もりつちの徒然なるままに

ウォーゲームの話や旅の話、山登り、B級グルメなどの記事を書いていきます。 自作のウォーゲームも取り扱っています。

タグ:欧州海域戦

Pic_HMS_Janus


「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)に「フランス海軍」を登場させたい。

と常々思っていた。

今回シナリオ化に選んだのは、中近東における英仏最初の対決となったシドン沖海戦である。中近東での英連邦とヴィシー・フランスとの対決。そのサイドショー的に戦われた海戦だ。詳細は 前回の記事 を参照されたい。

今回はテストの状況について報告する。

Turn00


1Turn

CW_DD11a1941年6月9日正午過ぎ。英海軍駆逐艦「ジェイナス」は、僚艦3隻を従えてシリア沖の海上をパトロールしていた。その前日より始まった「エクスプローラ作戦=英連邦軍による中近東方面への軍事介入」に参加していた「ジェイナス」は、付近で行動中と思われるヴィシーフランス海軍の大型駆逐艦を捜索中なのであった。
午後1時を少し回った頃、「ジェイナス」は前方に駆逐艦のマストらしいものを発見した。どうやら駆逐艦の艦影らしい。さらに接近して調べようとした所、怪しい艦影は俄かに速度を上げて右へ120度旋回。遁走の素振りを見せたのである。

Turn01


2Turn

FR_DD31a「艦影はフランス海軍のゲパール級駆逐艦です」

見張員の声が飛ぶ。
「ジェイナス」は最大戦速まで増速。僚艦3隻もそれに従う。距離約12km。敵艦に発砲の閃光煙が上がった。敵が射撃を開始したのだ。急行列車のような、と、表現される砲弾の飛翔音と共に「ジェイナス」に周辺に水柱が上がる。2発の中口径砲弾が「ジェイナス」に命中する。最初の1発は幸運にも不発弾であったが、もう1発が艦橋付近に命中して炸裂。射撃指揮所の一部を破壊する。

Turn02


3Turn

FR_DD32a敵はさらに右へ旋回。英艦隊から「ケツを見せる」ような機動を行う。この位置では魚雷攻撃は無理だ。

「敵2番艦を狙え」

「ジェイナス」艦上から各艦に命令が飛ぶ。敵艦の放つ主砲弾の水柱に囲まれながらも、「ジェイナス」が初弾を放った。続いて僚艦も発砲。目標は敵の2番艦。1隻でも命中弾を与えて脱落させれば、兵力に勝る英艦隊がそれをなぶり殺しにできるという算段だ。しかし距離12kmは駆逐艦の主砲にとってはやや遠すぎた。発砲できたのは「ジェイナス」と2番艦の「ジャッカル」のみ。後の2艦は射程距離や射角の関係で発砲できないでいる。

Turn03


4Turn

CW_DD12a「面舵一杯」

「ジェイナス」は右へ舵を切った。僚艦もそれにならう。敵から見ると離れていく方向になる。追撃を企図する英艦隊が離れるのは意外だが、このままでは口径に勝るフランス駆逐艦にアウトレンジされてしまう。それを嫌っての回頭だ。さらに言えば、散開している英艦隊の隊形を一旦緊縮し、火力集中できる態勢にすることも狙いに含まれている。それを見たフランス駆逐艦は右へ舵を取って英艦隊の頭を押さえるような運動を行う。
さすがに鍛え抜かれた英艦隊である。複雑な艦隊運動を見事にやりこなして密集隊形を取ることに成功した。フランス駆逐艦は英艦隊へ砲撃を行うが、距離が開いたことと、変針直後の射撃のため、命中弾は得られない。

Turn04


5Turn

態勢を立て直した英艦隊は、単縦陣でフランス駆逐艦を追う。接近戦を嫌うフランス駆逐艦であったが、ここはチャンスと見て敢えて英艦隊の挑戦を受けることとした。138mm砲弾1発が「ジェイナス」に命中する。ボイラー付近で炸裂した炸裂弾によって「ジェイナス」は最大速度が20ktにまで低下。事実上戦闘力を失う。

Turn05


6Turn

FR_DD32b戦闘力を失った「ジェイナス」が列外に逃れていく。代わって英艦隊の先頭に立ったのは「ジェイナス」と同型艦である英海軍駆逐艦「ジャッカル」である。いずれも頭文字が"J"から始まる艦で、J級又はジャベリン級と呼ばれている。
フランス艦隊は左へ120度一斉回頭を行い、英艦隊を左後方へ見る位置に占位する。そして「ジャッカル」に向けて主砲を斉射する。しかし命中しなかった。
英艦隊は敵2番艦に向けて集中砲火を浴びせる。手ごたえあり。目標に命中の閃光が走った。後にこの時命中弾を受けたのは、フランス駆逐艦「ヴァルミィ」であることが判明する。

