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Russian Front(以下、本作)は1985年に米国The Avalon Hill Game社(TAHGC)から発表されたシミュレーションゲームである。テーマは独ソ戦。1941年6月から始まる独ソ戦を、1Turn=1ヶ月、1Hex=25マイル(40km)、1ユニット=軍団(枢軸)~軍(ソ連)の規模で再現する。日本でもHobby Japan社からライセンス発売された。

なお、陸上ユニットの後退ルールについて、日本語訳による解釈から一部混乱を招いているようである。基本的には「常識的な」判断が正しいのだが、日本語訳での「補給源に近づく」という一言が混乱のもとになっている。要するに「真っすぐ行った先に補給源ヘクスが存在する方向へ後退しなさい」という意味(敵の方向へ後退してはいけない)なのだが、日本語ルールを素直に読むと誤った解釈になる可能性がある。対人戦の際には、事前に調整しておくべきだろう(相手が頑固なら、英文ルール(ネットで入手可能)を用意しておくことをお奨めする)。

基本システムは移動と戦闘の繰り返しで、装甲部隊による突破移動が加わる。特徴的なのは戦闘システムで、所謂「同一ヘクス戦闘」。戦いは1ユニット対1ユニットの形で解決されるため、過剰にスタックしてもあまり意味はない(耐久力が増えるという意味はある)。それよりも海空軍の支援が重要で、海空軍はそれぞれ戦闘力を加えることができる。もし両軍が空軍、海軍を同一戦闘に参加させていた場合、陸戦を解決する前に空戦、海戦の決着をつける必要がある。従って陸戦に介入できる海空軍は、それぞれどちらか一方の陣営のみとなる。

ルールは基本ルール、上級ルール、選択ルールに分かれているが、全部入れてもそれほど難しいゲームではない。難易度は一般的な中級ゲームといえる。シナリオは1941年から開始するシナリオの他、1942年、1943年から始まるシナリオも用意されている。またゲームの長さも調整可能で、最も短いシナリオは3Turnの長さで終了する。

本作について発売当時は「ロシキャンに代わる独ソ戦ゲームのスタンダードになるゲーム」とも評されていたが、今にして思えば結果的には「ロシキャン越え」はならなかったと言えそうだ。

今回、本作をVASSLでソロプレイしてみた。シナリオは1941年6月から始まる標準シナリオで、ルールは選択ルールを含めて全て採用した。

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41年6月

戦争が始まった。全世界が息を飲む戦争が。
プリピャチ湿地の北側では、ドイツ軍の北方軍集団と中央軍集団が大突破。リガを占領し、装甲部隊は敵の背後に回り込む。バルト海軍管区、西方軍管区のソ連軍は後方連絡線を遮断され包囲輪に陥る。彼らの大半はドイツ軍との激闘とドイツ軍の包囲によって壊滅。しかしヴィルナを守るソ連第3軍団(3-3-3)は連絡線を断たれながらも何とか持ちこたえた。

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南方軍集団はブレスト・リトブスク要塞を占領。こちらも敵後方に回り込んで包囲を完成させようとするも、こちらはソ連軍部隊の守備が固いため、敵中突破はならず。キエフ軍管区のソ連軍は大半が後退に成功した。

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このTurnの損害は、ソ連軍は歩兵13個、装甲5個のユニットを失った。ドイツ軍は、リガ、ブレスト、ルボフを占領した。その一方でドイツ軍歩兵3ユニットが失われ、その損害は決して小さくはなかった。

41年7月

バルト海沿岸では、ドイツ海軍のバルト海艦隊がタリン近海に接近。掃海活動を開始する。それを迎え撃つのはソ連バルチック艦隊。艦隊戦力ではソ連軍が有利だったが、ドイツ空軍が空から援護した。そのため「タリン沖海戦」で勝利をしたのはドイツ艦隊。ソ連艦隊は損害を被り、クロンシュタットへ向けて撤退していく。

中央軍集団はヴィルナからドヴィンスク付近を突破してミンスク周辺でソ連軍を包囲する。ミンスクを占領したドイツ軍はヴィテブスクまで前進し、同地を包囲した。ミンスクではソ連軍の工場がドイツ軍の手に落ちてしまう。

