歴史群像2024年2月号
学研
特集は「日本陸軍のロジスティクス」。日露戦争紀における日本陸軍の兵站に着目し、通説に反して日本陸軍が同戦争せ兵站を重視していたことを実例を挙げて説明している。中でも児玉源太郎や大山巌、あるいは軍事面ではあまり高い評価を得ていない山県有朋といった重鎮たちは兵站を重視し、若手参謀たちが主張するような急進撃を制止する側に回っていたことは興味深い。
第2特集の中東戦争航空戦1948-73も興味深い内容であった。中東戦争といえば、米ソの代理戦争といったイメージが強く、特に当時最新鋭の装備が優先的に送られて実戦使用されていた感がある。本特殊記事では、その中でも航空戦に着目し、アラブ・イスラエル両陣営がいかにしてこの戦争を戦い抜いていったかを解説している。中でもエジプト軍のスカッドミサイルを核攻撃用と誤認してイスラエル軍が空爆したというエピソードは、常に国家存亡の淵に立たされているイスラエルの本気度を見た思いだ。
他には美保関事件やF6Fヘルキャット夜戦型、アメリカの戦争映画に関する記事も面白かった。特に美保関事件については、本来なら平時における艦隊演習時における安全確保について重大な教訓を得る場面であったにもかかわらず、「士気に関わるから」という理由で聯合艦隊司令部の責任を不問にしたり、(同情の余地があるとはいえ)当事者艦長の自殺によって問題点が分析されなかった点は、現代の日本組織にも通じる病根ではないかと感じている。そのような中、聯合艦隊の強い意向に逆らる形で本件を「過失による事故」とし、当事者全員を起訴した海軍法務局の判断は実に立派であり、法を曲げることを善しとしなかったその態度には学ぶべき点が多いと考える。
お奨め度★★★
歴史群像 2024年2月号[雑誌] - 中東戦争航空戦1948-73
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