Turn06


7Turn

被弾した敵艦だが、その速度は落ちない。その刹那、俄かに右へ転じた敵艦隊は非敵側へ舳先をむける。「ジャッカル」と僚艦2隻は慌てて右へ転舵するが、一歩出遅れた。S字移動で再びこちらに舷側を向けてきた敵艦が発砲する。しかし敵の射撃も正確さに欠き、徒に「ジャッカル」の周囲に水柱を上げるだけであった。

Turn07


8Turn

Torp23DTGb「右前方より雷跡、複数!」

「ジャッカル」の艦上で見張員が叫ぶ。斜め前方から近づく魚雷。下手に舵を切ったら魚雷に横腹を見せることになる。ここは運頼みで魚雷群に突っ込むしかない。
この魚雷は、先に被弾したフランス駆逐艦「ヴァルミィ」が放った6本の魚雷である。23DTと呼ばれるフランス製魚雷は、直径約55xmで、一般的な魚雷の直径である53cmよりも一回り大きい。駆逐艦クラスに命中すれば、良くて大破、下手をすれば1発轟沈である。
果せるかな、6本の魚雷のうち、1番左側を走っていた魚雷が「ジャッカル」の艦首付近に命中した。魚雷の爆発により「ジャッカル」の艦首部は船体から脱落し、「ジャッカル」は首なしの状態になってしまう。これでは速度が出せずはずもない。「ジャッカル」は戦闘力を失った。

Turn08


9Turn

その後、2隻に減った英駆逐艦は、なおも執拗にフランス艦隊を追うが、砲力に勝るフランス艦隊の反撃に抗すべくもなかった。3隻目の駆逐艦「アイシス」が被弾により戦闘力を失った時、この戦いは事実上終わりを告げた。

Turn09


両軍の損害

英艦隊

中破;駆逐艦「ジェイナス」「ジャッカル」「アイシス」

ヴィシーフランス艦隊

小破:駆逐艦「ヴァルミィ」

結果:ヴィシーフランス海軍の勝利。

感想

以前から感じていたことだが、小型艦艇同士の戦いが些か「地味」である。特殊損傷を除くと結果が"0"か"1"しかなく、損害が徐々に増えていく感じの戦いになる。さらに特殊損傷も確率1/10の弾薬庫命中以外は一気に大破・轟沈するような結果が乏しい。今回の結果もそうだが、やたらと「中破」の結果が増える要因としては、損害の出方が「少しずつ増えていく」スタイルであることによる影響が大きい。さらに言えば、相手が小型艦の場合に複数の砲弾が同時に命中する可能性が小さいことも要因として挙げられよう。
これを解消するため、いくつかの改善策を盛り込みたい。詳細は 次回 報告の予定である。


「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)に「フランス海軍」を登場させたい。

と常々思っていた。
シナリオの概要が固まり、必要なユニット数がだんだん見えてくると、どうやら「ソロモン夜襲戦」と同じ仕様(カウンターシート1枚)で英独伊の主要3ヵ国以外に仏露2ヶ国の主要艦も何とか収まりそうであることがわかってきた。
それならばこの機会に欧州主要海軍国の主要艦はまとめて入れてみようではないか。これこそ「欧州海域戦」のタイトルに相応しい。まあその分、「ライオン」級戦艦とか、「H」級戦艦とかいった仮想艦はオミットさせて頂くことになるが・・・。

FR_BB10aさて、フランス海軍が出てくるとなると、次に問題になるのはシナリオである。WW2におけるフランス海軍といえば、メルセルケビール海戦、ダカール沖海戦、カサブランカ沖海戦等が有名である。
ここでやや唐突だが、「欧州海域戦」における登場艦の選択方針について説明したい。大雑把に言えば、以下の方針で選別している。

 1)WW2に参加した戦艦、重巡は原則として全艦ユニット化する。
 2)軽巡についてはシナリオ上必要な艦は当然ユニット化するものとし、それ以外は将来の追加シナリオで必要になりそうな艦を優先的にユニット化する。
 3)「ソロモン夜襲戦」で登場した艦は極力ユニット化しない。