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南方軍集団は、縦に伸びたソ連軍戦線を南北から挟撃する。しかしソ連軍部隊の数は多く、これを完全に包囲することはできなかった。ドイツ軍はブーク川上流のヴィーンヌィツャを占領したものの、ソ連軍部隊を完全に包囲殲滅するには至らなかった。

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41年8月

バルト海沿岸ではドイツ軍がタリンを無血占領。ナルヴァに対しても攻撃を行うが、ソ連バルチック艦隊が妨害してきたため、ナルヴァの攻略は失敗した。

中央軍集団戦区では、プスコフ、ヴィテブスクを占領し、さらにスモレンスクもドイツ空軍の援護によって占領する。

南方軍集団戦区では、キエフを占領し、ゴメリも占領する。ただしキエフの工場はタッチの差で後方へ撤収していく。

このTurnでVP判定が入る。VPは枢軸軍が占領した要塞都市、大都市、油田等の数で決まる。ゲーム開始時に枢軸軍が支配しているのは計10点(ドイツ5、フィンランド1、ハンガリー1、ルーマニア3)。ソ連領内で枢軸軍の占領した大都市、要塞都市は、ルボフ、ヴィーンヌィツャ、キエフ、ゴメリ、ブレスト、ヴィルナ、ミンスク、ヴィテブスク、スモレンスク、リガ、プスコフ、タリン、ハンゴの13ヶ所。さらに補充ポイントがミンスク、キエフ、スモレンスクで計3点、そしてミンスクで工場1個破壊して1点。合計27点。勝利得点表に当てはめるとA1、つまり枢軸軍の小勝利だった。取り合えず枢軸軍としては史実並の戦果は残したことになる。ただし枢軸軍、中でもドイツ軍の損害は決して小さなものではなく、最前線を進む装甲部隊は損害累積に苦しんでいた。

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41年9月

北方のドイツ軍はナルヴァを攻撃。ソ連のバルチック艦隊が出撃してきたが、今度はドイツ空軍が支援してきたためバルチック艦隊は損害を被り撤退。海空からの支援を受けたドイツ軍はナルヴァを占領した。

中央戦線では、スモレンスクから出撃したドイツ軍はブリヤンスクを占領。モスクワに迫った一軍はルジェフを占領。モスクワまであと5ヘクスに迫る。

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南方では黒海沿岸の港湾都市オデッサをドイツ軍が占領。ドニエプル川沿いに南下し、ドニエプロペトロフスクにも迫る。

41年10月

天候ダイスは枢軸軍にとって最悪の6だった。北極圏には早くも雪が降り、中央ロシアも泥に沈む。ドイツ軍の前進は一気に低調となったが、ドニエプロペトロフスクを占領。ハリコフもあと一歩の所まで肉薄する。

41年11月

またもや天候は枢軸軍にとって最悪の6だった。全部の領域で雪が降る。それでもドイツ軍は南方戦線で攻勢に出て、ハリコフ、クルスクを占領する。 極東から増援としてやってきたショックアーミーを主体としてソ連軍は、レニングラード周辺、モスクワ正面、クルスク周辺、そしてドンバス周辺で大反撃を実施した。兵力に物を言わせた大攻勢で、ソ連側の損害も決して少なくない。それでもソ連軍はドイツ軍の装甲軍団2個、歩兵軍団2個に加えて、ルーマニア軍の機械化軍団1個、ドイツ空軍1個を葬った。さらに反撃によってクルスク、ドニエプロペトロフスクを奪回した。

Tur4111a

Tur4111b


このTurnに最初のVP判定が入る。8月以降に枢軸軍の獲得したのは、ハリコフ、ブリヤンスク、ノブゴルドである。これらのVPは合計5点。8月分までを合わせると32点となる。勝利レベルは"0"で修正なし。前回の分(41年8月)はショートシナリオ専用なので、通常シナリオでは加算しない。結果、現時点で勝利レベルは"引き分け"になる。現時点でゲームを終了すると、結果は「引き分け」となる。

つづく

1941_Operation_Barbarossa