え方も変えなければならないと思っている。勿論左翼的な「反原発運動」に与するつもりは毛頭ない。しかし東京電力を始めとする電力各社の時代錯誤的な体質や政府の無策ぶりを見るにつけ、原子力という「危ういエネルギー」をこんな人達に委ねるのは「危うい」と感じている。「原発を直ちにゼロ」というのは現実的な解とは思えないが、原発への依存度は減らしていく必要があるだろう。

お奨め度★★★★

イメージ 1

ソフトウェアテスト技法

ボーリス・バイザー 日経BP出版センター

ソフトウェアの品質はレビューとテストによって保証されている。費用対効果を考えれば、レビューの方がテストよりも有益であり、レビューでバグの過半を取り除くのが望ましい。しかし現実の組織ではレビューによるバグ検出率が十分とはいえず、テストに依存している現実がある。また一部のバグはレビューでは発見が困難であり、テストによるバグ検出が不可欠である。
本書はソフトウェアテストの進め方について工学的な視点から論じた著作である。本書ではいわゆる「かくあるべき」いった「べき論」を極力排し、数学的や工学的な手法によるテスト手法の説明に多くのページを割いている。ソフトウェアテストは、大きく分けると、仕様に着目した「ブラックテスト」と構造に着目した「ホワイトボックステスト」に分けられる。本書はホワイトボックステストに重点を当てている。
本書で取り上げられてる手法は数多いが、本書の中核となる考え方がフローグラフとカバレッジである。フローグラフとは、ソフトウェアの処理の流れを示したグラフで、古典的なフローチャートとは似て非なるものである。本書はフローグラフを処理の流れだけではなくデータ、トランザクション、ドメインといった分野に適用し、それぞれの問題について最適なテスト設計方法を紹介してる。また背景となる論理式や行列式といった数学的分野にも着目し、それぞれ解説を加えている。
本書はソフトウェアテストのバイブル的な存在であり、ソフトウェア品質に関わる者にとっては必読の著作と言って良い。しかし本書は専門的な内容も含んでおり、その全て理解するのは容易ではない。本書の使い方としては、本書の概要をまず理解した上で、後は実務での必要に応じて本書の詳細を読み進めていくというのが正しい使い方ではなかろうか。

お奨め度★★★★★

イメージ 1

特設巡洋艦砲艦入門

大内建二 光人社NF文庫

特設巡洋艦とは所謂仮装巡洋艦のことで、主に英独の海軍を中心に活躍した。本書では英独及び我が国における特設巡洋艦の特徴と整備状況、またその戦歴をエピソード的に振り返る著作である。正直読み物としてみた場合、あまり面白くないが、普段取り上げられることの少ないテーマだけに、そういった点では貴重な著作と言えるかもしれない。

お奨め度★★

↑このページのトップヘ