CW_BB7a1)2)は説明不用だと思うが、3)については特に英艦について艦の重複を避けたいという意味がある(「ソロモン夜襲戦」と「欧州海域戦」ではユニットに互換性がある)。これは両方を保有している方々に対してできる限り多くの種類の艦艇ユニットを提供したいためである。ただしシナリオ上特に重要な艦は、例外的にユニット化している。例を挙げれば、「プリンス・オブ・ウェールズ」や「エグゼター」等である。

話をフランス海軍に戻そう。
フランス海軍が戦ったメルセルケビール海戦、ダカール沖海戦、カサブランカ沖海戦のうち、カサブランカ沖海戦はまず候補からは外れる。主敵が米海軍であり、「欧州海域戦」に用意した米艦ユニット(エラッタ修正の他、戦艦「テキサス」、重巡「タスカルーサ」等を追加の予定)だけでは到底再現できないからだ。将来追加シナリオ用として取っておく予定である。

Pic_bataille_Cassablanca


FR_BB8a残る2つ。メルセルケビール海戦、ダカール沖海戦について。中でもメルセルケビール海戦はダンケルク級戦艦と英艦隊との対決という興味深いシチュエーションである。しかし問題があった。先の3)の条件に引っ掛かってしまう艦船が両方の海戦に含まれているのだ、メルセルケビール海戦での英軽巡「エンタープライズ」、ダカール沖海戦での豪重巡「オーストラリア」である。両艦とも既に「ソロモン夜襲戦」でユニット化済なので、今回ユニット化の予定はない。代用艦を用意するとか、特例でユニット化するとか、対策がない訳でもなのだが、まあ、超メジャーテーマでもないし、別冊用に取っておくのも悪くない。そう思ってこれらの海戦はシナリオ化を見送った。(興味ある方は自作してみてください)

Pic_bataille_Strasbourg_03-07-1940


とはいえ、折角フランス艦をユニット化するのだから、フランス艦の登場するシナリオも1本ぐらい用意したい。では何か良いシナリオはないものか。そう思って資料を漁っていると、面白そうなシチュエーションが見つかった。1941年6月頃に起こった中近東における英連邦とヴィシーフランスの戦いだ。
WW2の中でも欧州戦については「興味あります」程度の知識しかない私にとって、1941年6月における中近東の戦いなんて守備範囲外。人から話を聞けば

「そういえば、そんな戦いがあったようですね。大昔に購入したGDWのエウロパシリーズでそんなシナリオがあったような、なかったような・・・」

という程度の認識である。
FR_DD31aだから戦いの背景についてはWikipediaレベルの知識でしかないのだが、そこでの海上戦が結構派手で面白い。何でも同海域に配備されていたヴィシーフランスの超駆逐艦2隻が、遥かに強力な英艦隊を相手に結構善戦しているらしいのだ。しかも当時は有名なクレタ島攻防戦の真っ最中。英地中海艦隊は非常に苦しい時期だったのだが、それでも恨み重なるフランス駆逐艦を撃滅せんと、なけなしの艦隊をシリア沖に派遣したらしい。ちなみにフランス超駆逐艦は40ktを超える快速を有しているので、英艦隊の追撃を余裕で振り切ったそうである。WW2で良い所が殆どなかったフランスにとって、胸のすくような話ではないか。

Pic_Le_Fantasque_Destroyer


今回シナリオ化に選んだのは、中近東における英仏最初の対決となったシドン沖海戦である。これは上陸してきた英連邦軍(オーストラリア第7師団)に対する艦砲射撃任務に出撃したヴィシーフランスの超駆逐艦2隻が、その帰路に哨戒中の英駆逐艦4隻と遭遇したというもの。個艦性能ではフランス艦が優っているが、兵力では英連邦が優っている。その時の状況をシナリオの序文より追ってみよう。

1941年4月、イラクで反英クーデターが勃発した。ドイツはこの動きを歓迎し、ただちにヴィシー・フランス政府に対してベルリン、バクダット間の航空路開設のためヴィシー・フランス占領下にあるシリアの飛行場使用許可を求めた。ヴィシー・フランス政府はこの要請を受け入れ、5月9日にイラク北部のモスルへ向けたドイツ機がシリアで燃料補給を行った。
一連の動きに脅威を感じた英国は、中近東方面への軍事力投入を決意。イラクにおけるクーデター鎮圧を行うと共に、オーストラリア軍、インド軍及び自由フランス軍等からなる地上部隊が、6月8日にヴィシー・フランス領シリアへの侵攻を開始した。 同方面におけるヴィシー・フランス海軍兵力は、超駆逐艦と呼ばれる大型駆逐艦2隻とスループ艦1隻、潜水艦3隻等である。超駆逐艦とは、イタリア海軍に対抗すべくフランス海軍が整備を進めていたものだ、通常の駆逐艦に比べると砲撃力や速度が優っていた。
6月9日早朝、パレスチナ方面から北上中のオーストラリア軍に対する艦砲射撃任務に出撃してきたヴィシー・フランス軍の超駆逐艦2隻は、午後になってシドン沖で英艦隊と遭遇した。これはフランス艦隊を求めて哨戒中の英駆逐艦4隻であった。イタリア艦隊との対決を想定して建造されたフランス超駆逐艦が、初めてその威力を実戦で発揮しようとしていた。


