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「Operation Dauntless」(以下、本作)は、1944年6月のノルマンディ上陸作戦に伴うカーン西方の戦いを戦術レベルで再現したシミュレーションゲームだ。1ユニット=小隊~中隊、1Hex=425ヤード、1Turn=90分(夜間は330分)というスケールから分かる通り、やや大きめの戦術級ゲーム(戦術作戦級)と言って良い。
本作のシステムについては、 以前の記事 で紹介済なので、詳細はそちらを参照されたい。


前回 キャンペーンシナリオの練習としてソロプレイを紹介したが、今回は対人戦を試してみることにした。
選択したシナリオは、18.5「The Campagin Game Operation Dauntless」。1944年6月25日から始まるドーントレス作戦全般を扱った本作最大のシナリオである。
下名はドイツ軍を担当し、選択ルールは19.1「射撃統制」及び19.11「対砲兵射撃」を採用した。またプレイの前にシナリオ18.4「The Battle for the Parc」を2Turnほどプレイし、ルールの感覚を確かめた。

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1Turn

UK49D_B_Linc以前にも紹介したが このシナリオの最初の4Turnは濃い霧の中の戦いとなる。長射程兵器は一切使えず、隣接ヘクスすら射撃できない。攻撃方法は近接突撃(移動中に敵のヘクスに突入して戦うやり方)のみに限定され、その他の手段では敵を攻撃できない。
また第1Turnのみに適用されるルールとして、英軍の移動支援砲撃ルールがある。英軍の突撃直前の支援射撃を表現するルールで、第1Turnのみ近接突撃時に英軍側に有利な2シフトが得られる。
上記ルールに関連し、ある特定のヘクスに配置される英軍部隊は第1Turnに真っすぐ南に向けて移動し、ぶつかる敵に近接突撃を仕掛けなければならないルールがある。いわゆる「万歳突撃」ルールだが、2シフトが使えるので有利にも思えるが、ドイツ軍の堅固な防衛ラインにまともにぶつかることになるので、どこまで有利なのかはわからない。

今回英軍は支配下の3個歩兵大隊全力を以てフォントネ・ル・プネル(以下、フォントネ)のドイツ軍陣地に対して正面攻撃を実施した。しかし拠点に陣取るドイツ軍の防衛ラインは堅固であり、英軍は大損害を被り撃退された。英軍はフォントネを1ヘクスも占領できず、あまつさえ歩兵戦力多数を失うことになったのである。ドイツ軍の損害は歩兵支援用の装甲車2ステップのみであった。

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2Turn

UK79AD_Churchill_141RACフォントネの正面突破が困難だと悟った英軍は、ドイツ軍の両翼を突破して戦線後方への雪崩れ込みを図る。戦線左翼(ドイツ軍から見た場合、左翼は西側)では、LINC歩兵大隊(薄緑)とHAL歩兵大隊(濃緑)がボウデル(BORDEL)川の浅瀬を渡って戦線後方に進入。こちたは渡河点をドイツ軍が押さえていたので、歩兵戦力のみによる浸透戦術だ(装甲車両は橋がないと川を渡れない)。

戦線右翼では、水障壁はないため、ドイツ軍戦線の外側を大きく迂回したRSF歩兵大隊(橙色)大隊がSRY戦車中隊所属シャーマン戦車の援護を受けつつフォントネ村の背後に回り込む。

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さらに英軍はチャーチル重戦車の改良型であるAVREとクロコダイル火炎放射戦車を増援として投入した。頑強なドイツ軍陣地に対する突破戦力の切り札を期待してのことである。

GE_Tiger_1_101ドイツ軍はなけなしの増援ポイントを投入して第101重戦車大隊所属のティーガー戦車3ユニットを増援として投入。戦線右翼に無造作に展開していたシャーマン戦車に対して果敢な近接突撃を敢行した。選択ルール19.1を採用していた効果もあって練度に勝るティーガー戦車(あのミハエル・ヴィットマンSS大尉が所属している)の威力は凄まじい。シャーマン戦車4ステップ(2個小隊)が瞬時にスクラップと化し、ティーガーの方は完全に無傷である。

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German_Michael_Wittmann_Tiger1


3Turn

UK49D_CP_RSFシャーマン戦車の損害に驚いたのか、英軍も戦車単独での布陣を改め、戦車と歩兵をスタックさせた。こうすることによってティーガーの練度面での優位を打ち消すことができるようになり、練度・性能に劣るシャーマン戦車でも反撃の可能性が生まれてくる。
連合軍は戦線後方での浸透戦術をさらに推し進め、ドイツ軍が守るテセルの森の一角を占領した。
戦線右翼では英RSF歩兵大隊が大きく迂回して戦線背後を伺う。

