210502_最悪の事故

最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか

ジェームズ・R・チャイルズ 高橋健次訳 草思社文庫

スペースシャトル「チャレンジャー」の空中爆発事故、スリーマイル島やチェルノブイリでの原発事故など、巨大システムによる事故は絶えない。本来は安全設計がなされている筈のシステムで何故事故が根絶できないのか。筆者は巨大マンマシーンシステムにおける事故発生のメカニズムを事例を交えて丁寧に説明している。
筆者は言う。人間は完璧ではなく、特に追い詰められた状況ではミスを犯す。さらに人はシステムが持っている筈の安全マージンをこっそり「つまみ食い」してしまう。そして巨大化したシステムは、一度事故を起こすと取り返しのつかない被害をもたらすものである。
本書は恐らく20世紀末か21世紀初頭に書かれたものと思われる。そのためその後に起こった巨大事故(スペースシャトル「コロンビア」の空中分解、福島原発事故、ニューヨークWTCビル倒壊等)は取り上げられていない。しかしこれらの事故にも筆者の述べる巨大システムの盲点が潜んでいることは疑いない。そういった意味で本書に内容は現在でも通用する内容である。そして残念ながら今度も巨大システムに起因する悲劇はなくならないだろう。
技術者であれば一度は読んでおきたい本である。

お奨め度★★★★