(上記の序文、私の乏しい知識で書いたモノなので、間違いがあればご指摘くださいませ)

シナリオの説明は以上である。 次回 は、テストの状況について紹介する。

「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)で地中海の戦いを再現してみる。 以前に紹介したカラブリア沖海戦 を再度試してみる。シナリオの内容については前回の記事を参照されたい。

Turn00


1Turn

前回同様、巡洋艦同士の遠距離砲撃戦で戦いは始まった。しかし両軍とも命中なし。

2Turn

CW_CL38a最初に命中を得たのは英艦隊であった、軽巡「ネプチューン」の放った主砲斉射が伊軽巡「アルベルト・ディ・ジュッサーノ」を夾叉し、1発の6インチ砲弾が「ジュッサーノ」に命中したのだ。水中弾となったその1発は「ジュッサーノ」の舵機付近に命中し、一時的に「ジュッサーノ」は操舵不能の状態となってしまう。

Turn02


3Turn

IT_CL1aイタリア巡洋艦部隊は損傷した「ジュッサーノ」を列外に逃がすことにした。複雑な艦隊運動を行うイタリア艦隊。そこへ英巡洋艦の砲火が降り注ぐ。駆逐艦「ヴィットーリオ・アルフィエーリ」と巡洋艦「アルベルト・ディ・ジュッサーノ」がそれぞれ命中弾を受けたが、いずれも被害は軽微であった。

Turn03


4Turn

両軍の戦艦が戦いに介入してきた。英戦艦「ウォースパイト」と伊戦艦「ジュリオ・チェーザレ」が距離16Hex(約24km)で激しい砲火を応酬するが、お互い命中弾がなかった。

Turn04


5Turn

CW_BB7a 英戦艦「ウォースパイト」の15インチ砲弾1発が伊戦艦「ジュリオ・チューザレ」に命中した。「チェーザレ」の損傷は比較的軽微であったが、このまま戦い続けるのは危険だ。
イタリア側もようやく反撃が奏功し始めた。軽巡「ルイージ・アブルッツィ」が主砲射撃で英軽巡「オライオン」が夾叉を受けた。こちらは夾叉のみで命中弾はなかったが、次の瞬間、英軽巡「シドニー」に伊軽巡「ジュゼッペ・ガリバルディ」の主砲弾が命中した。こちらは「シドニー」の通信室に命中し、英側艦隊指揮に若干の混乱を引き起こした。

Turn05


6Turn

IT_CL11a 伊軽巡はなおも有効な射撃を継続し「ルイージ・アブルッツィ」は英軽巡「オライオン」に2発命中弾を与えた。「オライオン」はあと1ダメージで小破状態になってしまう。
英艦隊は戦艦「ウォースパイト」が戦艦「ジュリオ・チェーザレ」にさらに15インチ砲弾を1発命中させた。そろそろこちらもヤバイかも。このTurnから英戦艦「マラーヤ」が砲戦に加わった。「マラーヤ」は伊戦艦「コンテ ・ディ・カブール」に対して15インチ主砲弾を放ったが、こちらは命中弾がなかった。
英巡洋艦「オライオン」が伊軽巡「ルイージ・アブルッツィ」に対して反撃を実施した。1発が「アブルッツィ」の主砲方位盤付近に命中し、一時的に主砲方位盤が使用不能となってしまう。