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4Turn

このTurnが霧の最終Turnである。英軍はドイツ軍の分散を強いるべく敵中後方に広く散開していた。
またフォントネ正面では、チャーチルAVRE特殊戦車に支援された部隊が、近接突撃によりフォントネの一角を漸く占領した。
ドイツ軍の方は、対戦車火力を強化するため第654重戦車駆逐大隊所属のヤークトパンター1ユニットを増援として投入した。そして重要拠点を中心に拠点防御を固めていく。

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5Turn

UK79AD_Churchill_82_RE 霧が晴れた。英軍はチャーチルAVRE特殊戦車を支柱としてフォントネの制圧地域を広げてく。またシャーマンはファイアフライ戦車もそれを直接・間接に支援する。ドイツ軍の戦車兵力はフォントネ正面には投入されておらず、フォントネ後方に回り込んだ英軍の殲滅に躍起となっていた。そのためフォントネ正面は連合軍戦車が跳梁する所となり、ドイツ軍の軽装甲戦闘車両は、連合軍戦車を避けるべく後退する他なかった。こうしてAFVよる優位を得たフォントネ正面の連合軍は、少しずつその占領地域を拡大していった。

フォントネの後方ではドイツ軍戦車の天下である。4号戦車やティーガー重戦車が連合軍の後方を断ちつつ包囲下にある英SRY戦車中隊のシャーマン戦車をなぶり殺しにしていた。連合軍は反撃したくても、下手に反撃するとARCによって倍返しを食らってしまうので、やられるがままであった。この戦線で失われたシャーマンはこのTurnだけで3ステップ(1.5個小隊)にも及び、その他歩兵部隊も3ステップを失っていた。

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6Turn

GE_ART_88mm英軍は歩兵1個大隊(DLI大隊=薄青)を増援として投入し、フォントネへの正面攻撃を実行した。しかし平地に2個歩兵中隊をスタックさせたことが致命傷になる。280mmロケット砲を含む強力な砲兵戦力を投入したドイツ軍。その間接射撃が致命的な威力を発揮した。突撃部隊は砲撃により大損害を被り、その上で低比率攻撃を強いられたため、歩兵2個中隊とキャリア1個小隊が壊滅。DLI大隊は一瞬にして戦闘能力を喪失した。
同じ頃、フォントネ南方へ浸透中であった英SRY戦車中隊とRSF歩兵大隊はドイツ軍の包囲攻撃を受けていた。重装甲を誇るチャーチルAVRE特殊戦車は、ドイツ軍の包囲を破って撤退を図ったが、ドイツ軍4号戦車からの射撃を側面後方から受けて撃破されてしまう。また先ほど来ドイツ軍戦車の攻撃を受けている英SRY戦車中隊のシャーマン戦車は、火力に勝るドイツ戦車の包囲攻撃を受けて壊滅した。また英RSF歩兵大隊の方も3個目の歩兵中隊を失い「崩壊」の適用を受けた。

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この段階で英軍は攻撃力が失われたと判断。この時点でお開きとした。

感想

ここまでの所要時間はセットアップを含めて約6時間である。このシナリオは両軍とも大部隊同士が登場するが、所要時間としてはデザイナーの主張する見積値の約2倍であった(デザイナー氏は1~7Turnのシナリオで所要時間3~4時間と主張している)。

今回の展開としては、前回のソロプレイとほぼ同様の展開となった。正面攻撃の危険、兵力分散の不利などはソロプレイで判明していたので、英軍が兵力を散開させてきたときもそれほど慌てることはなかった。むしろフォントネに対する衝撃力が殺がれるので、兵力分散は有難いともいえる。勿論渡河点や制高点といった重要拠点は敵に奪われないようにする必要があることは言うまでもない。
勿論英軍としても独軍に散開を強要させるという意味で分散攻撃は有効だと思う。ただしあくまでも主攻勢はフォントネに向けられるべきであろう。

ちなみに英軍プレイヤーから選択ルール19.1は独軍に有利過ぎるのではないかという意見が出た。確かにこれまでの展開を見ていると本シナリオは元々独軍が有利な上、19.1を入れると練度に勝るドイツ軍がさらに有利になることは否めない。そういった意味でゲームバランスを取るという観点からは「選択ルールなし」というのが妥当という主張も頷ける。という訳で 翌日、選択ルールなしで再戦 することになった。

(個人的には19.1は戦車戦の雰囲気が出ていて好きなルールなので、些か残念ではある)


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