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Picket Duty(以下、本作)は、Legion Wargameが2013年に出版したソロプレイ専用のウォーゲームだ。テーマは1945年3~6月における沖縄水域の戦い。プレイヤーはフレッチャー級駆逐艦の艦長となり、襲いかかってくる日本の特攻機と戦う。Picket Dutyとは、沖縄周辺海域を警戒するレーダーピケット任務のことだ。

本作は1Turnが実際の1日を表し、1日は午前、午後、夜間の3フェイズに分かれている。戦いはフェイズを基準として進められる。
最初に天候と自艦を守ってくれる友軍戦闘機の数を決定する。続いて飛来する特攻機の機数を決定し、特攻機の配置、対空射撃、自艦の緊急回避、特攻機の命中判定、ダメージコントロール要員の配置、ダメージコントロール判定で1フェイズが終了する。これを1日3回実施し、最後に保守整備を行って1日が終わる。キャンペーンシナリオの場合には、数日間繰り返して勝敗を判定する。

まず最初ということで、シナリオ2「A Fiery Sunday Morning:May 25, 1945」をプレイしてみることにした。これは5月25日に菊水8号作戦と直面した米駆逐艦「ブレイン」(USS Braine, DD-630)の戦いを描いたものである。

準備

まず最初に艦長と8人の士官について能力を決定する。能力決定には専用のチットを用いる。チットには-2から+2まで5段階あり、+2が最高だ。また0が最も多い。今回は、Damage Control Officer(ダメコン士官)とRepair Chief 1(第1修理班長)が能力+1で優秀。逆にRepair Chief 2(第2修理班長)が能力-1、Repair Chief 3(第3修理班長)が能力-2と無能である。
次にFDT(Fighter Direction Team = 戦闘機誘導班)が乗艦しているかどうかを判定する。2d6で5以上なら乗艦だ。FDTが乗艦していると、戦闘機の配置で有利になる。出目は"9"なのでFDTは乗艦していた。
次にSFS(Surface Fire Support = 水上火力支援)の数を判定する。これも専用の表で判定し、0~2個のSFSが登場する。SFSが0個だと不利になる。出目は"7"(2d6)で、SFS 1個が登場する。
最後に陸上レーダーの作動状況を判定する。この時期、伊江島や座間味等、3ヶ所の陸上レーダーが既に設置されていた。これらのレーダーが稼働していると、特攻機を早期警戒する上で有利になる。2d6で5以上が出れば陸上レーダーは稼働している。出目は"9"だったので、陸上レーダーは稼働してくれた。

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午前

まず天候チェックを行う。2d6で出目は"4"。結果は「雨」であったが、面白くなさそうなので、「晴れ」に変更した。続いて援護戦闘機の数を決定する。今日は「菊水」攻撃が実施されるので、専用の表(Table 7-3)を使って戦闘機数を決定する。ダイス判定の結果、空母機7機と海兵隊機7機が上空援護に飛来した。
続いて来襲する日本機の機数を決定する。今日は「菊水」攻撃が行われるので、Table 22を使用する。2d6で出目は"3"。日本機9機が飛来した。Table 8-3で攻撃隊を複数の"wave"に分割する。5機が第1波、4機が第2波となる。
第1波で飛来してきたのは、零戦、九七艦攻、二水戦、零式観測機、そして最新鋭の流星改、と、編成もバラバラ。日本人としては、

「こんなバラバラな編成で来るわけねえよ」

と突っ込みたくなる。それぞれの進入高度、進入包囲をダイスで決める。

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戦闘機が流星改を撃墜し、対空砲火が零戦を爆散させた。残った二水戦と九七艦攻は長い炎を引きつつ「ブレイン」に迫ってくる。もう1機の零式観測機も対空砲火を受けながらなおも突進を止めない。二式水戦は炎を引きながら「ブレイン」の手前に墜落。しかし残った2機は被弾で炎上しながらも、次々と「ブレイン」の左舷後部に突入した。1機は水線下の倉庫に命中。もう1機は艦中央部の5インチ砲に命中した。5インチ砲は損傷したものの、手動で操作が可能である。さらに弾薬庫にも被害が及んだが、幸い誘爆も浸水もなかった。

続いて4機に日本機が迫る。二式複戦、一式戦、九七重爆、そして新鋭の偵察機、彩雲だ。なんだよ、この編成。絶対あり得ねぇ・・・。

突っ込んできた4機に対して、1機は40mm機関砲を受けて爆散。2機は「ブレイン」の至近距離に墜落したが、直接的な被害はなかった。最後の1機は炎上しながらも後部から甲板に突入。40mm連装機関砲1基を破壊した。

3機もの特攻機を食らった「ブレイン」だが、損害復旧班が走り回る。火災を鎮火し、弾薬庫を修理し、さらに火砲も修理する。午後になる前に「ブレイン」は殆どその機能を回復した。

午後

午後になると、今度は11機もの日本機が「ブレイン」を襲った。最初に6機が突入してきたが、3機を友軍戦闘機が撃墜。さらに対空砲火で1機を爆散させた。残った2機は「ブレイン」の至近海域に突入し、「ブレイン」の船体に軽微な損傷を与えた。
さらに5機の特攻機が現れたが、対空砲火と戦闘機によって全機撃墜に成功し、1機が至近海面に突入したものの、「ブレイン」に実質的な損害はなかった。

夜間

夜に入ると日本機の空襲はなく、「ブレイン」にとって長い1日は終わった。

結果

「ブレイン」が生き残ったので米軍の勝利。

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感想

3機も特攻機が命中したのに、駆逐艦は殆ど無傷であった。何かルールを間違っているのだろうか・・・?。仮にルールミスがないとすると、駆逐艦の頑丈さが気になる所だ。あと本文でも触れたが、日本機の扱いが変である。様々なヒコーキが登場するのは良いが、陸軍の二式戦や三式戦、九七戦、さらには零式水偵や零式観測機、大艇等が特攻機として飛び込んでくるのにはやはり違和感を禁じ得ない。編成がバラバラなのも気になる所だ(実際には、特攻隊は概ね同一の機種で編成されている。エリア88じゃあるまいし)。
また折角様々な機種が登場してきても、それぞれのキャラクター性が乏しい点も寂しい所だ。一応単発機と双発機の違いはルール化されているが(双発機の場合、艦に命中した時のダメージが大きい)、それ以外は機種による違いはない。二式水戦のように凡そ特攻には不向きと思われる機種と、高速と大きな爆弾搭載能力を誇る流星改や彗星後期型が全く同じ扱いというのも寂しい所だ。

まあ日本人から見ると色々と不満の残る所だが、特攻攻撃を受けた米駆逐艦乗組員の苦闘を体験できるという意味では良いゲームだ思う。

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