Turn06


7Turn

CW_BB10a英戦艦「ウォースパイト」は、伊戦艦「ジェーザレ」に止めを刺すべく距離16Hex(約24km)主砲射撃を行う。が、そこは「チェーザレ」もさるもの。右へ60度変針を行い「ウォースパイト」の照準を躱す。そのため「ウォースパイト」の一撃は空振りに終わった。
しかし僚艦「マラーヤ」がクリーンヒットを得た。距離16Hex(約24km)で「マラーヤ」が「コンテ・ディ・カブール」を狙う。巨大な15インチ砲弾3発が大落下角で「カブール」の上部甲板に命中した。戦艦としては比較的防御力の低い「カブール」が15インチ砲弾の直撃に耐えられるはずもなく、「カブール」は第3砲塔を破壊され、戦闘力が大幅に殺がれてしまう(小破)。
巡洋艦同士の撃ち合いは、先に被弾したイタリア側がサルヴォーチェージングで回避を行う。それが功を奏したのか、このTurn、イタリア巡洋艦で命中弾を受けたものはなかった。しかし艦隊最先頭を走っていた伊駆逐艦「ヴィットーリオ・アルフィエーリ」に英軽巡「ネプチューン」の放った6インチ砲弾2発が命中。「アルフィエーリ」は中破して事実上戦闘不能となる。

IT_CA3a一方、このTurnからイタリアの重巡部隊が砲戦に加わった。距離18Hex(約27km)という重巡にとっては殆ど射程距離ギリギリぐらいの距離であったが、イタリア重巡部隊は見事な射撃技量を示した。
伊重巡「ザラ」は英軽巡「リバプール」を砲撃。初弾から「リバプール」を夾叉し、8インチ砲弾2発が命中する。
また重巡「トレント」は軽巡「オライオン」にやはり2発の命中弾を与え、事実上「オライオン」を小破に追い込んだ。

Turn07

8Turn

IT_BB1a英巡洋艦戦隊は右へ60度変針し、伊重巡部隊の射程距離外へ一旦逃れた。
先手を取ったイタリア艦隊。戦艦「ジュリオ・チェーザレ」が変針しながらも距離14Hex(約21km)から戦艦「マラーヤ」に向けて主砲を放った。狙いは違わず主砲弾1発が「マラーヤ」に命中した。しかし威力に劣る13インチ砲では戦艦相手に威力不足は明らかで、「マラーヤ」には軽微な損傷が出ただけであった。
英艦隊の反撃。先に命中弾を受けた「コンテ・ディ・カブール」は急激な旋回で夾叉を回避する、が、「マラーヤ」はこれを逃さない。立て続けに2発の15インチ砲弾が「カブール」に命中した。中でも第1砲塔に命中した1発は砲塔天蓋を貫いて内部で爆発。砲塔内部の装薬の誘爆を引き起こして巨大な砲塔が台座から外れてしまう。「カブール」は最大速度10ktまで低下して大破し、事実上戦闘力を失った。

この時点で勝利条件上で英側の勝利が決定した。

Turn08


両軍の損害

イタリア艦隊

大破:戦艦「コンテ・ディ・カブール」
中破:駆逐艦「ヴィットーリオ・アルフィエーリ」


英連邦艦隊

小破:軽巡「オライオン」


その他、両軍とも小破に至らない軽傷の艦が数隻。

感想

非常に地味な展開となったが、史実を考えればこれぐらいが丁度良いのかも知れない。今回もイタリアが敗れたが、このシナリオでイタリア側で勝利するのはかなり難しいと思う。特にイタリア艦隊の強敵は戦艦「ウォースパイト」。改造によって装甲が強化されており、中遠距離戦闘でイタリア戦艦が搭載する32cm砲で「ウォースパイト」に致命傷を与えることは殆ど不可能だ。一方でイタリア戦艦は、英戦艦の主砲である15インチ砲に対して、殆ど安全帯を持っていない。イタリア戦艦が攻撃力のみならず防御力でも英戦艦よりも劣っているためだ。イタリア側としては、英戦艦との中距離砲戦は厳禁である。砲と装甲に勝る英戦艦によって一方的に撃破されるのがオチだからだ。
イタリア軍としては麾下の戦艦を牽制に使いつつ、遠距離から英戦艦に対して嫌がらせのような砲撃を行うのが良いと思われる。特に狙いは装甲の弱い「マラーヤ」と「ロイヤル・ザブリン」である。この2艦が相手なら、遠距離砲戦で運が良ければ弾薬庫貫通、轟沈が期待できる。ただし友軍戦艦が先に撃破されれば元も子もないので、敵弾が当たらないように行動する。
一方巡洋艦では重巡6隻を含む14隻の巡洋艦を有する伊艦隊に対し、英海軍は僅かに軽巡4隻でしかない。伊艦隊が圧倒的に有利な状況なので、伊艦隊としては巡洋艦を主体とした戦いが良いと思う。そのためには序盤に英巡洋艦の交戦を適当に切り上げて、第4,8戦隊を西側に後退させた方が良いかもしれない。そうすることで英艦隊に追撃を強い、伊艦隊の重厚な布陣に英艦隊を誘い込むのだ。ただし特別ルールで極端な後退戦術は制限されていることと、友軍の戦列同士が混淆して衝突事故を起こさないように注意されたい。

