もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

カテゴリ:読書 > スポーツ

イメージ 1

プロ野球の本当の実力がわかる本2013-2014

内容は大袈裟だが、内容は薄い。単なるデータブックにセイバーメトリクスで味付けをしただけ、と書けば酷すぎるだろうか?。このような本であれば、年内に発売されていれば価値があったかもしれないが、この時期に発売されてもあまり価値がない。
内容的にはデータが多すぎて読むところが少なすぎる。

お奨め度★

イメージ 1

マネーボール

マイケルルイス 中山有訳 早川書房

セイバーメトリクスという言葉は、近年メジャーリーグやNPB(日本プロ野球)でも時々使われる言葉である。私も正確な意味を知っている訳ではないが、一言で言えば「野球選手の能力を今までよりも正確に評価しようとする際の指標」とでも言うだろうか。だからスタッツと呼ばれる従来の指標(打率、防御率等)が全く役に立たなくなった訳ではなく、これらの指標の価値を認めながらもこれらの指標では表現できていない選手の能力を表す指標(あるいはそのような指標を探し出す試み)と表現しても良いだろう。例えばセイバーメトリクスを代表するOPSという指標にしても、出塁率と長打率を合計しただけの数値だが、そのような数値で選手の能力全てを評価できるかというと、そうではない。結局の所セイバーメトリクスが万能なのではなく、「選手にとっての価値とは何か、それに最も寄与する能力は何か、その能力を端的に示す指標は何か」という問いかけがセイバーメトリクスなのではないかと思っている。
前置きが長くなった。本書「マネーボール」は、そのようなセイバーメトリクスを導入する立役者となったメジャーリーグ球団「オークランド・アスレチックス」とそのGMビリービーンの物語である。彼は自身のメジャーリーグ体験(彼自身前途を有望視されたメジャーリーガーだった)等から基づき、これまでのスカウト制度や選手の評価が全く実情に合っていないことに気づく。そこで彼は野球チームの役割とは何か、といった点から分析を始めていき、勝ために必要な人材とそのために投資効果の高い投資を求めて選手を探す。そしてその一方で投資に見合わない選手はどんどん切り捨てていき、チームを強化していく。
彼の考え方はユニークである。まず球団の役割とは勝つことと定義する。何だかんだ言っても強いチームには客が集まるし、弱ければ集まらない。次に勝敗に最も寄与するファクターは何かを定義する。それは得点と失点である。多くの得点を獲得し、失う失点を減らした球団が勝てるという論理だ。彼はそこで野球というゲームの仕組みに目を向けていく。野球とはつまりアウトを3つ取られる間に多くの走者をホームベースに迎え入れるゲームである。そこで彼が着目したのが出塁率。つまり何らかの形で塁に出る能力である。その一方で彼は犠牲バントや盗塁を嫌った。何故ならこれらの作戦は、相手にアウトを与える危険性がある(あるいはその必然性が高い)からだ。野球の本質を「アウトにならないこと」とした彼は、出塁率の高い選手を求めてチームを作っていく。
本書にはビーン以外にも多くの実在の人物が登場してくる。その多くはメジャーリーガーで、我々が知っている人物もいるが、多くの選手は我々の知らない選手たちであろう(メジャーリーグに詳しい人は別として・・・)。そういった面で残念ながら日本人の我々は本書の魅力を十分に味わうことはできない。
しかしそれでも本書は読者に対して新しい野球観を提供せずにはいられないだろう。

お奨め度★★★★

イメージ 1

セイバーメトリクス・リポート1

岡田友輔 デルタ出版

セイバーメトリクスとは、統計学的手法に基づいた野球についての客観的な研究である。セイバーメトリクスといえば、OPSとかRSAAとかDERとかいったような難解そうな指標を思い浮かべるが、本質はそこではない。セイバーメトリクスの本質とは、統計的な手法にある。チームに勝利を導くために必要とされる選手の資質は何か。主観や過去の名声によるバイアスを回避し、より客観的・統計的な手法で分析するのがセイバーメトリクスである。
本書は2011年度のNPB(日本プロ野球)のデータに基づき、セイバーメトリクスの考え方で将来動向やチーム別の強み・弱点を明らかにしている。データがやや古いのが難点だが、世間的に評価の高い選手とセイバーメトリクスで評価されている選手の一致、不一致が面白い。また選手に対する評価以外にも、送りバントや盗塁有効性、野手・投手の最も高いパフォーマンスを発揮する年齢は何歳か、等といった分析が面白かった。

プロ野球に興味のある向きにはお奨めしたい。

お奨め度★★★★

イメージ 1

あぁ、阪神タイガース

野村克也 角川書店

北京オリンピックでは予想だにしなかった惨敗に終わった星野ジャパン。そんな星野監督とノムさんの「場外乱闘」が少し話題になっていましたが・・・・。
今回はそんな野球関係の書籍を紹介いたします。

今回紹介する一品は、私が先日大阪方面へ出かけた際、立ち寄った本屋で見かけたので思わず購入してしまったものです。あの「ノムさん」こと野村克也監督が、自ら阪神タイガースを率いた3年間を中心に、阪神タイガースというチームについて語った著作です。

この本、とにかく面白い。私自身が「虎キチ」故に面白く感じるのは勿論ですが、そういった点を割り引いても、阪神タイガースという組織の弱点について的確に指摘していると思います。「マスコミに甘やかされて増長した選手たち」「適切な補強をしないフロント」「人間教育の欠如」等、読んでいて「なるほど」と思わせる指摘に満ちています。
また組織論としてみてもこの本は興味深いです。
ダメな組織。そこには「すごく悪い人が1人」いて組織を弱体化させる、のではなく、様々な要因が重なり合ってダメな組織が出来上がる。私自身が実世界でそういった組織を見る機会が多いだけに、考えさせられる部分が多かったです。本書で語られる野村氏自身の様々な失敗談は、そのまま我々自身に応用できそうな話ばかりです。

無論、野村氏の指摘が全て正しい訳ではありません。意地悪な言い方をすれば「自分の失敗を全て組織の責任に転嫁している」という言い方もできます。例えば氏は自らの野球理論が浸透しなかった理由を「選手側の幼稚さ」に求めていますが、必ずしもそうは言えないでしょう。相手が幼稚であれば幼稚な相手に相応しい対応の仕方があったはず。相手がいつも自分のレベルに合わせてくれるとは限らないというのはよくある話です。相手の能力、背景、精神状態も配慮せず、一方的に「ボヤキ」を繰り返すようでは、如何にその野球理論が優れていても選手たちは離れていくでしょう。

野村氏の後を継いだのが星野仙一氏です。ご存知の通り星野氏は、就任後2年目でタイガースをリーグ優勝に導きました。本書ではその星野氏についても触れていますが、星野氏と野村氏の一番の違いは、野球理論の優劣ではなく、人間としての器の大きさではないかな、と本書を読んでいて少し感じました。

お奨め度★★★★

↑このページのトップヘ