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「マッカーサーの帰還」(以下、本作)は、1994年に米国Avalanche Press社から発売されたシミュレーション・ウォーゲームだ。テーマは1944年秋~冬にかけて戦われたレイテ戦で、1Turn=2日、1Hex=約3kmで、1ユニットは中隊~大隊規模で再現する。
本作の基本システムは「チットプル」で、天候によって決められた枚数のチットをカップに入れて、カップから引いたチットで示された陣営が移動、戦闘を行う。一般的なチットプルシステムでは、特定の司令部等が活性化して、その指揮下にあるユニットが行動するというものだが、本作は違う。チットの種類は「Full」「Half」「Choice」「Move」「Attack」等に分かれている。一番強力なチットは「Full」で、麾下の全ユニットが移動、戦闘ができる。また「Move」「Attack」はそれぞれ移動、攻撃が実施可能。「Choice」は移動か戦闘のどちらかを選択して実行可能。「Half」は移動力半分で移動できる、というもの。だからチットの引きによっては1つのユニットが1Turnに2~3回(又はそれ以上の回数)移動、戦闘できる。
その他、艦砲射撃、航空攻撃(日本機による航空攻撃アリ)、上陸作戦、空挺作戦等のルールもあり、オルモック湾に到着する日本船団とそれに対する米軍の航空攻撃もルールに含まれる。

今回、本作をプレイしてみた。選択したシナリオは一番大きなシナリオ5「レイテ・キャンペーン」。私は日本軍を担当した。

1Turn(10/20-21)

レイテ島東岸に米軍4個師団が上陸を敢行してきた。
北部タクロバン地区には、米第1騎兵師団、第24歩兵師団の2個師団。南部ダラグ地区には第96歩兵師団、第7歩兵師団がそれぞれ戦車、水陸両用戦車や砲兵部隊などを伴って海岸堡を確保したのである。

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不意を突かれた日本軍は海岸で包囲殲滅されそうになったが、辛くも包囲網を脱出し、戦線後方で後退していった。

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2Turn(10/22-23)

天候は3。3アクションである。チットは米軍Full、米軍Full、日本軍Full。つまり米軍が2回動いた後、日本軍が1回動くというパターンだ。米軍は主にレイテ平野の平坦地を内陸部に進んでいき、日本軍を南北に分断していく。日本軍は何とかジャングル地帯まで後退し、防衛ラインを構築する。

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3Turn(10/24-25)

天候3。3アクションだ。チットは米軍Full、米軍Full、米軍Half。つまり米軍が3回連続で移動してきた。米軍はタクロバン~カリガラ街道に進出し、レイテ中央部の山岳地帯と北岸のカリガラ平野の日本軍は分断の危機に陥る。

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海では日本の特攻機が初めて海上の米艦艇を攻撃した。米駆逐艦「ベンソン」が特攻機の命中により沈没。初めて特攻攻撃で撃沈された米艦艇となった。

4Turn(10/26-27)

実はこの時点でルール適用の勘違いがあった。1つは戦闘前退却ルール。ジャングル戦能力を有するユニットは、戦闘前に戦闘前退却を宣言して戦闘回避の可能性があるという。このルールを適用していれば、日本軍の一部は米軍の攻撃の前に撤退できていたかもしれない。
もう1つはチットの運用。日本軍は最低でも2枚のチットをカップに入れることができるのだが、そのルールを忘れていて1枚のチットしか入れなかった。おかげで米軍の一方的な行動をにつながってしまい、日本軍の不利を助長してしまった。そのためこのTurnより日本軍もチットを2枚入れていく。

天候3。3アクションだ。チットは、米軍Full、日本軍Full、日本軍choice。つまり米軍が1回動いた後、日本軍が2回動いたことになる。日本軍チットを2枚入れた効果が早くも表れた感じだ。日本軍は主力部隊を山岳地帯に後退させつつ、最前線に取り残された部隊でレイテ~カリガラへの補給ラインを遮断する。

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海上では重巡「ミネアポリス」と駆逐艦「クラックストン」がそれぞれ特攻機の命中を受けて大破。戦線後方に離脱していく。

5Turn(10/28-29)

天候は5アクション。初めてレイテの空は晴れ上がった。チットは、日本軍choice、米軍full、日本軍full、日本軍move、米軍fullである。日本軍が2Turn連続で米軍を上回ることとなる。日本軍は山岳地帯に後退していったので米軍の有力な機甲戦力が威力を発揮できなくなってきた。そのため個々の戦闘では日本軍が米軍に痛打を与える場面が増えてきた。しかしレイテ北部のカリガラ地区では、米軍部隊がカリガラ平野に迫ってきた。

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その頃、日本軍の増援部隊がオルモックを目指して進んでいたが、オルモック湾に入る手前で米軍機の攻撃を受けた。船団は散開して攻撃を回避。オルモックには向かわずに近くの港湾であるパロンポン(Palompom 2733)に入港した。第30師団、第102師団から選抜された部隊がパロンポンの地を踏んだ後、直ちにカリガラ平野へ向かった。

6Turn(10/30-31)

このTurn、序盤に米軍が2回連続でチットを引いたのでカリガラを占領した。パロンポンから前進してきた日本軍増援部隊は、その先鋒がようやくリモン峠に到達。防衛ラインを敷く。

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この時点で時間切れでゲーム終了。所要時間はセットアップを含めて約8時間であった。

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感想

第6Turnはショートシナリオの終了時点となる。この時点で米軍はカリガラを占領しており、北部地区を扱ったショートシナリオであるシナリオ2「第10軍団の上陸」では米軍の勝利となる。
一方、南部地区を扱ったシナリオ3「第24軍団の上陸」では、勝利条件はレイテ島西岸のバイバイ(Baybay 5120)又はレイテ山中のヘクス3718を米軍が占領していれば米軍の勝利となるが、今回は両地とも日本軍が掌握していたので、日本軍の勝利となる。トータルして考えれば今回は痛み分けといった所か・・・。まあ「戦闘前退却ルール」や「チットの枚数」を間違えていなければ、もう少しマシな戦いが出来たと思うので、個人的には上出来だと思っている。

ゲーム自体の感想だが、最初日本軍のステップロス処理が面倒に思えたのだが、プレイしてみるとそれほどでもなかった。また日本軍のダミールールについても、兵力に劣る日本軍にとっては有難いルールであり、ゲーム自体の緊張感も盛り上げる効果があったように思う。チットプルによるシステムは最初はやや面食らったが、実際にプレイしてみるとそれほど違和感はなかった。通常の「IGO-UGO」ルールにちょっと変化を加えたものという感じである。

ただし古いゲームなので、改善して欲しい点はいくつかある。一番改善して欲しいのはセットアップ情報。部隊名しか書いていないので該当するユニットを見つけるのが大変なこと。できれば最近流行りのセットアップシートが欲しい所。それが無理ならせめてユニットのステップ数を併記して欲しい。米軍はとにかく、ステップ毎に別ユニットが用意されている日本軍の場合、どのユニットが「デフォルト」なのか判断に迷う。まあユニット側に「デフィルト」ユニットと「交換用」ユニットを区別できるようなマーキングを入れてくれるというのもありだが・・・。いずれにしても現在の目から見れば、コンポーネントには改善の余地が大いにありそうだ。

まあ色々書いたが、レイテの陸戦を扱った作品自体が珍しいので、そういった意味で本作の意義は大きい。ゲームとしても決してつまらないものではなく、さらに十分にプレイ可能なレベルである。できれば今日のレベルにグレードアップしたコンポーネントで再販して欲しい作品である。

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