カラブリア沖海戦は、太平洋を含めても珍しい戦艦同士の砲撃戦である。参加艦艇は両軍合わせて約50隻に及び、その規模はガダルカナルやレイテを巡る諸海戦をも凌ぐものであった。このような大規模戦闘を「ソロモン夜襲戦」のシステムでシナリオ化するのは少し難しいかな、とも思ったが、何とか形になりそうで良かった良かった。

次はスパルティヴェント岬沖海戦に挑戦したい。今度はイタリア新鋭戦艦が登場するので、今度こそ英戦艦に一矢を報いることができるか。

BoC


BoC03


「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)で地中海の戦いを再現してみる。
挑戦するのは「カラブリア沖海戦」。イタリア側では「プンタ・ステロ沖海戦」と呼ばれる戦いだ。
今回、VASSALを使ったテストプレイを試みる。

前回まで --> こちら

8Turn

IT_BB2a両艦隊は急速に近づいてきた。そのため両軍駆逐艦同士も主砲射程距離内に敵を捉え、交戦を開始した。 イタリア側駆逐艦「カミシア。ネア」(ソルダティ級)は命中弾を受けて損傷す。 その一方で伊戦艦「ジュリオ・チェーザレ」が英戦艦「マラーヤ」に13インチ砲弾1発を命中させた。

Turn08a


9Turn

CW_DD9b接近戦を嫌った英艦隊は右60度回頭して並行砲戦を試みる。しかしイタリア艦隊は構わず前進。なおも英艦隊へ追いすがる。伊軽巡「アテンドロ」の6インチ砲弾1発が英軽巡「ネプチューン」に命中し、「ネプチューン」の2番砲塔を破壊した。また英艦隊の先頭を走る駆逐艦「ヌビアン」(トライバル級)も命中弾を受けていた。
ここをチャンスと見た伊駆逐艦は、距離がやや遠い(6Hex=9km)が、魚雷24本を発射した。英駆逐艦も負けじと魚雷8本を発射する。

Turn09a


10Turn

CW_CL40a両艦隊とも魚雷回避のために陣形が乱れる。それまで急激に距離を詰めていた彼我の艦隊は、魚雷の命中率を少しでも小さくするため、敵から離れる方向へ回頭していく。
そのような中、彼我の巡洋艦は激しく撃ち合う。伊軽巡「エマヌエレ・デュカ・ダオスタ」の射弾が英巡洋艦「オライオン」を捉えてこれに軽微な傷を負わせたが、英側の反撃はそれ以上にすさまじかった。軽巡「シドニー」が「ダオスタ」に2発の命中弾を与えて無視できない傷を負わせた他、戦闘開始早々にクリットを食らった大型軽巡「リバプール」がお返しとばかりに3発の6インチ砲弾を巡洋艦「エウジェニオ・ディ・サヴォイア」に命中させた。さらに戦艦「マラーヤ」が目標を伊戦艦から軽巡に変更し、最初の一撃で15インチ砲弾1発が伊軽巡「アルベルコ・ダ・バルビアーノ」に命中。「バルビアーノ」は一気に速度20ktまで低下してしまう(中破)。なお、このTurnにようやく戦列に加わった英戦艦「ロイヤル・ザブリン」が15インチ砲で伊戦艦「コンテ・ディ・カブール」を狙ったが、わずかに狙いが逸れて命中弾はなかった。

Turn10a


11Turn

CW_BB1aイタリア戦艦2隻は、英戦艦「ロイヤル・ザブリン」との対決を決意。右へ60度回頭し、「ロイヤル・ザブリン」と反航砲戦に入る。「コンテ・ディ・カブール」が凄腕を発揮。距離13Hex(20km)から3発の13インチ砲弾を立て続けに「ザブリン」に命中させた。しかし悲しいかな。13インチ砲の威力では、この距離で英戦艦の装甲を貫く運動エネルギーはなく、命中した3発のうち2発は「ロイヤル・ザブリン」の装甲板に命中して弾かれてしまった。

