201027_Battleship

Battleship Victory: Principles of Sea Power in the War in the Pacific

Rovert Lundgren Nimble Books

「太平洋戦争におけるシーパワーの原則」というサブタイトルの本書は、太平洋戦争における戦艦の役割を戦略論の立場から再評価しようとする内容である。筆者によれば「戦艦は戦争の全期間を通じて決定的な役割を果たし続けた」とし、戦争のターニングポイントは「第3次ソロモン海戦で米戦艦2隻が日本戦艦「霧島」を撃沈した瞬間である」としている。
また筆者は戦時中における日本海軍の戦略を批判し、山本五十六の戦略が日本海軍を敗北に導いたとしている。筆者の言葉を借りれば「日本は戦前から準備していた全ての計画を窓から投げ捨てて、殆ど航空戦力だけで戦争を戦った」とし、日本海軍は決して戦艦に固執していた訳ではなく、むしろ戦艦を捨てて空母や航空戦力に過度に依存したとしている。同様の批判は日本海軍にもあり、特に旧海軍の砲術関係者から発せらることが多い。
このように筆者は空母や航空戦力をあまり評価せず、それよりも戦艦の役割を高く評価する傾向が強い。「空母の航空戦力は全ての艦隊や機動群を破壊することはできず、その一方で空母自体は爆弾1~2発で破壊される脆弱な存在である」と筆者は述べている。
筆者の主張にはかなりクセがあり、全てに合意するのは難しいが、「まあそんな見方もあるのかな」という感じで一歩引いた視点から読んでみると興味深い。また欧米人の著作にしては日本側の事情に明るく(生麦事件や佐藤鉄太郎、樋端久利雄まで言及していたのには驚いた)、欧米人から見た日本海軍や日本人についてその一端を知ることができる。

お奨め度★★★★