Turn11a


12Turn

IT_BB2bイタリア巡洋艦は戦術を変更し、4隻の巡洋艦で1隻を集中攻撃することにした。この方法だと命中率自体は個別射撃に比べて劣化するものの、1隻の敵艦を速やかにノックアウトするには好都合であった。4隻の軽巡から放たれた多数の6インチ砲弾のうち、5発が英軽巡「オライオン」に命中した。「オライオン」は中破し、その速度は20ktまで低下してしまう。
イタリア戦艦2隻は健気にも格上の戦艦と戦う。このTurn、素晴らしい腕前を披露したイタリア戦艦2隻は、実に6発もの13インチ砲弾を英戦艦「ロイヤル・ザブリン」に命中させた。しかしそのうち実に4発が「ロイヤル・ザブリン」の装甲に跳ね返され、「ロイヤル・ザブリン」は戦闘航行に支障がなかった。イタリア戦艦の艦上で艦長達が悔しがる姿が目に浮かぶ・・・。

「えーい(英)、連邦軍の戦艦は化け物か・・・」


「ウォースパイト」が距離10Hex(15km)から伊巡洋艦を砲撃する。15インチ砲弾2発が軽巡「エマヌエレ・デュカ・ダオスタ」に命中した。誘爆を起こした「ダオスタ」は次の瞬間轟沈した。本海戦を通じて初の沈没艦である。
また英戦艦「マラーヤ」が距離16Hex(24km)から伊戦艦「ジュリオ・チェーザレ」に15インチ砲弾1発を命中させた。「チェーザレ」小破。

この時点で英側が勝利条件を満たしたので、このシナリオは英側の勝利で終了した。

Turn12a


両軍の損害

イタリア艦隊

沈没:軽巡「エマヌエレ・デュカ・ダオスタ」
中破:軽巡「アルベルコ・ダ・バルビアーノ」「アルベルト・ディ・ジュッサーノ」
小破:戦艦「ジュリオ・チェーザレ」、駆逐艦「カミシア。ネア」


英連邦艦隊

中破:軽巡「オライオン」
小破:軽巡「ネプチューン」、駆逐艦「ヌビアン」


その他、両軍とも小破に至らない軽傷の艦が数隻。

感想

カラブリア沖海戦は、WW2では最大規模の水上戦闘である。そのために「ソロモン夜襲戦」のシステムに馴染むかどうかやや不安があった。しかし試してみると意外と「それっぽい」感じが再現できたと思う。確かに史実に比べるとやや派手な展開になるが、そもそも史実が地味過ぎるので、このままシナリオにしても面白い訳がない。従って史実よりも少しだけ派手なぐらいが丁度良いと思っている。
そのような中でも昼間砲撃戦のダラダラした感じ。お互いに損害を恐れておっかなびっくり戦っている様は比較的上手く再現できているのではないだろうか。

今回のテストで気になった点を以下に列挙する。
 (1) 序盤イタリア艦隊が速度を設定するために無駄にCPを消費する傾向がある。これは無駄なので全艦シナリオ開始時の速度を5にする(今までは4であった)。
 (2) 戦艦を狙うよりも巡洋艦を狙ってVPを稼いだ方が有利な傾向がある。そこで勝利条件を見直し、戦艦の価値を高めた(それでもイタリア戦艦は、英戦艦を狙うよりも巡洋艦を狙った方が効率的にVP稼ぎが出来るだろう)。


以上の修正を適用した上で、もう1度ぐらい本シナリオを試してみたいと思う。

BoC04


BoC02


「欧州海域戦」( 「ソロモン夜襲戦」 の欧州戦線版)で地中海の戦いを再現してみる。
挑戦するのは「カラブリア沖海戦」。イタリア側では「プンタ・ステロ沖海戦」と呼ばれる戦いだ。
今回、VASSALを使ったテストプレイを試みる。

前回まで --> こちら

Turn00a



1Turn

IT_CL1aこのシナリオは英伊両艦隊が砲戦を開始時点で始まる。接触したのはお互いの巡洋艦戦隊で、英側が第7巡洋艦戦隊、伊側が第4,8戦隊だ。両軍とも軽巡4隻からなる。
距離14Hex(21km)で6インチ砲にとっては最大射程に近い距離であったが、イタリア巡洋艦が腕の冴えを見せた。6インチ砲8門装備の軽巡「アルベルト・ディ・ジュッサーノ」が、英巡洋艦で最有力の大型軽巡「リバプール」(6インチ砲12門装備)に2発の6インチ砲弾を立て続けに命中させたのである。大落角で飛来した6インチ砲弾のうちの1発はこともあろうに「リバプール」の機関室で炸裂。「リバプール」の速度は一気に10ktに低下してしまう。

Turn01a


2Turn

CW_CL52a英艦隊は厳しい決断に迫られた。速度の低下したリバプールを列外に逃がすが、それとも列内に留めるかである。英艦隊は「ネルソンタッチ」を選択する。すなわち「リバプール」は列内に留め、第7巡洋艦戦隊は全体の速度を15ktにまで低下させたのである。速度の低下した「リバプール」が集中砲火に晒される危険はあるが、6インチ砲12門搭載の有力艦を戦力外とするのを嫌っての決断だ。

果せるかな・・・。

距離21kmで両軍の巡洋艦同士が砲火を交わしたが、今度はお互いに命中弾がなかった。速度の低下した「リバプール」も緊急回避によって「ジュッサーノ」の夾叉を躱し、一応危機を脱した形となった。

Turn02a


3Turn

IT_CL11a英戦艦「ウォースパイト」が戦場に姿を現した。距離13Hex(約20km)から主砲による射撃を開始する。狙われたのは、先に「リバプール」に深手を負わせた軽巡「アルベルト・ディ・ジュッサーノ」。狙いが逸れて「ジュサーノ」のやや離れた海面に巨大な水柱を上げた。
このTurn、英側も最初の命中弾を得ていた。軽巡「ネプチューン」の放った6インチ砲弾1発が、イタリア軽巡「アルベルコ・ダ・バルビアーノ」に命中したのである。「バルビアーノ」の損傷は軽微である。対するイタリア軍も、6インチ砲10門装備の大型軽巡「ルイージ。ディ・アブルッチ」が英軽巡「オライオン」に命中弾1発を与えていた。

Turn03a

4Turn

CW_BB7a再び「ウォースパイト」の主砲が吠えた。巨大な15インチ徹甲弾が軽巡「アルベルト・ディ・ジュッサーノ」に吸い込まれていく。2発が「ジュッサーノ」に命中した。「ジュッサーノ」の速度は20ktまで低下し、列外に離れていく。また「ジュッサーノ」に続行する「アルベルコ・ダ・バルビアーノ」にも軽巡「ネプチューン」の放った6インチ砲弾が再び命中した。「バルビアーノ」の4番砲塔が破壊され、使用不能となる。

イタリア軍も2隻の戦艦が戦列に姿を見せた。前巻「コンテ・ディ・カブール」は13インチ砲10門で軽巡「ネプチューン」を狙う。「カブール」は初弾から「ネプチューン」に夾叉弾を得て、2発が命中した。15インチ砲弾に比べると威力に落ちる13インチ砲弾であったが、それでも2発の命中弾は「ネプチューン」に無視できない損害を与えた。

Turn04a


5Turn

イタリア第4,8戦隊の巡洋艦4隻は随伴駆逐艦と共に一斉に左へ回頭する。さらに「アルベルコ・ダ・バルビアーノ」は煙幕を展張し、敵から姿を隠す。「ウォースパイト」は目標を戦艦「コンテ・ディ・カブール」に変更し。距離14Hex(21km)から15インチ砲を放った。「ウォースパイト」は腕の冴えを見せて1発が「カブール」に命中する。

Turn05a


6Turn

CW_BB10aイタリア戦艦2隻は左へ変針し、煙幕を展開しながら英戦艦の砲火を回避する。後ろから追いかける「ウォースパイト」は「コンテ・ディ・カブール」に対してなおも砲火を送るが、煙幕に阻まれて命中弾はない。その頃、後方から追いすがってきた英戦艦「マラーヤ」が距離14Hexにイタリア戦艦を捉えた。轟然と火を噴く15インチ砲。狙われたのはイタリア戦艦「ジュリオ・チェーザレ」。1発が「チェーザレ」の上部甲板に命中し、小規模な火災を起こさせた。

Turn06a


7Turn

IT_CL7a機関部に被弾し、速度低下を起こしていた「リバプール」が復旧した。速度も25ktまで回復し、戦列に復帰する。
イタリア艦隊は巡洋艦隊が右へ変針し、英艦隊の左斜め前を圧迫するような布陣に展開する。また2隻の伊戦艦は単縦陣を維持したまま、サルヴォーチェージングを行って英戦艦の射弾を回避する。そこへ目がけて英戦艦「ウォースパイト」と「マラーヤ」、そして英第7巡洋艦戦隊の軽巡4隻が砲火を浴びせるが、わずかに「ネプチューン」が伊軽巡「モンテクッコリ」に対して夾叉弾を与えたのみであった。
イタリア側も戦艦2隻、そして新たに戦場に姿を現した第7戦隊の軽巡4隻が射撃を行うが、夾叉弾、命中弾ともになかった。

Turn07a


つづく

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